写真1
キリマンジャロ山の麓から山を登っていくと、すぐに道の両側に「キハンバ」と呼ばれる畑が続くようになります。キハンバはバナナ農園と呼ばれることもあり、確かにバナナの葉っぱがひときわ目立って見えます。しかし実際には、バナナの下やその周りにはあのキリマンジャロコーヒーやイモ類、薬草や牛の飼料とするための草など、生活に必要となる様々な作物、植物が植えられています。
写真2
バナナの上の方を見上げると、今度はアボガドやモモなどの果樹や土を肥やす豆科の樹木など、多くの有用樹木もたくさん一緒に植わっています。
タンザニアの大部分が半乾燥サバナ気候である中、キリマンジャロ山は雨量に恵まれ、従って高い人口密度を抱えていました。従って多くの住民は狭い土地(農地)しか持たず、その中で生活を支えていく必要がありました。集約的な土地利用でも生産性を下げることなく、さらにそれをいかに持続的なものにしていくか、また、生活に必要とされる資源をいかに確保していくか、そうした中から編み出されてきたのがキハンバ(写真3)です。
写真3
とはいうものの、必要な資源のすべてをキハンバで賄えるわけではなく、とくに日々の煮炊きに必要とされる薪や、家畜の飼料の多くは村の上部に広がる森からとってくる必要があります。薪だとキハンバで賄えるのは必要量の3割程度という調査結果があります。
またキハンバは、その中に家畜と水路(伝統水路)を巧みに組み込んだ農耕システムとしても知られており、それらが高い生産性を長く維持する不可欠の要素となっていました。水路の水源は森の中にあり、その水源と、森の中を縫うようにして流れてくる水路をメンテナンスし守っていくことは、キハンバの維持ひいてはキリマンジャロ山に暮らす多くの住民の生活を守っていくために極めて重要な位置を占めていました。
しかしその森が国立公園に取り込まれ、人々は薪や飼料など生活資源の採取や、水源、水路の管理、維持の自由を奪われることとなりました。薪、飼料の採取は女性に限り週2回許されるところとなりましたが、こうした重労働が限られた日数にすべて女性の肩にのしかかることとなり、しかも女性だけではそれらを十分に集めることが出来ません。家畜を手放すしか選択肢がなくなる住民も多く、生活を支えてきた森を国立公園として取り上げたことは、地域住民の生活権を著しく侵害した状態となっています。
村を抜ける道を上り詰めると、目の前にかつての彼らの生活の森(ハーフマイル・フォレスト・ストリップと呼ばれるバッファゾーンの森)が広がっています(写真4)。多くの村人たちが利用してきた森であり、それゆえ彼らが大切に守ってきた森です。
写真4
いま、村人たちにとって、その目の前にある森の何と遠いことでしょう。手の届きそうなところにある森と彼らの間には、排除という目に見えない壁が立ちふさがっています。
私たちは森を守っていくための植林への協力はもちろんですが、人々が森の持続的管理と利用の権利を取り戻し、何より、「平和に」、「安心して」暮らしていける環境を取り戻すために、これからも精一杯力を尽くしてまいります。
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世界遺産キリマンジャロで2005年に断行された国立公園の拡大。
生活の場として森を利用していた住民たちは武器と暴力によって徹底排除されました。
当会では、このような重大な人権・生活権の侵害をなくし、地域住民が主体となって
森を守っていけるように新たな森林管理の実現を目指します。
皆さまのご寄付が約20万人の地域住民を助ける力になります。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします!
● GiveOneの 『Eチャレンジ』(以下URL)で、この取り組みのための
募金を呼びかけております!
→ Eチャレンジ: http://www.giveone.net/cp/PG/CtrlPage.aspx?ctr=pm&pmk=10516
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