チャガ民族の農耕システム”Kihamba”の生産性維持、向上に向けて

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当会がキリマンジャロ山麓に暮らすチャガ民族の、伝統水路の復旧事業に着手したことを、前回のこの欄でご報告しました。その中で、伝統水路が彼らの農地の生産性維持に役立ってきたことに触れました。

農業における水の重要さについては論を待ちませんが、キリマンジャロ山の急峻な斜面に広がる畑で、いかに「安定的に」、「効率よく」、「十分な量」の水を確保するかは、平地とは違った困難さがあります。

そのような条件のもとでチャガ民族の人々は、パズルのように複雑に入り組んだ尾根や地形の間を、まるで縫うようにして遠く離れた水源地から、精巧な水路を引いてくる知識と技術を獲得してきました。

この伝統水路の水を利用して、彼らは家の近くに”Kihamba”と呼ばれる独自の農耕システムを発展させました。このKihambaは、いわゆるアグロフォレストリー(注)として説明されることもありますが、通常のアグロフォレストリーにはない、家畜と水路をも有機的に組み合わせ成り立っている、極めて高度なシステムであると言えます。

キリマンジャロ山麓のKihamba いま、キリマンジャロ山に住む100万人以上とも言われる人々の生活を支えてきた、このKihambaのシステムが、人口の増加や森林破壊、水源の枯渇、給水パイプラインの敷設、伝統的相続制度など、様々な要因から崩壊の危機にあります。作物の生産性を維持し、人々の生活を安定的に保っていくためには、Kihambaが果たしてきた役割を見つめ直し、健全なシステムとして機能するよう、そのメンテナンスと再生を図っていく必要があります。

 

様々な樹木や作物が植わったKihambaの様子

様々な樹木や作物が植わったKihambaの様子

 

伝統水路の復旧は、Kihambaが一つの体系として機能するための、欠くべからざる構成要素を保全、強化するための取り組みであるといえます。ポレポレクラブではキリマンジャロ山麓の村人たちの生活安定のために、こうした伝統水路の復旧事業に今後注力していくつもりです。ただ先も触れたように、Kihambaが弱体化している要因は、一つ伝統水路だけによるのではありません。それぞれの要素に優先順位を付けながら、併行して取り組んでいくことが肝要となってきます(たとえば伝統的土地相続制度による際限のない土地の細分化など)。

2010年度には、伝統水路復旧とあわせ、こうした視点からの取り組みにも、着手していきたいと考えています。

 

(注)
果樹を含む様々な作物と様々な樹木の多様な組み合わせによって、土地を空間的、時間的に多面的に利用する農林業方法。土地の地力を保ち、生産性を長く維持するとともに、天候不順や病害虫被害等に対するリスクヘッジができ、さらに薪や飼料など、生活その他の活動に必要な資源をも得られる仕組み。

 

森林も水も失われたかつてのKihamba

森林も水も失われたかつてのKihamba

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