村役場に張り出された選挙の告知文
タンザニアでは10月25日に大統領選挙、国会議員選挙、地方議会選挙があります。この選挙のために7月には国会もすべての県議会も解散され、選挙結果が出るまでの約4ヶ月弱の間、同国には国会も県議会も存在しないという、日本では信じられない状況となっています。
キリマンジャロ山の山奥の村でも、人が顔さえ合わせればもう選挙談義でお互い口角泡を飛ばし・・・という有様で、そのヒートアップぶりが伺えます。それもそのはずで、今回の選挙ではタンザニアの独立以来、そして同国が複数政党制に移行した1992年以降もずっと政権与党であり続けた革命党(CCM)に対する強烈な逆風が吹いているからです。さらに8月には政権与党で首相まで務めた大物が、与党での大統領候補から漏れたことを不満にいきなり野党に鞍替えし大統領選に出馬することになり、ますますヒートアップしています。
選挙が実施されるのは上記したように10月25日なのですが、地方レベルでは各政党ごとの国会議員候補者指名選挙、県議会議員候補者指名選挙が事前に実施されます。今回村役場に行った際、その事前選挙(CCM)に使われる投票箱を見せてもらったのですが、部屋の片隅に置かれたその箱は、なんとただの段ボール箱(しかも思い切り使い古し!)。側面にはこれも子どもの落書きかと思うような殴り書きで「国会議員(Mbunge)」、「区長(=県議会議員、Diwani)」の張り紙。はじめ見たときはただのゴミ箱かと思ってしまいましたが、村人たちのヒートアップぶりとこの投票箱のギャップの激しさが何ともおかしかったです。
ゴミ箱? それとも投票箱!?
タンザニアでは選挙ともなれば票の不正操作だの投票箱のセキュリティだの、またかと思うようなきな臭い話しばかりが目立ちます。ときには肝心のその投票箱自体が投票所に間に合わないといったことすらあります。しかしこの投票箱なら間に合わないは絶対にあり得ません。いつでもどこでもそこらで拾ってくれば準備万端。箱の準備ができたら殴り書きの張り紙で完了です。段ボール箱ですからセキュリティはゼロですが、それゆえに村レベルではそもそも不正など起きないからだと納得できます。
とかく選挙や政治の問題ではギスギスしがちですが、この”段ボール投票箱”には、村のおおらかさや平和を見る思いがし、何とも救われた気分になりました。