当会は森林保護を目的としてキリマンジャロ山で実施された、地域住民の生活の森であるバッファゾーン”ハーフマイル・フォレスト・ストリップ”(以下HMFS)への国立公園の拡大に反対してきました。それは第一に、その目的とする森林保護は国立公園の拡大によっては成し得ないと考えるからであり、第二に、そこに長く暮らしてきた人々の生活を顧みることのない自然保護政策は間違っていると考えるからです。
そして国立公園拡大という政策には、さらに根源的問題があります。拡大の一義的な目的は、地域住民の森林資源利用からの完全排除による森林保護の達成ですが、そもそも森林を破壊したのは地域住民なのでしょうか?上図1はキリマンジャロ山のかつての森林保護区(現在は国立公園に編入)に設定されていたHMFS(網掛部)を表していますが、そのうち点線で囲まれた部分のHMFSについてはほぼ森林が失われ、丸裸となった広大な尾根が広がっています。一方、点線で囲まれていない部分のHMFSには、今でも多くの森が残っています。
次に図2は、政府の制作したキリマンジャロ山の森林管理図を元に当会が作成したものですが、図中の赤丸印はそのエリア一帯がかつて政府の森林プランテーションであったことを表しています(青丸印は、HMFSを除く森林保護区内にあった政府のプランテーション)。図1、2から明らかなのは、HMFSで森林が失われているエリアは、かつて政府が商業伐採を行っていた森林プランテーションに一致しているという事実です。国立公園拡大が拠って立つ唯一の論拠、前提は、「地域住民がHMFSの森林破壊最大の犯人であること」です。しかしこの論拠はまったく成立しません。しかもプランテーションがなかったHMFSの森は、今でも良く守られています。
世界遺産の山で地域住民に犠牲を強いるだけのこうした不合理で不条理な自然保護政策がなぜまかり通るのでしょうか?その背景には、先進諸国から国立公園を拡大すべきとの提言があったことを見逃すことは出来ません。そしてこの誤った政策を正す力を持っているのもまた世界の力、私たち一人一人の声なのだということを、現場での取り組みを通して痛いほど感じています。世界の力がタンザニア政府を縛り、その政府を動かせるのもやはり世界の力。その力がいま必要とされています。どんな小さな機会でも構いません。キリマンジャロ山で起きている事実を伝え、声を上げる皆さんの力をぜひお貸しください!
〔No.45 その他の内容〕
● 地域代表KIHACONEの胎動
● 活動の現場から
・植林活動(モシ県西部地域への植林拠点の展開)
・生活改善(集中養成方式によるカマド普及を新たに2村で展開)
・活動の自立(KIWAKABOに対する買い付け資金支援を決定)
・その他(TEACAに新しいドイツ人ボランティアが来ました!)
● 2014年7月-8月 Rafikiプロジェクト現地渡航報告