私たちがキリマンジャロ山の村人と共に作ろうとしている現地プログラムとは、村人が村の中にある財産を”自慢”としてより好きになることを目指しているものである。村の中にある財産とは、その多くが森の中にあり、森の恩恵を受けているものが多い。それゆえ村人の普段の生活では見落としてしまうほど自然に溶け込んでいるものも少なくない。そうした森の中に多く存在する村の財産の魅力に気がつくことで、村人が森を一層好きになり、森を守りたいと彼らが内発的に考えることを目指して、私たちは村人と取り組みを進めている。
現在私たちの取り組んでいる現地プログラムとは、村人が彼らの村や森を見つめ直す機会を彼ら自身が持つことを狙ったものある。そして、プログラムを通じて”森を守りたい”と思う気持ちが一過性なものではなく、後世へも伝えていけるような持続的なものになることを目指している。守りたいと思うものとは、自分たちにとって大切なものであったり、好きなものではないだろうか。そこで私たちは、親が子へと、村人同士が森の中にある彼らの好きな”自慢”を伝えながら巡ることが現地プログラムの必須であると考えた。
このプログラムをきっかけにして、村人が村の魅力を再発見することから、村をもっと好きになり、その気持ちが森を守る意義の回復と、次世代へ繋がるしくみの根幹になると私たちは考えている。
では村人が”村の自慢”を巡る際に、村の魅力の再発見へ繋がることを効果的にもたらすものはないだろうか。そこで私たちは、村の大人だけではなく子どもたちにとっても村の自慢がわかりやすく、かつ興味をもって一見できる形でまとめられた”村の自慢が詰まったイラストマップ作り”に着手している。
イラストマップとは、村人たちからのヒアリングを基にマップの趣旨に添っていそうな村の自慢や財産の中からいつくかの対象物が存在する場所に、イラストとキャプションを配置したマップのことである。なお、キャプションとは各対象物の特徴を明記した説明文であり、イラストの意図をより汲み取り易くしている。
このイラストマップが完成すれば、日常的にも村の自慢に触れる機会もでき、村の財産へ目を向けることで、愛着につながっていく効果も多いに期待できる。
そしてマップを手に取ることで、村人たちがマップに描かれている村の財産をもっと好きになり”村の自慢”として巡りたくなるような思いを起こさせるようなツールの完成を目指している。
現在のイラストマップ第一稿
現在のイラストマップの第一稿は、主に村人たちから得た情報を基に、私たちがピックアップした森とのつながりを感じさせる村の自慢や財産を盛り込んでいる。このマップに盛り込んだ対象物とは、かつては継承されてきた伝統文化や、森の中にあるものを有効に使っていた彼らの知恵などである。例えば、伝統水路や、薬草とその使い方などが盛り込まれている。
この第一稿のイラストマップを改善するため、私たちはマップの英語版を作成した。そして、アンケート方式にて、マップに描かれた位置や情報の正確さ、他に村の自慢として盛り込むべき対象物はないかなどについて、TEACAのリーダー3名より以下のアドバイスを受けた。
① 現在のイラストマップの領域を広げて、各対象物が大きくかつ、見やすくするためにスケールの大きいマップにする
② イラストマップに載せた対象物は、森のどこに位置しているのかが分かりにくいため、村人たちにも分かりやすいように、村人の生活圏を含めた領域まで拡大する。また、方位が読み取れる要素を取り入れる
③ 多くの村人に分かるようにスワヒリ語へ翻訳をする。
以上の①から③のイラストマップの改善点と共に、第一稿のマップに取り入れていない対象物で、村人が思う”村の自慢”をマップに反映させていくことも今後の課題となる。彼らが思う”本当の村の自慢”を盛り込むことこそ、村人と共に作りあげる取り組みとなるからだ。そして、彼らの本意をマップに盛り込むことで、彼らが森を守る意義を内発的に持つことも可能となり、またツールとしての役割も果たすこととなる。
しかし、村人が思っている村の自慢を新たにイラストマップに盛り込むことを考えた場合、その対象物によっては情報が不足しているものもある。その場合、情報を補うために現地にて再調査を行い、村人からの正確なデータを入手することが必要である。また、現地調査の中で村内にある小学校の子どもたちを対象として、森に対する意識を調査するアンケートを行ったが、そのアンケートについては、まだ詳細な分析が出来ていない。多くの村人に興味や関心を抱いてもらい、なおかつ分かりやすいものにするためには、子どもたちの考えや視点をイラストマップや現地プログラムにも取り入れる必要があり、今後取り組んでいかなければならない課題の一つである。
現在進めている現地プログラムの製作に関しては、タンザニア・ポレポレクラブの活動に興味がある方や賛同して頂ける方々にも関わって頂きたいと私たちは考えている。なぜなら、アルバイトだけでは補えない専門分野や、多くの方々の好きなことや得意分野を活かしていくことで、より良いプログラム作りになるからである。
村人と共にキリマンジャロの森づくりを目指す仲間の輪が、今後も大きくなってもらいたいと思う。