ママ・ンティリエ “マテソー” とママ
いきなりママ・ンティリエ”マテソー”などとと書かれても、何のことだか分かりませんよね。ママ・ンティリエとは、スワヒリ語で道端や粗末な小屋がけなどで惣菜を提供している普通は女性たちのことを指していう言葉で、”マテソー” は 「拷問」 という意味です。
なんだか重そうなタイトルですが、じつはまったく違って、ママ・ンティリエ”マテソー”は、私とTEACAのリーダーであるモシさんが、モシ近郊の青空市場キボリロニにある小屋がけのお店(と呼べるか微妙ですが・・・)に、いつの頃からか付けた名前なのです。
たしかに広さは3畳ほどしかなく、中は薄暗く、テーブル1つと傾いた長イスが2つあるだけで、雰囲気は”マテソー”と呼べなくもないかも知れません。しかしそこにいるのは、私たちが”マテソー”なんて呼ぼうがそんなことはまったく気にかけない陽気で気さくなママ。
私が何故ここに来るようになったかというと、この”マテソー”が車の修理屋さんの隣にあったからなのです。頻繁に故障するTEACAの車を修理しているあいだ手持ちぶさたにしていた私を、モシさんが「ちょっと行ってみようか」と誘ってくれたのが初まりです。看板など出ているわけもなく、「トイレか??」と思ったその小屋が”マテソー”でした。
ママ・ンティリエ”マテソー”では、牛骨のスープやチャパティ、マンダジを出してくれますが、私はひたすらコーヒー派です。ママの家でとれたキリマンジャロコーヒーを自家焙煎し、そのままヤカンで煮出したものですが、一口飲んだだけで本当に幸せな気分になれます。それはコーヒーの味ばかりでなく、ママとあれこれ交わすたわいもない会話あってこそのこと。
ママは旦那さんを亡くし、女手一つで息子さんを育て大学まで通わせています。苦労話などするママではありませんが、”マテソー”での売り上げなど本当に知れています。奨学金を貰ったのかも知れませんが、ずっと生活を切り詰めて一生懸命にお金を貯めてきたのでしょう。休めることなく手を動かし、チャパティを焼いているママを見ていてそんなことを思っています。
ガレージが引っ越してしまい、最近はすっかり足も遠のいていたのですが、この間久しぶりに寄ってみました。迎えてくれたのは変わらず陽気なママの笑顔とたわいもない会話、そしてコーヒー。懐かしい故郷に帰ったような気分になりました。またママに会いに行こう。