事務局日誌: データから見る村の様子と人々の暮らし(No.4)

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今回お伝えする村の様子では、主人公を人から動物たち(家畜)に移してみたいと思います。新しいデータがないため、古いデータで恐縮なのですが、1999年に村が実施した世帯調査の結果を参考に見てみたいと思います。(表1)

 

(表1)村の世帯調査の結果

(表1) 村の世帯調査の結果

 

調査で対象とされた家畜は、牛、山羊、羊、豚、鶏、兎の6種類。村全体の世帯平均でみた場合、どの家でも牛と山羊を必ず1頭は飼っており、鶏は3羽、2世帯に1世帯の割合で羊を1頭、3世帯に1世帯の割合で豚を1頭飼っているといえます。牛は現地で毎日欠かすことの出来ないチャイ(極甘のミルクティ)用の牛乳を得ることもありますが、それよりも重要なのは、牛糞という無料の肥料を、安定的に提供してくれる存在としてでしょう。キリマンジャロ山に暮らすチャガ民族の、土地集約的な伝統農耕システム”Kihamba”にとって、土地の生産性を落とすことなく、長く維持していくために、牛は必要欠くべからざるシステムの構成要素だといえます。もちろんとくに最近では、余剰の牛乳を販売することでの収入稼得源としての重要性はますます大きくなっていますし、いざという時に売り払うことで現金化できますから、私たちの感覚で言うと、銀行に預けてある貯金みたいな存在だともいえます。このように多様な価値を持っている牛は、彼らにとって本当に重要な財産なのです。

次に山羊はと言うと、こちらはチャガ民族の間で、伝統儀礼や儀式で用いられたり、婚礼などの祭事、特別な客人へのもてなしなどの時に供されるものとして重要な存在で、牛と同様、欠くべからざる家畜と言えるでしょう。ですからどの家に行っても必ず、牛と山羊は飼っています。

次に鶏ですが、チャガ民族は伝統的には鶏の肉を食べることをしていなかったようで(忌み嫌っていたらしい)、牛や山羊に比べて比較的新しく飼い始めたものでしょう。現在ではみんな食べていますし、それどころか、どちらかというとお目出度い時に出される、ちょっと贅沢なお肉という位置づけにあります。卵も自分たちで食べるよりは家計収入の足しにするために売るのが普通で、食卓に上るとなんだかお正月やクリスマスのような「特別な日」という気分になります。

最後に兎ですが、これはテマ村全923世帯で合計65羽ですから、約7%の世帯で飼っていることになりますが、実際は飼っている世帯に数羽まとめているのが普通なので、ほとんどの家では飼っていないというのが実態です。飼っている家では食用として飼っています。

(次回に続く)

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