(写真)キリマンジャロ山周辺の衛星写真
タンザニアには疎林を含めた3,356万haの森林がある(日本2,514万ha)。国土面積(タンザニア本土)に占める森林被覆率は38%(同66%)で、うち1,252万haが森林保護区に指定されている。更にこのうちの160万haが、水源涵養など国民生活に欠かせない重要な森と位置づけられている。一方、保護指定されていない森林は1,904万haで、そのうちの8万haが産業林となっている。
タンザニアの場合、森林といっても、私たちが普通にイメージする森と違い、そのほとんどは乾燥した疎開林である。樹冠の鬱閉した「森」は、国土面積のわずか3.4%、114万haに過ぎない。そしてこの3.4%のうち、3%がキリマンジャロ山の森である。
キリマンジャロの森は、タンザニア北部地域の重要な水源を成し、人々の生命を支えている。山麓で産するコーヒー、そして木材、観光などの木質/非木質産業は、同国経済を担う重要な柱となっている。それだけでなく、単独峰としては世界最高峰である同山は、その高度差と気候帯幅の広さゆえに、下から上に登るだけで、「アフリカ大陸を南北に縦断するに匹敵する」といわれるユニークで類い希な生物圏と多様性を形成、保持している。
上の写真は、人工衛星から撮ったキリマンジャロ山とその周りの様子である(斜めに横切っている線はタンザニア、ケニアの国境線。右側はインド洋)。キリマンジャロ山は中央の黒い部分に位置しているが、その黒い部分は同時に、そこが森であることを示している。対して山を取り囲む色の薄い部分は、すべて木も疎らな半乾燥地だ。この衛星写真は、私たちにキリマンジャロ山の森の重要性を、如実に示しているといえるだろう。(下の写真は、乾期の山麓付近(ハイ地区)の様子)
そのキリマンジャロ山の森は、この1世紀の間、絶え間ない圧力にさらされ続けている。アル・ゴア氏の「不都合な真実」では、山頂の氷河の消失は地球温暖化の影響とされているが、むしろ一帯の森林消失による雨量の減少や、インド洋の海水温の変化などによって乾燥化が進み、山頂にかかる雲が減った結果日照量が増加、これによって氷河が蒸発(昇華)しているとする説が有力となりつつある。
(写真) 乾期の山麓付近(ハイ地区)の様子
このようにキリマンジャロ山の森は、地域の人々の生活や多様な生態系のみならず、国の経済、山頂の氷河をも守る重要な鍵を握っているのである。
〔No.30 その他の内容〕
●オピニオン: ムルスンガの森
●タンザニア・キリマンジャロ植林ワークキャンプ2008報告
●プロジェクトの現場から: 取り組み状況報告
●Sia lives on kilimanjaro (その2)
~キリマンジャロ山の森に暮らす少女の物語を紹介します~
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