国立公園公社によって伐採されてしまった「エデンの森」の境界
キリマンジャロの村に入って2週間になります。今回の現地入りで最重視していた目的の一つに、「国立公園が返ってくる!?(’17/02-①)」でご報告したキリマンジャロ国立公園公社(以後「公社」と表記)による、国立公園エリアの一部利用許可と、村との境界ラインにおける10.5m幅での伐採の実態確認があります。
現地に着いてまず言われたのは、「危険だから近づくな」という村人たちからの警告でした。つまり、伐採による分断ラインの造成は事実だということです。そして村人たちの言葉からも、この分断ラインの造成が村人と公社との関係を一層悪くしていることが実感されました。
一方、先のご報告に間違いがあることも分かりました。情報では、村人が利用できるエリアとして10.5mを設定し、さらにその奥にあたる場所10.5mを伐採して分断ラインを造成するというものでしたが、事実はそうではなく、存在しているのは分断ラインのみで(幅も10.5mではなく10m)、村人たちが利用を許されるというエリアは一切存在していませんでした。
森林を伐採し造成された分断ライン
「危険だから近づくな」とは言われたものの、現場は村に接しているので、村の境界を歩けばそのまま目に飛び込んできます。その現場の状態が写真2になります。ここはもともと政府の伐採により裸地化していた場所を村人たちが植林し森に戻した場所ですが、その森が見るも無残な姿をさらしていました。
しかもここはいま国立公園であり、村人たちは落ちている薪を拾うことも許されません。一切の人為的行為を違法とする国立公園で、その国立公園を管理する公社がこのような森林の伐採を数十キロメートルにわたって行っています。村人たちが激怒しているのは言うまでもありません。一部の村は公社による伐採を拒否し、それを州知事が乗り込んで押さえ込むという事態になっています。さらに別の村では、公社が村のエリアに食い込んで勝手に分断ラインを造成したことから、怒った村人たちが国立公園に侵入し、食い込まれた分の木を切ってしまうという事件まで発生しています。
前々回の「国立公園が返ってくる!? (’17/02-①)」でも触れましたが、十分な説明をすることもなく生活の森を奪うという政府のトップダウンによる横暴な姿勢が、世界遺産の山でレンジャーによる村人の殺害にまで至る大問題を引き起こしています。ところが政府はそうした姿勢をまったく顧みることなく、またもトップダウンで物事を推し進めています。このような政府の態度には本当に辟易とさせられます。
3月4日に開催された代表者会議に集まった40村の代表者たち
そうしたなか、森林に沿う40村による地域連合は代表者会議を開催し、4月から始まる大雨季に向けた植林計画を立案、副大統領府への提出に向けて動いています。さらに副大統領府の大臣には実際に現場に来てもらい、地域住民がいかに森を守ってきたのかを見て判断してもらおうとしています。その森こそ、このプロジェクトで取り上げている「エデンの森」です。
以下のURLは、40村のリーダーが代表者会議の中で”どの森を見てもらうか”を話し合っている時の録音へのリンクです。その話し合いの中で真っ先に名前が挙がったのが、テマ村を含む複数の村の上部に広がっている「エデンの森」でした。「エデンの森」がキリマンジャロ山の森林に沿って暮らす10万を超す村人たちの想いと希望を背負った森であることが、ひしひしと実感されました。
http://polepoleclub.jp/170306kihacone mtg.mp3
(録音はスワヒリ語ですが、20秒ほどのところで「エデンの森」の名前が挙がっています。「地域住民がどれほど森を守ってきたか、”エデンの森”こそその見本だ」と言っています)。
副大統領府から大臣が来た時、多くの村に貼られている村人たちが守った誇りの森”エデンの森”のステッカーを、ぜひ目にして欲しいと思っています。そして森を切り開き人と自然を分断する自然保護政策が良いのか、地域住民の森を守る力を信じその上に立脚する保護政策が良いのか、その目で見て決断して欲しいと思っています。