以前ニュースレターで、同じタイトルでオピニオンをのせたことがある。タンザニアでは自由化の流れの中で、非効率で腐敗の蔓延する公社の売却、解体が進められてきたが、その売却先(資本参入や経営権の譲渡等も含む)が、最終的に海外の資本(とくに南ア系)となるケースがかなり見受けられる。
国内の民間資本が未成熟な同国では、こうした事態もやむを得ないのかも知れない。しかし、ビール製造や製糖産業等ならいざ知らず、金融、通信、運輸、さらにはエネルギーに至るまで、国家の屋台骨を成す基幹部門までもが次々と海外資本に呑み込まれていく様が、長期的に見て国家運営の正常な姿といえるのか疑問を投げかけたものだ。
そこにきて昨年末、「またか」と思わせるニュースが現地から飛び込んできた。タンザニアの北部には、セレンゲティ、ンゴロンゴロ、マニヤラ湖といった野生動物の宝庫として知られる国立公園がある。各国立公園には、ワイルドライフロッジ(セレンゲティ、ンゴロンゴロ)、マニヤラ湖ホテル(マニヤラ湖)という旧国営のホテルがあり、日本からサファリに出掛けられ、宿泊された方も多かろう。
それらのホテルが、昨年の12月に突然、南ア・インド系(らしい)の合弁企業に売却されてしまった。宿泊料はそれまでの一泊約$200から、既に一部予約済みの分まで含めて、1月から一気に$400近くまで値上げされてしまった。しかもそれまでは設定されていたレジデンツ料金は廃止してしまったというのだから、タンザニア国民のことなどまったく眼中にないといった経営方針で、まったくひどい話しである。
早くから予約を入れていた日本の旅行会社なども、相当混乱したのではないだろうか? 申込者に旅費の追加支払を申し入れるか、さもなくばホテルを変えるか、自社で損失を被るかである。上記のホテルを利用した場合、今後のサファリ旅行の旅費値上げは避けられないだろう。
悪路で知られていたマクユニ-ンゴロンゴロ間の道路整備(日本のODA)を見越して、マニアラ、ンゴロンゴロ、セレンゲティを押さえるあたりは、さすがというべきなのだろうか?エネルギー、金融等々と次々と国家の首根っこを押さえられた後は、今度は有望産業の観光かと思う。
「タンザニアは、経済的には再植民地化だな」という村人の呟きは、ますます現実を帯びてきたように思える。国家の体を成すのは殻ばかりで、中身は蚕食されているという経済構造は、やはりあまりまともな姿とは思えないのである。
それとも外資を受け入れつつこれを上手く利用し、見事にテイクオフしてくれるだろうか?