Going my way – マグフリ大統領

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薬草由来の強壮剤

薬草由来の強壮剤

 

世界を揺るがしているコロナウィルス。その対応について、最近タンザニアの様子がどうもおかしい。

ここ1週間ほど、タンザニアのコロナウィルスの感染者数が、480名でとまったままピタリと動かなくなっています。

本当に感染者が増えていないのであればそれは素晴らしいことなのですが、果たしてどうか、最近のタンザニアの動きを見ていると懸念を抱かずにはいられません。

もともと政府発表の感染者数については「少なすぎる」、「政府は正確な感染者巣を隠蔽している」との批判が野党から出されていました。村人に聞いても、「周りで葬儀が明らかに増えている。感染者が増えていないというのはおかしい」と、彼らなりの論拠をもって疑念の目を向けています。

タンザニアでは昨年、エボラ出血熱による死亡が疑われる事例が発生した際、情報を提供しなかったとして、世界保健機関(WHO)がタンザニア政府を非難するという事件がありました。タンザニア政府はこれを事実無根として真っ向から否定しましたが、結局事実は何だったのか明らかにされることもなく、うやむやなうちに葬られてしまいました。

こうした「前科」があるだけに、政府発表のコロナウィルス感染者数に対して、タンザニア国民の向ける疑念の目は根深いものがあると言えるでしょう。

そこにきてこの5月3日、マグフリ大統領は同国でコロナウィルスの感染チェック(検体検査)を担ってきた国立研究所の所長と幹部を、突然停職に処してしまいます。タンザニアでは4月初旬まで感染者数は20名程度でしたが、中旬以降50名以上増加する日が発生し、4月29日にはついに前日比194名増加し、現在の政府発表である累計感染者数480名になりました。

マグフリ大統領はこの増加数に疑念を持ったらしく、研究所には分からない形でニセの検体(果物、動物、油)を送りつけたところ、その一部からコロナウィルスが発見されたとの結果が出されたことから、この処分に至ったようです。こういうやり方自体どうなのかと思いますが、大統領は「検査キットか、検査技師か、検査体制に問題があるか、あるいは(他国)外部者による(研究所への)干渉(あるいは結託)の可能性がある」としています。

タンザニア政府のコロナウィルスへの対応は、厳格な封鎖や制限を採る近隣諸国とは大きく異なっており、都市封鎖や外出禁止などをせず、仕事やマーケットなどもそのまま、教会やモスクなど宗教施設での礼拝も止めないなど、そのやり方に対して他国から批判が出ていました。しかしそうした指摘をする先進国の記者に対してマグフリ大統領は、「感染爆発を起こしている国から来た人間が何を言うか」と手厳しく非難しています。

大統領が疑うように、もしかしたら研究所に問題はあったのかも知れません。しかし今回の研究所所長の停職処分や、就任以来これまで大統領がとってきた態度をみるにつけ、今後大統領の意向に沿わない数字(感染者数)を政府機関やその担当者が出すことは難しいように思えます。そうしなければいつでもクビにされる恐れがあるからです。たとえ大統領にその気がなかったとしても、周りの者はそう受け取るでしょう。

感染者の数がピタリと止まったのは、実際に増えていないのではなく、数字を出したくても出せない状況が生まれているのではないかと思えます。これまでも政府発表の数字に対する懸念はありましたが、今後ますます額面通りに受け取ることは難しくなりました。

さらにマグフリ大統領は、コロナウィルス治療のためにマダガスカルの薬草から抽出した強壮剤(トップ画像)を使うつもりだとして、その入手のためすでにマダガスカルに飛行機を派遣したと発表しました。この薬草も、先のWHOが「治療の証拠はなく、使うべきでない」と警告を発しているものです。

どこまでも「going my way」な大統領。
コロナウィルスへの対応について世界はまだ正解を手にしておらず、タンザニアの、マグフリ大統領のやり方が間違っているとは言えないのでしょう。

しかし数字を額面通りに受け取ることはますます難しくなった。それだけは間違いありません。

 


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