写真: 手作りの近代養蜂箱を見せてもらっています
私たちは現在キリマンジャロ山の3カ所で養蜂に取り組んでいます。養蜂ではとくに基礎的な技術をしっかり身に着けてもらうこと、山麓の村での管理に適した養蜂箱を開発することに重点を置いて取り組んでいます。
タンザニア政府も最近は産業としての養蜂の有望性に注目して国内での養蜂の拡大に注力しています。これまでキリマンジャロ山の村でも養蜂箱を配布するなどの取り組みがされましたが、残念ながら定着するに至っていません。
村人たちは養蜂箱を置けばハチミツを収穫できるように思ってしまいますが、やはりそう簡単にはいきません。ハチたちの様子を見ながらある程度の管理をしていかないと、コンスタントに採蜜することはできないからです。結局養蜂箱は放置されるだけになり、そのうち朽ちてしまいます。
実践を通して基礎的な技術を身に着けるまでには2,3年かかりますから、それまで根気強くミツバチたちと向き合っていく必要があります。
そうした中で、キリマンジャロ山の登山口としても知られるマラングーにある村で養蜂にチャレンジしている若者がいるという話を耳にしました。すでに2年ほど取り組んでいるということですが、聞き齧った知識を頼りに自分で近代養蜂箱(ラングストロース)まで作ってしまったというので、さっそく訪ねてみました。
お会いしたのはジャクソン・ムトゥイさん。驚いたことにすでに40箱ほども養蜂箱を設置していると言います。案内してもらうと本当に村のあちこちの木に養蜂箱が吊るされています。しかもとんでもない高さに吊るされていて、養蜂箱の上げ下ろしだけでも大変な労力だろうと想像されました。
写真:「ほら、あの木の上の方にも養蜂箱を吊るしてるよ」と説明するムトゥイ氏
養蜂箱自体も近代養蜂箱がある一方で、伝統的な木をくり抜いたもの、長さ1mほどの立法形に板を組んだもの、果ては壺まで、中が空洞ならなんでもござれくらいいろんなものが吊るされていました。
写真: 長方形のものや壺やら、いろいろ木からぶら下がっています
昨年は4リットルほど採蜜できたそうですが、やはり「待ち」のスタイルで、とくに近代養蜂箱であるラングストロースタイプは必要なパーツ(巣礎)が手に入らず、宝の持ち腐れ状態になっていました。またここでも害虫による被害が極めて大きく、その対策が安定的な採蜜量とハチミツの品質確保に欠かせないと感じました。
ラングストロース養蜂箱はタンザニアで一般に導入するには向かないこと、当会で標準とできる養蜂箱を開発中で、完成したらサンプルを支給できること、また合わせて養蜂研修を提供することを伝えると、とても喜んでくれました。
今後彼がマラングーエリアでの養蜂のモデルとなっていけるよう、定期的な訪問と指導を継続していくことにしました。