テアカの苗畑(育苗規模は年間約2万本)
例年1月に入ると、4月から始まる大雨季植林に向けた各村との打ち合わせなど準備が開始されます。植林計画はキリマンジャロ山の8カ所に設置されている拠点苗畑での育苗状況に左右されますが、現段階では全般的に育苗が遅れ気味です。現場からは「大丈夫」との連絡が入ってきていますが、少々やきもきしています。
ここで簡単に、これまでのキリマンジャロ山での植林体制について振り返ってみたいと思います。当会が活動を開始して約20年間、現地カウンターパートであるテアカが山麓での村落植林活動を牽引し、主導的役割を果たしてきました。設置される苗畑の数や場所は植林する場所などにより、この20年で様々な変遷がありましたが、拡大展開から拠点苗畑への収斂というのが、全体で見た場合の流れとなっています。苗畑の数だけ見ると最大時14カ所でしたが、現在は拠点苗畑8カ所体制になっています。
また、それぞれの苗畑も当初はテアカの支部という位置づけでしたが、徐々に各苗畑グループの独立性を高め、さらに現在では各村直轄の体制に移行しています。このことは育苗、植林の主体を誰が担うのかという点に違いとなって現れますが、これはとりもなおさず、地域の森林保全活動を主導するのは誰なのかという、意識のバトンタッチを図ったことに他なりません。
広大なキリマンジャロ山の森林保全活動を一つのNGOがマネジメントしていくことは到底不可能で、各村が主体性を発揮していくことが大事です。したがってこれまでの流れは、基本的にこの線に沿ってきたと言って良いと思います。
しかしその流れも、いま転機を迎えています。とくに拠点苗畑体制は役割を終えつつあると考えています。現在1カ所の拠点苗畑が数カ村の植林(植林用苗木の生産)を支えています。しかしこの拠点苗畑体制は、持続可能性という点において決して最適な方法ではありません。集中管理が出来るという点では優れますが、とくに資金面において弱点を抱えています。運営のためには毎年ある程度のまとまった資金が必要となり、外部からの支援がある間は良いのですが、それが止まると運営が行き詰まってしまいます。
そこで今後目指すべきは、一端収斂させた苗畑を、再度拡大(=すべての村に対し)に転じることです。これはおかしく聞こえるかも知れませんが、そこで重要なのは育苗規模です。これまで各拠点苗畑では年間5千本~2万本の範囲で育苗していました。そうすると苗畑専用に用地や給水設備、さらに毎年それなりの資材、道具、人員等の確保が必須となり、これが苗畑運営の持続性を縛ることになります。
そこで各苗畑の育苗規模を100本~200本程度に絞り、これをすべての村で展開するようにします。この規模であれば個人の家でも育苗可能で、育苗ポット以外は自前の道具を流用すればそれで済むようになります。
植林の時期にはそれぞれの地域で決めた植林場所に各村が育てた苗木を持ち寄るようにすれば、植林規模は毎年それなりの数を確保することができます。苗木の品質のばらつきは避けられませんが、持続可能な方法であることの重要性を考えれば仕方がない部分でしょう。
とはいうものの、この転換がすぐに実現できるわけではありません。すべての村との協議、合意のもとに実行していく必要があり、指導、フォロー体制まで考えると数年はかかるだろうと思っています。まずはこうした考えを少しずつ伝えていくところから始めたいと思っています。
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