事務局日誌: タンザニアを揺るがした日本の放射能問題

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この7、8月のことなのでいささか旧聞に属するが、現地調査で7月末にタンザニア入りした際、最初に現地の人から聞かされたのは「いま日本からの放射能の問題で、タンザニア中大騒ぎになってるゾ」というものだった。

よもやタンザニアまで来て、まさか日本の放射能の問題にいきなり出くわすとは思ってもいなかった。しかも国中大騒ぎって一体どういうこと??

しかしそれは紛れもなく、国中で大騒ぎとなっていた。事の次第はこうである。7月中旬にダルエスサラーム港に、東日本大震災で原発事故のあった福島近海で獲れた冷凍魚が大量に荷揚げされた。魚はすぐに国内市場に流れたが、実はその魚が放射能汚染魚だったというものである。現地ではそれこそ連日メディアでこの問題が報じられ、国会でも大問題として取り上げられていた。

事故を起こした福島第一原発の近海域では、地震後漁業は操業停止状態だったし、タンザニアに入ってくるまでの時間を考えると、汚染魚が、しかも大量に荷揚げされるというのは考えづらいだろうというのが、このニュースを聞いて先ず思ったこと。しかもその時点で原発事故から4ヶ月以上が経っており、汚染された魚が海外にまで出荷されていたとなれば、日本ですでに問題として取り上げられていてもおかしくなさそうだ。

毎日のように現地新聞に「Samaki sumu Japani(=日本の毒魚)」というタイトルが踊り、村人からも何かと話題にされ、些かうんざり気味であった。残念なのは、この問題に対する日本政府の対応がいかにも遅かった点だ。このような問題には寸刻を置かず対応しなければ、それこそ日々国を傷つけるのにと思ってやきもきしていたが、在タンザニア日本大使館がコメント(=魚は震災前に冷凍保存されたものであり、また例えそうでなくとも検査を実施しており、食べて問題となるような汚染はない)を出したのは、すでに8月に入ってからのことであった。しかもいまひとつすっきりしない内容ではある。

じつはこれ以外にも、タンザニアと日本の放射能問題との意外な繋がり(?)に関するニュースがあった。それは金沢大学の田崎和江名誉教授が今年5月、タンザニアの首都ドドマ近郊で放射性物質を吸い取る細菌を発見したというものだ。日本では汚染土壌の処理をどうするかが大きな問題となっており、同教授はタンザニアでのこうした発見をもとに、福島県飯舘村などでも土壌中の微生物の調査を行うらしい。

日本から汚染魚が入ってきた、タンザニアで汚染処理に役立つかもしれない微生物が発見されたという、どちらも放射能に絡む内容ながら、そのベクトルの逆向き加減が何とも皮肉に思える2つのニュースであった。

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