タンザニア本土の沖合、インド洋上に浮かぶ島ザンジバルでは、昨年11月頃からずっと停電が続いていた。日本では1時間も停電すれば、ニュースや新聞ですぐに取り上げられるところだが、ザンジバルで停電が復旧したのは、なんと今年3月に入ってから。足かけ5ヶ月間にわたって電気が止まっていたわけで、なんともスケールが大きいというか、無茶苦茶というべきか・・・。
ザンジバルほどではないにしろ、この2、3月に現地入りした際も、ダルエスサラーム、モシ、そして村でも停電が頻発していた。ホテルなどではジェネレーターを回してとりあえず電気が戻ることも多いが、村ではそうもいかない。
確かに昨年のタンザニアでは、キリマンジャロ山のある北部域一帯では厳しい降雨不足となり、水力発電に頼る同国の電力事情はあまり良くないのかも知れないが、今回の停電頻発はどうも背景が今ひとつはっきりしない(ザンジバルの停電は、海底ケーブルの切断によるもの)。計画停電であれば、政府から「何曜日はどこどこ地区の電力供給を止める」という”おふれ”がある筈なのだが、そんなことお構いなしに、というか村ではほとんど連日連夜の停電であった。「昨日もまた電気止まったね」が翌朝の挨拶言葉になったくらいである。
さて、先の降雨不足が明らかに影響している問題がある。それは水不足に悩むキリマンジャロ山麓のテラ村(TEACAの拠点活動地であるテマ村ではなく、テラ村)に、2004年に敷設した給水パイプライン(総延長4km)の水が、ほとんど止まってしまったことである。同パイプラインの水源では、最近水量の減少が問題となっていたが、昨年の雨不足で流量が一気に落ちてしまった。約300人の村人が、このパイプラインの水に頼っているだけに、問題は深刻である。
村では水源の枯渇から放棄されてしまう伝統水路もあり、村人たちの話、そして起きている現実に照らしても、キリマンジャロ山でジリジリとその量を減らしていく「水」の姿が浮かび上がってくる。テラ村の給水パイプラインについては、専門家も交えて水源地一帯の調査を実施し、それが場所的に限定されたものであるのか、一時的なものであるのかを見極めなければならない。必要となれば別に水源を求めることも考えなければならないであろう。
キリマンジャロ山では過去100年の間に進んだ雨量の減少傾向がはっきりしている。停電には耐えられても、水不足には耐えられない。パイプラインももちろん重要であるが、水源保護と雨をもたらす森林の回復は、その重要さをますます増してきている。