事務局日誌: データから見る村の様子と人々の暮らし(No.6)

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キリマンジャロ山でかつて村人たちの生活を支えていたのは、何といってもキリマンジャロコーヒーです。しかし1900年代後半から激しく値を落としたコーヒーに嫌気を差し、多くの村人たちはコーヒー栽培を放棄してしまいました。

では彼らはコーヒー栽培をやめて、いった何に家計収入の道を求めたのでしょう。その一つが、前回までのご報告で触れた家畜飼育、そしてコーヒー畑をバナナ畑に転換してしまうことです。前回、森に近い村区ほど家畜保有頭数が多い傾向にあると書きましたが(たとえば一番森に近いMaideni村区では、1999年時点で1世帯あたり牛2.1頭、山羊1.4頭、羊0.6、豚0.3頭、鶏4.8羽等)、いま村を歩くと、山羊や鶏は3倍以上にはなっています。牛も平均2頭だったのが、現在では最低2頭ではないでしょうか。そしてかつてバナナを庇陰樹としてコーヒーを栽培していた伝統畑”Kihamba”では、コーヒーがばっさり切り落とされ、バナナの植栽密度を増やしています。

こうしたことは、たとえばタンザニアの主要コーヒー産地における農業所得内訳を示した表2(2004年)からも理解することが出来ます。表2のうち、「北部高地」にあたるのがキリマンジャロ山麓になりますが、コーヒーの農業所得に占める割合はわずか5%程度、それに比べ家畜による収入は4割超、バナナのそれは約3割を占めるに至っています。

 

(表2)タンザニアの主要コーヒー産地における農業所得内訳の表

(表2) タンザニアの主要コーヒー産地における農業所得内訳の表

 

主要な収入稼得源の家畜飼養への比重移動は、当然それを支える森林への依存度を高めることへと繋がるでしょう。その一方で、引き続く人口の流出は、これとは逆向きのインパクトを森林にもたらすでしょう。

ここまでに国勢調査の数字をキーにして、村の様子と人々の暮らしの様子を見てきました。もとよりこれで村の全容が分かるわけではありませんが、人口の流出、高齢化、主要収入稼得源の転換など、激しい変化の波に洗われている村の様子を少しでもお伝えできたのではないでしょうか。

※表2 出典: プロマーコンサルティング「高収益農業研究アフリカのコーヒー産業と日本の貿易・援助 -タンザニアとエチオピアのコーヒー産業及び輸出促進に対する支援策等-」

 

(おわり)

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