キリマンジャロ山のコミュニティツーリズム視察を実施

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海外活動その他

 

テマ村の村人たちは、20年間にわたって植林に取り組んできました。それは森林減少によって脅かされつつある自分たちの生活を守るためです。森は雨の恵みをもたらし(=キリマンジャロ山から流れ出る水の96%は、森林帯に降る雨によってもたらされています)、その水を利用した伝統水路は、彼らの農業を支えています。

 

しかし森の重要性は、もちろん水だけにあるのではありません。薪や家畜の飼料、薬草など、日々の生活に欠かかすことの出来ない多様な資源を直接提供し、あるいは土砂崩れを防ぎ、環境を安定させるなど、間接的にも彼らの生活を支える大きな役割を果たしています。それだけではありません。キリマンジャロ山に住む彼らチャガ民族は、古くから森と深く関わりながら、彼らの生活体系や文化を築いてきました。森の中には、彼らの儀式にとって大切な場所、野生動物を獲るための落とし穴、民族紛争の時に使った塹壕やトンネルなど、いまや少しずつ忘れ去られようとしている彼らの知恵や伝統の痕跡が各所に残っています。

 

森を「環境」という視点で守ると同時に、彼らの大切な「文化」や「伝統」、「知恵」という視点からもあらためて見つめ直し、その価値を評価できるようになることが、とても大切であると私たちは考えています。

 

そこで今回、活動地であるテマ村とキディア村の村人たちを対象に、キリマンジャロ山麓ですでにコミュニティベースドツーリズムに取り組んでいる2つの村を訪ねるスタディツアーを実施しました。それぞれの村で自分たちの村、生活、伝統、文化の何を大切なものとして認識し、外に向けて発信しているのか、それはなぜなのか、そうした事を具体的事例の中から学び取ってもらうことを目的として実施したものです。

 

 

 

普段当たり前のように自分たちの身の回りに存在するもの、行っていることなどは、案外その現場にいる人たちにとって、その重要性や希少性に気づきにくいものです。その当たり前の中にどんな価値があるのかを再認識するには、こうしたコミュニティベースドツアーへの参加は打ってつけだといえます。

 

参加したツアーでは、村に残る遺構や自然が重要な構成要素になっていること、歴史上の出来事を伝えられること、学校に伝統的な家や薬草園を作り、子どもたちに伝える取り組みをしていること、村のNGOが運営に当たり、その収益が村の開発基金となって役立てられていることなど、地域にある有形無形の資源が持っている価値を、あらためて見直す良い機会とヒントに繋がったのではないかと思っています。

 

一方、とくに歴史的遺構や自然物については、今後の保存状態について懸念されるところでもありました。参加したテマ村、キディア村の村人たちは、その貴重さが失われることのないよう、同じチャガ民族としてしっかり守っていって欲しいと伝えていました。もちろんそれは彼ら自身にとっても言えることなのです。

 

ポレポレクラブではこうした具体的事例に学ぶスタディツアーを、引き続き支援していく計画です。そこでの学びと経験を、今度は自分たちの村の中に目を向け、活かしていく取り組みも始める予定です。

 

伝統家屋の中で熱心に説明を聞く

 

 

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