乾燥地での省水農法、当面断念

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現地カウンターパートのTEACAから、キリマンジャロ山を取り囲むように広がる低地乾燥平原地一帯での降雨不足から、このエリアで実施している省水農法(写真1)を当面断念するとの連絡が入った。低地にあるプロジェクト地の降雨データは、現在こちらには3月分までしか届いていないが(グラフ1)、その3月から迎えた大雨季の雨量はゼロ。電話で確認したところ作物生産にもかなり影響が出ているようである。同様に雨が降らなかったことが2009年にもあったが、このときは家畜が死に、住居を放棄し現場を離脱する人々が出た。

 

写 真 1: 半乾燥地で実施している省水農法

写 真 1: 半乾燥地で実施している省水農法

グラフ1: 半乾燥地プロジェクト地の降雨データ。2012年のデータは3月分まで。3月に降雨がなかったことが分かる(2002~2012年)

グラフ1: 半乾燥地プロジェクト地の降雨データ。2012年のデータは3月分まで。3月に降雨がなかったことが分かる(2002~2012年)



現地ではその年によって雨量の変動幅が大きく、日本と違ってなかなか「平年に比べ」という比較がしずらいが、長い目で見てみると雨量が減少傾向にあることが見て取れる。グラフ2は、キリマンジャロ山の麓にあるモシの町の雨量データであるが、このデータも過去約100年の間に、34%の雨量が失われたことを示している。

 

グラフ2: キリマンジャロ山麓にあるモシの町の降雨データ(1902~2004年)

グラフ2: キリマンジャロ山麓にあるモシの町の降雨データ(1902~2004年)

 

同様の雨量の減少傾向は、タンザニアの中では雨量に恵まれているキリマンジャロ山でも起こっている。私たちの主力活動地である標高約1,750mにあるテマ村でも、グラフ3のように、昔のようには雨は降らなくなっている。この3年ほどはかつての雨量の半分ほどしか降っていない。今年も4月までの雨量は昨年よりひどく、このままでは大雨季植林ができなくなるのではと一時危ぶまれていた。しかしその後降り始め、植林自体は実施できたものの、今度はその雨がダラダラと降り止まない事態となっている。7月後半になっても「毎日降っている」状況で、山を一歩出たらカラカラの乾燥、山の中は毎日雨、という異常な様相を呈している。

 

グラフ3: キリマンジャロ山の標高約1,750mにあるテマ村の降雨データ(1947~2011年)

キリマンジャロ山の標高約1,750mにあるテマ村の降雨データ。(1947~2011年)

 

全体としてみれば減少傾向にあるキリマンジャロ山の降雨量は、その森の減少と歩を一にするようにして進んできている。その意味でも、山全体の地域を結んで取り組まれるような植林を「運動」として興していく必要があり、当会はキリマンジャロ山でのそうした取り組みの実現を目指していくつもりである。

また省水嚢法も、降雨ゼロではさすがに厳しいが、少しでも乾燥地で野菜を得られる手段として、他団体との連携も推し進めるなどして、一層の普及に力を入れていきたいと考えている。

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