大統領に届くか、地域の声

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海外活動森林保全

地域住民達によってHMFSに植えられた木。ここはかつて政府の商業伐採により丸裸となっていた場所

地域住民たちによってHMFSに植えられた木。ここは
かつて政府の商業伐採により丸裸となっていた場所。

 

世界遺産でもあるキリマンジャロ山では、森林保護の名のもと、2005年にそれまで地域住民の生活を支えてきたバッファゾーンの森”Half mile forest strip”(以下、HMFSと表記)に対する国立公園の拡大政策が断行されました。その目的は、地域住民の森林資源利用からの完全排除であり、またそのことにより森林保護を達成しようとするものです。

しかしこの政策は地域住民の生活を破壊するばかりか、長年にわたる植林などを通して実際には森を守ってきた彼らを森から排除することとなり、かえってキリマンジャロ山の森をより深刻な破壊の危機へと晒すこととなっています。

 

 詳しくはこちら→ ・ “消えた住民たちの森

          ・ “世界への訴え

 

そこで私たちタンザニア・ポレポレクラブは、モシ県下(Moshi rural district)のHMFSに沿う39の村々と協力し、以下を目的とした39村の協議体”KIHACONE”(Kilimajaro Half mile forest strip Conservation Network)を設立しました。

 (1) 政府に対しHMFSを国立公園から外し、地域に返還することを求めていく

 (2) 返還後のHMFSの森を地域の手で守っていく新たな森林保全・管理の枠組みを構築する

私たちはHMFSが国立公園に取り込まれた2005年以来この問題に取り組んでいますが、タンザニア政府は「森林破壊の元凶は地域住民である」として、地域の声にも一向に耳を貸そうとはしません(実際はHMFSの森林の最大の破壊原因は、過去政府が行った商業伐採)。

そこでKIHACONEは、3月末、大衆集会のために全国を遊説していた同国政権与党CCMのAbdulrahman Kinana書記長がモシ県を訪れた機会を捉え、HMFSからの住民排除を目的とした国立公園の拡大が、地域住民そしてキリマンジャロ山の森林にもたらしている問題を直訴しました。問題の深刻さを知り書記長は、その場において大衆を前に、HMFSの地域への返還を約束したのです。彼はまた、この問題を「然るべき人物」にも伝えることを約束しました。それは天然資源観光省の大臣か、あるいは10月に大統領選挙と総選挙を控えた同国の状況では、大統領の耳に地方の訴えの声が届けられることもあるでしょう。これまで無視され続けてきた地域住民の声が、ついに中央政府を動かすかも知れないところまでたどり着いた瞬間でした。

さらにKIHACONEは、地方政府にも働きかけます。キリマンジャロ山のお膝元であるモシ県議会(District council)において、「HMFS返還決議」の可決を目指したのです。そしてこの5月末に開催された県議会において、ついにこの決議が可決されました。

しかしこうした書記長の約束や県議会での決議にも関わらず、事態は予断を許しません。キリマンジャロ国立公園を管理するKINAPAは、国立公園法を盾に頑強にHMFSの返還を拒否しており、地域住民たちがその中で植林することさえ、違法行為であるとして拒絶しています。

先のリンク「消えた住民たちの森」や「世界への訴え」でも詳述しているように、キリマンジャロ山の森(HMFS)を今日の姿のように破壊したのは地域住民ではありません。それどころか、彼らは「キリマンジャロ山の森の最大の守護者」として、地道に森林回復のための植林に取り組んできました。森を守る知恵と力を持っているのは、森から追い出されたまさに地域住民たちだと言えます。そして自然(森)を守ることが大切であるのと同様に、その地に長く暮らしてきた住民達の生活もまだ大切であることに疑いの余地はありません。森は守るが人の生活はどうなっても良いという政策は、決して良い政策とは言えず、また良い結果も生み出さないでしょう。

私たちはこれからも地域住民と力を合わせ、キリマンジャロ山の森を守り、地域住民達の生活を守るための活動に取り組んでいきます。世界の皆さんには、ぜひいま世界遺産でもあるキリマンジャロ山で起きている、この知られざる国立公園の強権的拡大政策と、それによる住民排除という不幸で不条理な事実を知って頂きたいと思います。そしてこの問題の解決のために、声を上げて頂きたいと思っています。

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