地域が示すキリマンジャロ山の新たな森林管理の姿 (’17/3-②)

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海外活動森林保全

村の苗畑で苗木の数を確認しています('17年3月撮影)

村の苗畑で苗木の数を確認しています(’17年3月撮影)

 

当会は3月18日までの約1ヶ月間、プロジェクトフォローのためキリマンジャロ山入りしていました。タンザニアでは4月から本格的な大雨季が始まり、この時期は植林の実施に向けて各村と最終的な実施計画の策定を行う必要になります。

現地ではそれぞれの苗畑の状況を把握するため一つ一つ村を訪ねて回ります。そして村長さんや苗畑を管理している村の環境委員会のメンバー、苗畑グループの人たちと樹種別の育苗数、生育状況などを確認していきます。問題があればその場で原因や対応状況を聞き取り、それらをもとに彼らと打ち合わせをし、植林計画の達成に必要な対策と具体的実施プランを確定していきます。

 

苗畑で問題点の聞き取り中('17年3月撮影)

苗畑で問題点の聞き取り中(’17年3月撮影)

 

今年は昨年末の小雨季にほとんど雨が降らなかったことから、どの村も水不足に陥っており、苗木が次々と枯れ植林も計画達成が危ぶまれる状況でした。不足する苗木は山引きの実生苗を使って対応することで何とか目処はついたのですが、キリマンジャロ山で減り続ける一方の降雨に「このままだとどうなってしまうのだろう」と村人たちからは不安の声が漏れます。

 

キリマンジャロ山の麓、モシの町での降雨量の変化(2017年は1月現在まで)

キリマンジャロ山の麓、モシの町での降雨量の変化(2017年は1月現在まで)。
年間総雨量、小雨期の雨量とも減少しており、こうした状況に歯止めをかけ
ようと、キリマンジャロ山の住民たちは植林に立ち上がりました。

 

今回の小雨期の降雨不足は何もキリマンジャロ山に限ったことではなく、タンザニア全土、隣国のケニアまで含む広範なものです。その意味でキリマンジャロ山にだけ何か特別な原因があるというものではありませんが、数多くの枯れた泉、水を失った給水パイプラインを目の当たりにすると、キリマンジャロ山の森林回復にもはや一刻の猶予もないと強く感じます。

この大雨季、キリマンジャロ山の森林に沿う40の村々(モシ県)はお互いに連携し、地域一体となって植林に取り組もうとしています。このような地域横断による植林、森林保全活動はキリマンジャロ山では初めてのこととなります。そしてこの動きに隣のロンボ県からも今後の連携を打診する声が上がってきています。

森を取り囲む村々による「統一的指針に基づく森林の地域一体管理」は、降雨の減少など、彼らが感じている不安に具体的にどう対処していくか、地域の人々が導き出した明確な答えだと言えます。それは過去の政府による一貫性を欠いた不適切な森林管理が森の劣化を招いてきたという経験を踏まえ、キリマンジャロ山であるべき新たな森林保全・管理の姿を示した地域の知恵だと言えるでしょう。

この大雨季の40村の地域連携による共同植林は、その実現に向けた第一歩となるものです。

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