キリマンジャロ山の国立公園拡大問題と当会の取り組み


消えた住民たちの森



世界遺産でもあるキリマンジャロ山では、過去100年間に約3割の森が失われたと言われており、その傾向は現在も続いています。森林保護に対する世界からの圧力もあり、タンザニア政府はその対策に乗り出しましたが、そこで「森林破壊の元凶」とされたのは地域住民でした。2005年、政府は彼らを森林から排除するため、彼らの生活を支えてきた緩衝帯の森"ハーフマイル・フォレスト・ストリップ"(以下HMFS)の国立公園への編入を断行しました。

しかし当会は以下の理由から、この政策に反対しHMFSからの国立公園の指定解除を求めています。

(1)森林破壊の元凶は地域住民なのか
現在HMFSで広大に森林が失われているエリアは、かつて政府が森林プランテーションとして商業伐採を行っていたエリアとほぼ一致します。これは政府が伐採後に再植林をしなかったためで、地域住民に森林破壊の責を負わせ、その排除によって森林保護の実現を図るとするHMFSの国立公園への編入は、政策としての合理性をまったく欠いています。しかもその裸地化したHMFSに森林を回復するために植林に取り組んでいるのは地域の住民たちなのです。

(2)森林を守ったのは/守れるのは誰か
キリマンジャロ山の森林に関する研究は、過去最もHMFSの森が守られていたのは、タンザニアの独立以前、地域住民にその管理が委ねられていた時期であったことを指摘しています。さらに住民利用だけに限られていたHMFSは、プランテーションがあったHMFSに比べ、今でも良く森が残されていることが衛星画像からも明らかです。このことは過去のみならず、現在においても、森の最大の守護者は地域の住民であることを裏付けています。国立公園化は、森を守るどころかその森から守護者を奪ったに等しい政策だといえます。

(3)誰にも守れない国立公園法
国立公園法は地域住民による資源利用はもとより、森の中に入ることさえ許しません。しかし法によって日々のニーズ(薪、飼料等)が消えるわけではない以上、彼らは生活維持のために森に入り続けるしかありません。一方、国立公園を管理するキリマンジャロ国立公園公社(KINAPA)は、「不法侵入者」である彼らと激しく対立し、徹底排除に乗り出します。しかし住民ニーズが存在する以上、彼らの完全排除は不可能で、この現実にKINAPAは一部で「犯罪行為」に目をつぶり始めます。この時点で既に国立公園法は破綻しています。誰も遵守できない法の下に森を置くことの誤りは明らかであり、またそれによって森林保護が成立する筈もありません。



キリマンジャロ山における地域住民主導による新たな森林保全・管理の実現を目指して

国立公園化は森も守れず人々を苦しめるだけの政策であり、当会はHMFSから国立公園を解除した上で、地域住民が主体となったキリマンジャロ山における新たな森林保全・管理の仕組みを構築し、またその仕組みを森林条例等によって法制化することを政府に働きかけています。またその実現を目指して、国立公園化された森林に沿う37の村々と協力しています。具体的には以下のプロセスによってこれを実現しようとしています。

 (1) HMFSからの国立公園指定の解除(県、州、中央政府、国会議員との協議)
 (2) 地域主導による森林管理の仕組み作り
   @ 国立公園化された森林に沿う37村を繋ぐネットワーク組織のを立ち上げ
   A 37村の統一的戦略に基づく新たな森林保全・管理の枠組みと制度構築
   B 各村における森林利用規則の見直し、整備
 (3) 上記(2)の枠組み及び制度の法制化
 (4) 地域住民の森林保全・管理に向けた持続的・内発的意思の側面支援


37村の代表者たち
国立公園問題を協議するために集まった37の村々の地域代表たち






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