この週末は茨城県で菜園活動がありました。よくイベントなどで、「アフリカで植林をやっている団体が、なぜ日本で農作業なの?」と聞かれることがあります。確かに意外な感じはするかも知れません。
しかしどんなことでもそうだと思いますが、「環境」や「自然」といったことについても、アフリカだけが考えたり行動したりする場ではないはずです。むしろ自分たちが日々暮らす足元にこそ、本当の現場はあるのかも知れません。土でも水でも空気でも、自分たちの足元でしっかり見つめ、それに触れ、学び、考え、行動することは、アフリカで活動に取り組んでいく上でも大切なことだと思っています。菜園活動の出発点はそんなところにあります。
またこの菜園活動は野菜作りだけに特化せず、畑という場を使って何でも試したりチャレンジできる自由度を大切にしています。そこで、やれることの幅が限られてしまう近場の市民農園などは使わずに、東京から離れた茨城県に畑を借りて活動しています。
ただ場所が遠いだけに、毎日水をやりに行ったり、こまめに雑草を刈ったりといったことが出来ない難があります。したがって夏場の水不足と雑草対策は、菜園活動の長年の課題となっています。また化学肥料を使わないのは良いとして、では土の養分を何で補うのかも問題です。堆肥を作ろうにも、近場で落ち葉を十分集められる場所がありません。水、雑草、肥料は、今の菜園活動の3大課題だといえるでしょう。
しかしよくよく考えてみると、この状況はタンザニアの農民たちの置かれている状況に似ている部分があります。水不足の厳しさは、日本とは比べものになりません。繁茂する雑草も草刈機や除草剤など買うお金があるわけもなく、女性も含めひたすら人力で刈り払うか、耕転します。肥料を買うお金も当然無く、牛糞を投入するか、もしくは無施肥であることもごく普通です。
私たちの菜園は、図らずもタンザニアの農民たちと似た状況に置かれているといえます。知恵を絞ってそこでどういう工夫をし、この課題に対するかは、あるいは何かの機会にタンザニアで応用できたり、使える可能性があるかも知れません。
水不足には雑草マルチ(※)や点滴灌漑(※)、雑草対策にはやはり雑草マルチやカバークロップ(※)、肥料には雑草堆肥、カバークロップ、緑肥(※)などの方法もあります。こうした方法を菜園で試してみても良いかも知れません。
また、逆に現地の人々に学ぶ点もあります。タンザニアを含むアフリカの一部では”マウンド農法”といって、播種の2ヶ月ほど前に、畑に生えた雑草を耕転して幾つもの小山(=マウンド)を築き、その場で自然発酵させて畑の養分とするやり方があります(マウンド内で蒸し焼きにすることもある)。
地域の自然環境を活かし、またその地域における様々な社会的変容の結果として編み出されてきたこうした農法は、身近に利用、調達可能な資源、技術、環境を巧みに組み合わせて生まれた、まさに人々の知恵の結晶ともいえる農法です。
マウンド農法では、基本的に数年間の耕作ののち休閑が必要になりますが、その他の養分補給方法と合わせながら、逆に私たちの菜園活動の中で試してみても面白いかも知れません。上手くいったら、アフリカから教えてもらったことになりますね。
※雑草マルチ: 刈り取った雑草を畑に敷き詰めて水分蒸散や雑草の繁茂を抑える。
※点滴灌漑 : ホースなどに微細な穴を開け、点滴のように少量ずつ灌水する。
※カバークロップ:土壌養分を補うマメ科植物などを作物と植え、さらにそれにより雑草等も抑える。
※緑 肥 : マメ科植物などをそのまま土に鋤込み、肥料として使う。