タンザニア現地調査報告

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海外活動森林保全

新雪を被ったキリマンジャロ山 <2010年1月撮影>

新雪を被ったキリマンジャロ山 <2010年1月撮影>

 

この年明けはキリマンジャロ山の村で迎えることになりました。以前は毎年年末年始には現地調査が入っており、日本の正月とは縁がなかったのですが、久しぶりにタンザニアで迎える新年に感慨深いものがありました。といっても、タンザニアでは休日のメインはクリスマスで、さすがに1月1日は祝日ですが、それ以外は普通に仕事日になります。ですから新年といっても、日本の正月のような雰囲気はまったくなく、新しい年を迎えたという感覚にいまひとつ欠けるのですが・・・。

今回の現地調査では、森林保護の名のもとに国立公園に編入され、地域住民が排除されてしまったキリマンジャロ山の”ハーフマイルストリップ”と呼ばれる緩衝帯の森を、地域主導の管理に戻すための動きを、さらに確実なものとするために実施しました。

これには管理強化を繰り返してきた過去の歴史を紐解いてみても、たんに住民を排除するという方法では森を守ることは出来ないという考えに基づいています。昨夏の現地入りでは、地域主導による森林管理に対する村/地域住民の合意形成と、政府各レベル(=中央、州、県)との協議を行いましたが、今回は地域における具体的な森林管理手法について村側と話し合ってきました。

管理手法といっても、ルールを決めるだけならある意味簡単です。しかしそれを実効性のある”生きた”仕組みとするのは、そう簡単ではありません。現地には法律をはじめ様々な取り決め、ルールがもちろんあるわけですが、その中には体裁ばかりが整えられ、実態としては機能していない、形骸化してしまっているものも少なくありません。政府の方針としても打ち出されている、キリマンジャロ山の森に本来適用されるべき「住民参加」による森林管理なども、まさにその例といえるでしょう。

地域主導による森林管理を有効なものとしていくためには、その仕組みを地域住民の総意と合意に基づくボトムアップで作り上げていく必要があります。これは当たり前のようですが、現地では上から押しつけられた「住民参加」がまかり通っており、地域住民の意見や考えがまったく反映されていません。村も地域住民もある意味それを「普通のこと」として表面的には受け入れているのですが、自分たちの考えや生活実態と合わないため、そうした仕組みは結局のところ守られることはなく、意図した通りの結果を生むこともありません。

「地域住民からのボトムアップによる森林管理の仕組み作りを」。過去の歴史に学び、そのことの大切さを、森林政策の形成に携わる政府関連部門には理解していってもらう必要があります。今回の関係部局との協議を通して、県、州レベルではその認識はかなり深めて貰うところまではきたとの手応えです。

村側においても、住民からの森林管理の仕組み作りへ、という動きに繋がり始めています。こうした動きを、さらにハーフマイルストリップに隣接する多くの村にまで広げていく、というのが今年の重要な取り組みになってくるでしょう。

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