千葉県南房総市の高梨牧場にて、高梨代表から日本の酪農について学ぶムチャロ氏。
昨年11月に来日したカウンターパートTEACA(Tanzania Environmental Action Association)副代表のアドンカム・ムチャロ氏。
わずか10日間ばかりの日本滞在であったが、各地で視察や講演など、多くのスケジュールをこなし、無事帰国された。そんなムチャロ氏から、彼の感じた日本や日本人像を聞く機会があった。
まず日本に到着した時の第一印象は、「なんでこんなにお年を召された方々まで働いているんだ?」であった。これは悪い意味ではなく、みんなとても元気にしている、しかも働き口がある、ということらしい。これは少し現在の正しい日本の状況とは違うかもしれないが、とにかく彼にはそう見えたようだ。そして次が「みんなハチのようだ」であった。とくに都会の出勤時などは、多くの人が脇目もふらず、お互いに言葉を交わすこともなく、矢のように歩いているのが“ハチ”に見えたらしい。そういえば日本人が「働きバチ」などと揶揄されたこともあったが、言い得て妙だったらしい。たしかにタンザニアでは、例えばダルエスのような都会であっても、何となくもう少し心安らぐような、アットホームな雰囲気がある。乗り物の中でも然り。あれだけの人が居て、みんな決まりきったように押し黙っているのは、やはり異様に見えただろう。
一方で、日本人が細かな決め事まできちんと守っているということ。当たり前のことかも知れないが、「信号は青で渡る」、「エスカレーターは急ぐ人のために片側をあける」、「喫煙場所を守る」などなど。キリマンジャロ山の辺鄙な農村から来た彼には、日本の高い技術や町に溢れる家電製品や車など、そんなものに目移りしても良さそうであったが、彼はそうしたものにはほとんど関心を向けなかった。そしてそんな彼がひたすら感心していたのが、上に述べたような“些細なこと”であった。彼はこう言い切っていた。「これが私たちに出来ていないことだ」と。その先、彼は何も付け足して言わなかったが、私には何となく、彼の言いたいことが分かるような気がした。
今の日本が、彼が感心するほど素晴らしい日本であるかは少々心許ない気もするが、それでも今もある、日本と日本人の良いところを、彼はしっかり見ていってくれたと思っている。
〔No.41 その他の内容〕
● 【ムチャロ氏来日特集】
・~Nchi ya amani~ “平和の国タンザニア”
『母国とその民衆に見る問題解決の知恵』
・『キリマンジャロ山の森林劣化と地域住民への影響、TEACAの取り組み』
●キリマンジャロにおける環境劣化、深刻な懸念
●【RAFIKIプロジェクト】 ~格闘は続く・・・~