11月に来日していたTEACA(Tanzania Environmental Action Associaiton)の副代表のアドンカム・ムチャロ氏。その氏の来日中に、千葉県で日本の有機野菜直販、酪農、養蜂などについて視察をする機会があった。これらはすべて現地での取り組みに直結しているものであり、視察で得られた知識は、今後のTEACAの取り組みにとって、大いに参考になったようである(たとえば直販体制は、現地のコーヒー生産、販売でも目指されており、そこでは最終消費者との直接的信頼関係の構築とその方法が重要な要素となってくるといった点を学ぶ機会となった)。
こうした、現地事業に直接関わること視察とは別に、日本の文化にも触れてもらう機会を設けた。人の生活の基礎的要素として「衣食住」があるが、その一つ「住」について、千葉県鴨川市にある、国の登録有形文化財・旧水田家を訪れた。
旧水田家の全景
日本の気候の特性まで巧みに取り入れて建設されていた当時の家屋には、ムチャロ氏でなくとも、感嘆するより無かったが、ここではとりあえずそれは置いておき、その土間に鎮座しているカマドに目がとまった。タンザニアで普及している改良カマドの元々のルーツは日本にあることを、TEACAには以前から伝えてあったが、その現物にお目にかかれたのは幸運であった。それはたんにそのルーツを確認するという以上に、土から手でものを作り、古(いにしえ)というには遥かに現代に近い時点まで、多くの日本人がそれを利用していたのだ、という実感であったり、とかく高度な技術、いまあるモノにばかり目や意識が向かいがちな中で、発展の礎にあった日本の姿に触れて貰えたことである。
土間に鎮座ましますカマド
ところで、この改良カマドについて、何を材料にして作っているのかを、案内をつとめてくれていたおじさんに尋ねてみた。答えは「土(おそらく荒壁土)、それに”にがり”」だという。これにはムチャロ氏を差し置いて、こちらがビックリしてしまった。”にがり”を使うなど思いもよらなかったからだ。すべてのカマド作りにおいて”にがり”を使うとは思わないのだが(※)、さすが海の国、豆腐の国だと、先人の知恵とともに舌を巻くばかりであった。
※ おそらく凝固作用を利用してのことと思うが、当会の改良カマドでは、そのかわりに石灰を利用している。
考えてみればカマドに限らず、この屋敷自体、築百数十年だという。あの関東大震災にも耐え、いまなお当時の姿を伝えているとの説明であった。現代建築では表参道の同潤会ビルが、歴史を刻む建物として惜しまれつつも老朽化のために取り壊されたが、あのビルはその関東大震災からの復興を期して建てられたものだ。つまりは築70年ほど。
そんなことを考えても、日本の気候風土にかない、地場の優れた素材を使い、伝統に裏打ちされた技術で建てられた日本家屋とその家財のすばらしさには、ムチャロ氏ならずとも唸らされっぱなしであった。
みなさんもぜひ、お時間があったら旧水田家を訪問されてはいかがでしょう。案内人のおじさんがとても親切に説明してくれますよ!
(旧水田家の案内。鴨川市のホームページ → こちら )
屋内で囲炉裏についての説明を受けるムチャロ氏ら