裸地化したキリマンジャロ山麓オールドモシ区の尾根
半乾燥地での植林を皮切りに、3月から開始した大雨季植林が完了しました。キリマンジャロ地域では、大雨季の降雨は4月から5月がメインですが、今年は降り出しは順調だったものの、とくに山中では6月になってもかなりの雨が降り続き、植林の予定にかなりの影響が出ました。通常植林実施日の1カ月以上前から各村で広報を開始しますが、一度決めた植林日が大雨で作業ができず、再度決めた日にもまた雨ということが何度も繰り返されました。大雨季ですから雨が降るのは当たり前といえば当たり前なのですが、ここまで予定を狂わされたことはこれまで経験のなかったことです。それでも雨が降らないよりましかとも思いますが、昨年の大雨季には集中豪雨による土砂崩れで死者まで出ましたから、降るにしろ降らないにしろ、気候の振れ方が極端になっていると感じます。植林も、本来なら雨季の開始とともに即実施するのが望ましいのですが、着手時期の判断がとても難しくなっています。
そうでなくとも、キリマンジャロ山での植林はいま転機を迎えています。山麓住民にとって彼らの生活の一部であった里山の森(ハーフマイル・フォレスト・ストリップ(HMFS))が国立公園に取り込まれてから、植林はHMFSの下部に広がる村落エリアに移っています。村落エリアの尾根もかなりの場所で裸地化しており、こうした場所ではすでに土壌流出により表土が流され、また土砂崩れが頻発しています。一方、こうした場所は地域住民が裸地化後に繁茂したイネ科の雑草を家畜の餌とするための草刈り場として利用もしています。そこに里山(HMFS)利用から押し出されたニーズが重なるようになっています。森林再生による土地の保全と裸地利用を含む増大する生活資源の確保という、相反する地域のニーズの両立を図っていける植林を進める必要があります。
このため当会は山麓の40村と協力し、裸地尾根での森林再生に取り組むとともに、生活資源確保、収入向上のための社会生活林の形成に重きを置く植林へと軸足を移しつつあります。社会生活林の形成では薪炭材だけでなく、枝葉を家畜飼料として利用できたり、蜜源樹として養蜂に役立つなど、様々な住民のニーズに対応できる多目的樹(マルチパーパスツリー)による植林を進めています。これにより森林再生と生活資源確保の対立の緩和が図れるようにしています。とはいえ、里山から押し出されたニーズを村落エリアの尾根ですべてカバーするのは難しいといえます。
裸地尾根で植林に取り組む村人たち
そこで山麓村と今後力を入れようとしているのが、上でも触れた養蜂です。キリマンジャロ山では養蜂自体は古くから存在していましたが、生業として営むというより、収穫された蜂蜜を滋養や儀式のために役立てるなど、限られた目的のために行われていました。これを山麓村での新たな現金稼得手段として、家計を補助していいける程度まで規模を拡大していけるようにしようというのが社会生活林形成の狙いです。押し出されたニーズをそっくりそのままカバーするというのではなく、再生される森林に新たな位置づけを持たせ代替させていこうというものです。
この考えは徐々に山麓村で受け入れられつつあり、今後各村に「みつばちの森」をつくっていこうとの機運に繋がりつつあります。このため裸地化してすでに長い年月が経っており、土壌劣化が激しい尾根では劣化土壌に強い樹種による森林再生を主目的とした植林を、まだ比較的土壌の荒れていない場所では多目的樹による「みつばちの森づくり」を目指した植林という2本立ての植林が、キリマンジャロ山での植林の新たな方向性となりつつあります。
今年大雨季の植林では、森林再生を目的としてキリマンジャロ東南山麓オールドモシ区の裸地尾根で、劣化土壌に強いPinus patulaを主力とした4,000本 の植林にのべ284人の村人たちが取り組みました。一方、社会生活林形成植林は南山麓キボショ区で取り組まれ、Croton macrostachys(蜜源、マルチ供給)、Grevillea robusta(家畜飼料、蜜源、土壌保全)、Pinus patula(薪炭材)2,000本がのべ153人の村人によって植えられました。
どちらの植林も雨に悩まされ、何回にも分けて2カ月間にわたって取り組まれました。日程の調整には苦労しましたが、何度も繰り返したことは、地域における森林保全+社会林形成という認識の浸透と深化には寄与した面もあり、痛しかゆしといえます。
今後は各村で「みつばちの森」をどこにつくっていくかを決めていくことになります。それにつれ新たな苗畑の開設や、それぞれの土地条件に合ったさらなる樹種の拡大などが必要になってきます。また、養蜂の拡大と確実な定着を図るための技術研修やモデルプロットの確保も課題といえ、今年度取り組むことにしています。
※キリマンジャロ山での森林再生植林と社会生活林形成植林は、3年間にわたり国土緑化推進機構「緑の募金」によるご支援をいただきました。キリマンジャロ山麓村による植林の新たな方向性と礎を築く取り組みを支えていただきました。ここに記して感謝申し上げます。
キリマンジャロ山で村人たちと組んでいる植林活動を応援してください!

キリマンジャロ山では、過去100年間に約3割の森林が失われたと言われています。過去政府によって運営されていた森林プランテーションの失敗や、森林保護政策の失敗から、丸裸となった尾根や裸地があちこちに広がっています。
タンザニア・ポレポレクラブはキリマンジャロ山に暮らしている村人たちと協力して、こうした裸地に森林を回復し、山の自然と人々の生活を守っていくために植林に取り組んでいます。
2025年の大雨季には、半乾燥地を合わせて1万本以上の苗木を村人たちと植えることができました。植林が必要とされている裸地は広大で、これからも根気強く植林を続けていく必要があります。
このキリマンジャロ山での植林活動をご寄付でぜひ応援していただけますよう、よろしくお願い申し上げます(100円で1本の苗木を植えることができます!)。
●ご寄付の方法
・当会HP「植林寄付」ページ(クレジット決済)→ https://polepoleclub.shop-pro.jp/?pid=66771121
・郵便振替口座:
口座番号: 00150-7-77254
加入者名: タンザニア・ポレポレクラブ
※郵便振替の場合は、備考欄に「植林支援」とご記入ください。