キリマンジャロ山南山麓キルア地区の裸地尾根で植林に取り組む村人や子どもたち
キリマンジャロ山での植林は2021年、2022年と2年連続で降雨不足に遭い、育苗中の多数の苗木が枯れるなど、非常に苦戦しました。急遽配布予定だった苗木を植林用に回し、何とか計画通りの植林を実施することができました。ところが今年は一転して半端ではない大豪雨となり、タンザニア各地で洪水、土砂崩れが発生し、多数の死者が出るなど大きな被害をもたらしました。キリマンジャロ山でも状況は同じで、私たちが活動している村の一つでも土砂崩れのため1人が犠牲になってしまいました。苗畑でも育苗ポットの土がえぐられ苗木が流出したり、長雨による根腐れや生き残ったものも葉が黄変するなど、生長に大きな影響が出ました。
植林は以前は年末の小雨季にも実施していましたが、降雨の減少で植林ができなくなってすでに久しくなります。しかし最近の気候の変化や気象の荒れ方は、大雨季の植林のメインシーズンにも影響するようになってきています。
植林は早いところでは3月末から始まり、キリマンジャロの南山麓、南東山麓の裸地尾根(キルア)、村内裸地(マリンガ、ムボコム、キレマ)、谷川流域(ムボコム)、半乾燥丘陵地(キルア)を中心に取り組まれており、現在も継続中です。また今回の豪雨ではケニアでは貯水池が決壊し多数の家が濁流にのまれたことから、急遽以前も取り組んだ、山中の貯水池(キルア)の堰堤と周囲の土手強化のための植林に取り組みました。
植林は一つの場所でも豪雨のために一度に終わらせることができず、何回にも分けて実施され、村との日程調整や植林地への苗木の搬出入、村人たちのアレンジなど、目が回るような忙しさでした。
村の道は雨でドロドロ。車で苗木を運べるところまで運び、最後は植林地までみんなで運びます
植林はかつてはハーフマイル・フォレスト・ストリップ(HMFS)と呼ばれるバッファゾーンでの取り組みが中心でした。HMFSはキリマンジャロ山にある村の上部に広がっており、村に水を供給するほとんどの水源が存在するほか、里山の森として山麓住民にさまざまな日々のニーズを提供してきました。また、山に暮らすチャガ民族の伝統儀礼の場であり、一族の名を冠した伝統水路が流れ、一族の大切な木や会合場所があった場所でもありました。かつてHMFSの管理が山麓住民に委ねられていたとき、HMFSは“チャガ・オーソリティ・フォレスト・ストリップ”と呼ばれ、住民や民族の代表機関によって大切に守られてきました。しかし、タンザニアの独立と同時にその森は没収され、政府の管轄下に置かれることになり、そこで政府が始めたプランテーションによって破壊されていくことになります。山麓の住民たちは、政府がプランテーション運営に失敗した後に残された広大な裸地に森林回復を目指して植林に取り組み始めました。しかしそのHMFSは国立公園に取り込まれ、いまは植林による森林回復でさえ、人為による国立公園の自然破壊行為として許されません(そもそも中に入ること自体許されません)。
このため、山麓住民による植林の取り組みは現在村内エリアや村周りの尾根に移っています。キリマンジャロ山も麓から眺めると緑に覆われているように見えますが、一部の尾根は丸裸となった無残な姿をさらしています。そうした尾根は表土が失われ、わずかな土しか残っておらず、ほとんどの樹種が根付くことができません。この大雨季に植林に取り組んだキルアの尾根は、まさにそのような場所です。
キルア地区の植林地の一つを遠望。丸裸の尾根が広がっている
植林には少ないときで20人、多いときには100人以上の村人や子どもたちが参加します。天気を睨みながらの作業になり、せっかく集まっても雨のために解散せざるを得ないこともあります。山の天気は村人でさえ先が読めません、晴天だったのに一時間後には土砂降りの雨ということも間々あり、そんなときはもうみんなズブ濡れになって作業します。植林地に苗木を運び込んでしまっているため、途中で放り出すわけにいかないたねです。とにかくその日に運び込んだ苗木は最後まで植えます。もっとも村人たちはいったん作業を始めたら、誰も途中でやめようとしません。
雨季は村人たちにとって大切な農業の季節ですが、彼らはその手を休めても、森林を回復しようと植林に取り組んでいます。苗木が運び込まれ、整地作業が済んでいる状態で、苗木千本を植えるのに丸一日必要になります。今回キルアの植林では2箇所に計3千本を植えましたが、植林だけで5日間かかりました。農業への影響も少なくないはずですが、村人たちの森林再生にかける意気込みを見る思いがします。
広大な丸裸の尾根や谷川流域などは、一つの植林地だけでも植林を完了するのに十年でも足りません。キリマンジャロ山の村人たちは、そうした植林活動に毎年辛抱強く取り組んでいます。
一方、昨年の大雨季は渇水のため苗木が足りなくなり、配布用苗木まで植林に回さざるを得ませんでした。計画通りの苗木配布ができなかったことから、今年の大雨季は苗木配布にも力を入れました。
キリマンジャロ山では価格低下などから、かつてのようにコーヒー栽培で村人たちが生活を支えることが難しくなっています。そこで配布苗木に蜜源樹を多くすることで、地域全体で自然と養蜂に適した環境が整備されるようにしています。将来的に養蜂を可能とすることで、コーヒー収入の減少を補っていけるようするためです。
苗木配布は村内緑化の目的ももちろんありますが、このように村全体を見渡したときに、村人たちの生活を支えていく社会生活林として機能していくよう取り組んでいます。
この大雨季は計5千本の苗木を配布しましたが、多くの村人たちが苗木を欲しがり、まったく足りない状況でした。昨今の不安定な天候の状況もあり、植林分も合わせると育苗数はもう限界で、今後苗木確保をどうするかは重い課題となっています。そうした中で、オリモ小学校に新規苗畑を開設できたのは救いとなりました。
大雨季植林はいまも村人たちによって継続中です。当会はこれからもキリマンジャロ山での村人たちによる植林活動をささえていきます。
裁縫教室教師住宅補修のためのご寄付のお願い
ここでご報告しましたように、当会がキリマンジャロ山麓テマ村で支援している裁縫教室が、豪雨による土砂崩れ被害に遭い、教師住宅と寄宿舎に土砂が押し寄せました。幸い寄宿舎は軽微な被害で済みましたが、教師住宅は土砂を何とか壁で支えている状態です(上写真)。その壁にもヒビが入っており、危険で住める状況ではなくなってしまいました。
現在教師は家族とともにカウンターパートの事務所に移り避難生活を送っています。またそんな状況でも、授業に穴を開けてはいけないと普段と変わらず教鞭を執り続けてくれています。(下写真の右から2人目)
教師宅は、土砂が押し寄せてきた側の壁を取り壊して作り直さなければならず、その費用として約25万円が必要となっています。現地ではいまも雨が降り続いており、資材搬入を含めてすぐに工事に取りかかれるか分からない状況ではありますが、天候が回復し次第、可能な限り早く修復し、教師と家族が平常の生活を取り戻せるようにしたいと思っています。
この費用を賄うため、ぜひ寄付によるご協力をお願いいたします。多くのみなさまのご協力をいただけますよう、心よりお願い申し上げます。
●寄付の振り込み先:
・(郵便振込)
口座番号: 00150-7-77254
加入者名: タンザニア・ポレポレクラブ
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・(クレジットカード)
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