伝統水路復旧支援

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当会はキリマンジャロ山麓で、山麓に暮らすチャガ民族の伝統水路(Mfereji)と伝統溜池(Nduwa)の復旧に取り組んでいます。これらはキリマンジャロ山から湧き出る泉を溜め、水が不足する乾季に農地を灌漑するために発達したチャガ民族の知恵とも言える存在です。

この伝統水路と伝統溜池は、大雨季の前と乾季になって灌漑を始める前に、毎年泥さらいや土手の整備などのメンテナンスが必要となります。ところが復旧を支援しているキリマンジャロ山麓の標高約1,700mにあるキディア村では、伝統水路の直下に、それに沿うように政府が給水(生活水)のためのポリパイプを埋設したことから、メンテナンスの度にこのパイプに穴を開けてしまうという問題が生じています。

パイプをずらすか、水路をずらすか、水路をコンクリートで固めるか、いろいろ問題解決のための案を検討したのですが、急峻な山肌を縫うように流れている水路やその直下にあるパイプを、山側にしろ谷側にしろ、ずらすのは至難で、かといってコンクリートで固めるとなるとコストが膨大となります。そこで、メンテ時にもっとも穴を開けやすい箇所は、水路自体をパイプに置き換え、メンテそのものを不要とすることにしました。

村ではさっそく水路用のパイプを埋設するための掘り返し作業が始まっています(写真)。タンザニアの独立後急速に進められた給水パイプライン敷設との競合から、一時関心が薄れていた伝統水路・伝統溜池ですが、近年の降雨の不安定化、雨量の減少から、多くの村々でこれらの先人の築いてきた知恵が見直されています。

水路用パイプ埋設のための掘り返し作業

水路用パイプ埋設のための掘り返し作業

水路用パイプ埋設のための掘り返し作業 


水路や溜池と同様に、チャガ民族の知恵である伝統農法(Kihamba)は、空間を多層的に使うアグロフォレストリーの一形態であると同時に、土地集約的な農法であるが故に、それと水路、さらには家畜との組み合わせが一体となって一つのシステムを形成しているといえます。村人たちの水路、溜池に対する再評価は、このシステムを考えた時、当然の回帰だったといえるのかも知れません。長い年月をかけて磨かれた先人の知恵の完成度の高さには尊敬の念を抱かずにはいられません。

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