今夏の現地調査では、私もついに現地で携帯を買うことになった。山奥の村でも、パソコンと携帯はもはや必携のアイテムといえる。
この携帯電話、製造しているのは欧州や韓国のメーカーで、外観は日本のものと何ら変わらない立派なものだ。機能もメールどころか絵文字までしっかり付いている。最近はカメラ機能付きも登場し、そのうち手に携帯をかざし、道端でパチパチ写真を撮るタンザニアの人たちが増えてくるのだろうか?
ところで、タンザニアでの携帯電話は、日本とは支払方法が違う。日本では基本的に使った分を後で支払う従量制だが、タンザニアでは完全前払いである。後払いの従量制では、踏み倒す人が続出するのが火を見るより明らかだからである。
なので現地では、1000シリング、5000シリングなどのプリペイドカードをまず買うことになる。その分だけ通話が可能になるわけだ。踏み倒しのことを考えれば、これは当然の支払いシステムといえる。ところが問題なのは、このカードに“使用期限”があることだ。1000シリングなら1週間、5000シリングなら4週間である。
つまり携帯を使おうが使うまいが、期限が過ぎたらパァである。こんなバカな話はない。だから現地の人は、カードを買ったら最後、用事があろうが無かろうが、損をしないためには電話をかけるしかない。いや、一つだけ期限延長の方法があった。追加でカードを購入することだ。そうすると、そのカードの期限分まで延長される。だから携帯を使わなくても、期限延長のためにまたカードを買い、さらにまた買い足し・・・。まるで、抜け出せないアリ地獄にはまったようなものだ。
日本のテレホンカードにこんな使用期限があったら、果たしてみなさん買うだろうか?こんなシステムでは、日本では(先進国では)とても商売になるまい。無知を良いことに通信会社(外資)が殿様商売をしているのか、それとも、押し付けられたシステムと知りつつ、受け入れざるを得ないと現地の人は諦めているのか。。。貧しい国でこのようなシステムがまかり通るのが、何とも合点がいかない。ならば携帯など使わなければ良いという意見もあるかも知れないが、家計を顧みず、貧しいのにみんな持ちたがるから困るのだ。そして実際手にしてしまったら、その便利さに二度と手放せなくなるのは日本と同じ。本当にアリ地獄である。
一番損をしないのは、用事がなければ電話をかけずに、カードの期限が過ぎるのを虚しく眺めていることだ。実際そうしている人が多いだろう。いったい、通信会社がどれほどのボロ儲けをしているのか、考えてみると恐ろしくなる。
日本の通信会社の方がご覧になっていたら、いまがタンザニアでのビジネスチャンスだと提案したい。期限のないカードの支払いシステムで市場参入するのである。既に携帯を買ってしまった人の買い替え需要は、現地の人の経済事情を考えればあまり望めないが、現地の人口増加率と、これから携帯を持つであろう若い世代の人口構成比を考えれば、このシステムを採用した携帯電話をみんなが買うだろう。いかがなものだろうか?いや、ぜひ検討いただきたいものだ。
余談ながら、百歩譲って期限付きを認めたとして、普通なら高額のカードになれば、それだけ期限が長いなどのメリットがあってしかるべきなのに、1000シリングのカードを5枚買った方が、5000シリングのカードを1枚買うより累計の期限は長くなる(5週間)という、これもおかしな話である。続けてカードを買わせるための、これも企業戦略なのだろうか?