ここ最近、キリマンジャロ山を揺るがすような出来事やニュースが続けざまにありました。一つ目は10月11日に登山ルートであるマラングルート沿いで発生した大規模な山火事。まさに燎原の火の勢いとなって燃え広がった炎は、まるで山を這う巨大なヘビのように長い線となって伸び、麓の町からもはっきり燃え上がる炎が見えるほどでした。
鎮火までに10日間ほどを要したこの火災によって推定95.5平方キロメートルといわれる植生が焼失しました。出火の原因は登山客の火の不始末とも言われていますが、定かではありません。95.5平方キロメートルといえば東京ドーム2千個分以上になり、キリマンジャロ山の植生の約6~7%が失われたと考えられます。当会が山麓住民と取り組んでいる植林でこれをカバーしようとすれば、100年以上かかる広大な面積になります。
近年キリマンジャロ山は雨量の減少、乾燥化が進んでおり、山火事の発生頻度も増しています。雨量の減少は山の森林減少と軌を一にしており、植林による森林再生はますます重要な取り組みとなってきています。
二つ目は、以前からこのニュースレターでもお伝えしている、キリマンジャロ山へのケーブルカー建設計画になります。12月11日、タンザニア政府がこの計画を承認したとのニュースが報じられました。これはタンザニア国立公園局(TANAPA)の国立公園開発担当補佐官ポール・バンガ氏の発言で、政府がTANAPAにケーブルカーの設置に投資するための許可を出したとの内容です。
ルートはまだ明らかにされていませんが、別命ウィスキールートとして知られる有名な登山ルート、マチャメルートに沿って建設されるとの見方が濃厚となっています。ケーブルカーは麓からシラ高原と呼ばれる地点、富士山の山頂に匹敵する標高約3,700メートルにまで観光客を運ぶ予定で、タンザニア政府はこれによりキリマンジャロ山を訪れる観光客を倍増させようと目論んでいます。
この計画に対しては、世界遺産委員会に自然遺産に関わる評価を諮問している国際自然保護連合(IUCN)が懸念を表明していますが、とくにそれ以上の動きは見られません。
世界遺産の自然を守るためとして、住民排除に繋がる国立公園の拡大をタンザニア政府に働きかけた機関が、世界遺産エリア内への人工物建設に対しては懸念の表明だけというのは、なんとも釈然としません。世界遺産を登録しているユネスコも沈黙したままです。そのユネスコは、富士山への登山鉄道建設計画に対しては、「世界遺産から外すこともあり得る」と強く警告しています。このダブルスタンダードは一体何なのかと思えます。
TANAPAはケーブルカー建設に着手するため天然資源観光省の裁可を待っているようですが、ついに建設が動き出すのか、当会では引き続き状況をウオッチし、活動との関わりの中で取るべき行動を考えています。
〔No.59 その他の内容〕
● タンザニアにおけるコロナウィルスの状況(2)
● キリマンジャロ山の国立公園問題を巡る最新状況
~新政権のもとで~
● 活動の現場から
・植林活動: 雨、雨、雨だった小雨季
・自立支援: 裁縫教室、寄宿舎建設まもなく完了!
・生活改善: ロレ村幼稚園のトイレ建設もまもなく完了!
キリマンジャロ山での「植林」活動をぜひ応援してください!
当会HPで1口100円(苗木1本分)からご支援いただけます!!
郵便振替ご利用の場合
→郵便振替口座番号: 00150-7-77254
加入者名: タンザニア・ポレポレクラブ
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