事務局日誌: 国立公園に向けるまなざし

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事務局はこの11日に活動地であるキリマンジャロ山から戻りました。現地では国立公園に取り込まれた生活の森「ハーフマイル・フォレスト・ストリップ」の地域への返還とその主体的管理を求める地域連合KIHACONE(Kilimanjaro Half mile forest strip Conservation Network)と、その実現に向けた取り組みのために息つく間もないような毎日でした。

キリマンジャロ山の森を守るという目的のために、国立公園ありきを前提として決定された政策は間違っていると当会では考えていますが、ひとたび政策として実行されてしまえば、それを変えていくことは容易なことではありません。

今回の現場でもその困難な状況を突き崩そうと地域の人々と立ち向かう日々でしたが、日本に帰ってきたら、所変われど、と思える記事が目に留まったので、ここではそのご紹介をしたいと思います。

それは3月15日付けの沖縄タイムスweb版に掲載された「ハチにしか見えないのにガと見破れたワケ 23歳大学院生に聞いた」という記事です。当会の活動とはおよそ関係のなさそうな見出しの記事ですが、その項目の一つに「懸念は国立公園化」というのがあったため目に留まりました。

沖縄本島北部一帯の「ヤンバル」が国立公園化されることはニュースでご存じの方も多いかと思いますが、記事では国立公園化による観光客の増大が自然環境にもたらす影響を懸念すると同時に、そのことによって学術的に貴重な発見や解明の機会が失われてしまうことを懸念する内容でした。

「貴重な動植物を保護するだけが目的になってはならないと思う」と記事はくくっていますが、その結論はまさにいまのキリマンジャロ国立公園が抱えている状況そのものです。貴重な動植物は保護されなければなりません。しかしそのことだけを考えれば良いというものでは決してありません。キリマンジャロ山ではその結果として地域住民の人権、生活権、生存権が切り捨てられました。そして保護すべき動植物も守れない状況を生んでいます。

記事ではその解決策として「緩やかなすみ分け」を述べていますが、それは守るべき対象とそれを取り巻く様々な要素とを絶対的に切り分けて考える手法とは対置をなすものでしょう。キリマンジャロ山では残念ながらそうした考えはされずに政策(国立公園化)が実行されました。

ヤンバルがどのような国立公園となっていくか。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、世界遺産登録を目指すヤンバルの登録の条件として、対象地域の法規制による自然保護の強化を求めています。その求めに応える方策として、環境省はヤンバルの国立公園指定を決めました。それは悪いことではありませんが、キリマンジャロ山の状況を見るにつけ、どのような国立公園となっていくのか、これからも注視していきたいと思っています。

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