キリマンジャロ山の森林保護のあり方を巡る国立公園の領域拡大問題は、実は私たちのカウンターパートであるTEACA(Tanzania Environmental Action Association)の自立にも影を落としている。
この問題は、現在国立公園に取り込まれてしまった、かつてのバッファゾーンの森”Half Mile Forest Strip”(写真2)に沿って存在するすべての村(計33村)に影響を及ぼしている。対象となる森林面積は8,769haにのぼり、特定の村による限定的な対応では、とてもこの問題の解決を図ることは出来ない。森林に接するすべての村がお互いに連携し、一体となって対処していく必要がある。
ところがキリマンジャロ山において、こうした地域や村々の声を一つにまとめ、団結して力を発揮していけるようにと動いているのは、唯一TEACAのみの状況である。そのため各村のTEACAに対する期待は非常に大きなものとなっている。TEACAは全体での協議をコーディネートし、合意形成の手助けをするとともに、村々が協力して新たな森林管理のしくみを構築していくためのセミナーの開催、現場視察(スタディツアー)の機会提供、さらには政府、関係部門との継続的な交渉などなど、東奔西走の日々となっている。
マンパワー、時間とも不足を来しているが、こうした取り組みが資金的にもTEACAを圧迫している。支出が増えたからといって簡単に収入が増えるわけではなく、ここ数年は赤字予算を組まざるを得ない状況となっている。支出予算はこの3年間とその前の3年間の平均とでは、52.6%の増大となり、この国立公園問題解決のために振り向けられる予算は、全予算の3割近くに達している。
それでも、「いま資源(マンパワー、時間、資金)の投入を躊躇すれば、キリマンジャロ山の森林と地域住民生活の双方に、取り返しのつかない禍根を残すことになる」というのがTEACA、当会の一致した考えである。予算会議では、ボールペン1本のコストから徹底的に見直しを行った。それでも収支がバランスするにはほど遠い状況にある。
今年度はすべての点で体力勝負の1年となる。しかし、キリマンジャロ山の村々が一つにまとまる、大きな1年ともなるだろう。
(写真1) 衛星から見たキリマンジャロ山
(写真2)ドーナツ状に囲まれたエリアがキリマンジャロ山の森林保護区、その内側がかつての国立公園、編掛部分がHalf Mile Forest Strip。現在この編掛部分までがすべて国立公園に編入された。