変わることのない地域住民へのレッテル貼り

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海外活動森林保全

キリマンジャロ山に暮らす村人たちがあたかも森林の破壊者であるかのような発信を、相変わらずキリマンジャロ国立公園公社(KINAPA)が続けています(以下URL記事)。

https://www.ippmedia.com/en/features%20%20dead-wood-collectors-turn-out-be-illegal-loggers-tanzania%E2%80%99s-top

記事では村人たち(女性)を信用して国立公園での薪集めの機会を与えてあげた(offer)のに(週2回、各3時間)(※1)、その一部は信頼を裏切り生木を切るばかりか、男と結託して違法伐採まで行っているとしています。そしてKINAPA自身はそんな村人を教育し、支援する善人のような論調ですが、果たしてそうでしょうか?

村人たちに“機会を与えてあげた”とする“国立公園”の森は、もともと地域住民が長く維持し、利用してきた里山の森(ハーフマイル・フォレスト・ストリップ(HMFS)と呼ばれるバッファゾーンの森)でした。しかしその森は、世界遺産を守るために必要であるとの以前からのユネスコの勧告を受け入れ、2005年に国立公園が拡張され、取り込まれてしまいました。その間、村人たちはまったく蚊帳の外に置かれていました。それが“機会を与えてあげた”とお情けのように言われる“国立公園”の実態です。

キリマンジャロ山の森林近くに暮らしている村人たちの生活体系は、森の存在をその中に組み込んで成り立ってきました。それゆえ森を大切に維持しながら利用してきました。国際自然保護連合(IUCN)の報告書は、地域住民たちが政府より森を守ることに成功してきたことを明らかにしています。

そして里山の森(HMFS)を国立公園に取り込むことは、以下の理由からもともと正当性がありません。

  (1)   国立公園への接収は、地域住民への事前説明も、意見を言う機会も与えることなく実行された。これはユネスコ自身が必要性を主張するFRIC(free, prior and informed consent:事前の十分な情報に基づく自由な同意)がまったく欠如した状態でそれが行われたことを意味している。
 
  (2)    天然資源観光省自身がタンザニア国立公園公社(TANAPA)に対し、HMFSは国立公園に含まれないことを指摘している。
 
  (3)    天然資源観光省とTANAPAは、国立公園に取り込まれたHMFSを返還することで合意している。
 
  (4)   政府は、HMFSが含まれない新たな国立公園境界の測量を済ませている。

このように里山の森(HMFS)は、正当性なき国立公園による占拠状態にあるのであって、そのことこそが問題視されなければなりません。生きていくためにやむなく森を利用する村人たちを犯罪者であるかのように宣伝することは、本末転倒の印象操作以外の何物でもありません。ましてそのために村人たちは命まで奪われている現状を、いったいどう正当化するつもりなのでしょうか。(※2)

さらに、人々に物事を強要するのであれば、適切な補償が先にあるべきです。森の利用から人々を強制排除するのであれば、国立公園公社はすべての住民に毎日家畜の餌なり薪なりを支給しなければなりません。国立公園収入から支援を受けたごくわずかな住民は確かにいますが、それをもって数十万人の村人たちの置かれた現状をこの記事のように代弁することはできません。

記事の中でも村人が述べているように、いまや薪集めも家畜の餌の採集も、女性のみで果たさなければならない極めて過酷な労働となって、彼女たちにのしかかっています。実際、毎日のように家族みんなで集めていたもを、限られた日にちと時間内で、女性だけで集めることは無理で、家計を支えてきた家畜を手放さなければならなくなった村人たちが数多くいます。国立公園公社は、村人たちは薪が足りなくなったら、煮炊きせずに食事をせよというのでしょうか?逮捕や暴行を恐れ、許された時間内で何とか薪を集めるためには、近場で生木であっても切らざるを得ないような状況は、いったい誰が招いたのでしょうか?そのようなことは、国立公園の森林破壊者という欺瞞に満ちた広報に隠され、決して表に出てくることはありません。

家畜の餌となる草を森から集めてきた村の女性。重量は50キロを超えることも。

家畜の餌となる草を森から集めてきた村の女性。重量は50キロを超えることも。


森林を守るという目的も、守りたいという意思も、政府と地域住民の間に何らの齟齬もありません。政策は、その目的を達成するためにもっとも合理的な手段が選択されるべきであるはずです。キリマンジャロ山において地域住民がもっとも森林保護に力を発揮してきたという歴史的にも明らかな事実を踏まえるなら、森から彼らを排除することではなく、彼らの能力にこそ信頼を置き、そんな彼らを支援し、協力する形での政策こそ本来望まれることではないでしょうか。当会はその実現をキリマンジャロ山で目指しています。

※1
今年2月3日の国会答弁で、天然資源観光省副大臣は「キリマンジャロ国立公園の唯一の目的は、それを保護し国に収入をもたらすことであって、その他のいかなる行為、たとえそれが落ちている薪の採集であろうと一切許されない」と発言している。

※2
当会フェイスブックに、国立公園公社のワーデンによって村人が殺されたときのニュース報道へのリンクがあります。なおこの事件は、上記のリンク記事で取り上げているムシリ村で起きたものです。

https://www.facebook.com/TanzaniaPolePoleClub/posts/2395397434006280

キリマンジャロ山で村人たちの『命の森』を取り戻す当会の取り組みをぜひご支援ください!

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