事務局日誌: データから見る村の様子と人々の暮らし(No.2)

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さて、2012年国勢調査の結果を見ると、私たちが活動しているキリマンジャロ山麓テマ村を含むムボコム区(※)の人口は、14,606人(3,562世帯)となっています。10年前に実施された国勢調査の時は、12,455人(2,734世帯)だったので、人口ベースで約17%、世帯ベースでは約30%も増大したことになります。

ではテマ村にいてこうした数字が実感できるかと言えば、答えは「No」です。それは、この数字が3つの村(テマ村、コリニ・ジュー村、コリニ村)を含む「区」レベルの数字で、個別の村の実態までは把握できないことにあります。

ムボコム区にある3つの村は、ざっくり言って標高に沿って縦に並んだ配置となっており、森に接する最も標高の高い場所に位置しているのがテマ村(標高約1,300m~約1,850m、面積925ha)になります。そしてその標高帯のすべてが、あのキリマンジャロコーヒーの栽培適地にあたっています。しかし激しい生産者価格の落ち込みを目の当たりにしてきた今の村の若者に、コーヒー農家を継ごうという者はまずいません。かといって村にコーヒーに代わるような産業はなく、多くの若者は村を去っていくことになります。ダルエスサラームなどの大都会を目指す者もいれば、キリマンジャロ山を下りた麓の町モシやその近郊に職を求めて出て行く若者もいます。そしてこの山を下りきった一番下に位置しているのがコリニ村で、幹線道路からもほど近い距離にあります。

先の国勢調査による世帯、人口の増加はこのコリニ村を中心に起こっており、このことは、標高の高い村から標高の低い村へと人口の移動、流出が起きていることを示しています。もちろんコリニ村には、タンザニアの他の地域からも拡大する麓の町モシの経済圏を目指してやってくる者もいますから、単純に上から下への流れだけが世帯、人口増大の背景を説明するものではありません。しかしいずれにしろ、上から下へ、あるいは上から外(他地域)へという大きな人口動態の流れの中に、テマ村という村を位置づけて見る必要があるということになります。 (次回に続く)

※ 区: 英語で”Ward”、スワヒリ語で”Kata”と呼ばれ、県の下に位置する行政単位。その中に幾つかの村が含まれている。

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