1. Natiro中学校との共同調査
8月に渡航が迫って、Rafikiプロジェクト関係を中心に現在事務局では準備に大わらわな状態が続いております。
そんな中で、現地の中学校(正確にはsecondary school:日本の中学2年生から高校3年生)と共同調査を始めていた「村の自慢図鑑を作ろう」というプロジェクトの調査結果第1弾が届きました。
下がその調査シートの現物です。
調査シート
今回の調査では主に村や周辺の森にある植物の調査が中心。シートの枚数にして、11枚、筆跡から見て同じシートに複数人で書き込んでるものも数枚あり、また伝統薬にも使われる植物の薬効の内、現在はほとんど知られていないような効果も混じっていることから、おじいちゃん層に聞き取りもしてくれた様子で、かなり詳細に調査をしてくれたことが伺えます。
がしかし、調査シートの解読作業が非常に大変。上のシートの一部を拡大したのが下の画像で、鉛筆が日本側で書き込んだ文字になっています。ご覧のように、この文字の読みづらさ・・・ある程度は予想はしていたものの、それを上回るものがあります(ちなみに画像に挙げたこのシートは比較的綺麗な方)。文法もやはりところどころ間違いが散見され、文法上からこの文字だろうという予想も立てづらい。解読作業を複数人で行い、現地に持って行って先方と一緒に確認をする必要がありそうです。
調査シート抜き取り拡大
ただ、付け足し程度に書き添えますと、文法は怪しい彼らではありますが、オーラルコミュニケーションや読解能力を含めた英語力は非常に高く、「実践的」です
なんにせよ、現地との共同調査体制が動き始めたことで大きな前進。渡航した時だけやメールでの調査程度では情報量が圧倒的に足りないという問題の解決しつつあるということ以上に、「現地との一緒のプロジェクト」になってきたことを実感し、事務所一同安堵しつつ展望が見えてきたと考えております。
2. 前回の森林利用調査の結果概要
さて、上記の共同調査の確認作業とその後の調査体制の協議を中学校側とすることはもちろん、次回の8月渡航では色々とやる課題があり、その内容を順次事務局内で話し合っております。
次回に行うことが決まっているものの1つとして、第2回森林利用調査があります。
※前回行った森林利用調査は、(一部前回記事の注釈の繰り返しとなるのですが)2011年8月に行った調査で、一週間、日中全ての時間帯に、村人の森林利用を森へ通じる主な入口5か所にそれぞれ調査員を配置して調査を行ったものです。それぞれの調査員は入っていく村人全ての数と入った時間・出た時間を書き込み、さらには、当日と普段の森へはいる目的、週に何回森にはいるか、森の変化についての質問を行いました。我々の活動地のテマ村は5村区あり、そのうち森林に接するのは2村区。その片方のマイデニ地区で調査を行いました。村区の人口は正確にはわからずで申し訳ないのですが、テマ村の人口が4,000人ほどであり、1/5とすると800人ほどでしょうか。
調査の様子
前回の記事にて書かせていただいたように、村人の何人が森林を利用しているかとその内容が有る程度判明したため、現地カウンターパートのTEACAとの協議結果で『「村人が森から果たして何をどれだけの量もらっているのか」、「それを貨幣換算するといくらになるのか」を出してみよう』ということになっており、こちらを実施することとなり手配を進めております。
この結果についてもホームページではご報告していなかったため、ここで簡単にさせていただこうと思います。(詳細な調査報告は会員様向けのニュースレターにて行わせていただきました)
この調査で捕捉した森林を利用する村人は1週間で「のべ」807人。季節毎の変動を考えない単純計算で年間で「のべ」38,736人が利用しているという計算になります。週に何回入るかの質問で週に7回、つまり毎日という回答が非常に多く、あわせて考えると各世帯1人が当番的に毎日森に入っている形となりそうです。
森に入る目的をグラフにすると以下のようになります。
グラフ「森に入る目的」
飼料や敷草といった家畜関係のものが9割近くとなり、残りが毎日の煮炊きに使う薪を集めるためで、ほとんど全てとなります。
飼料は畜産にとって必要不可欠なものであり、薪は煮炊きに使用され生活を支える重要なものです。敷草は畜産のためだけでなく、副産物としての昔ながらの有機肥料の原料ともなり、森によって生活と畜産だけでなく、農業も支えられている構図が見えてきます。
誰もがテマ村の森林は「多くの人によって使われている」ことはわかっていました。しかし、何人がどれだけの量を森から得ているかという量的実態は誰にもわかりませんでした。今回の調査でおよその利用人数と利用資源の種類が明らかになりました。8月に行う第2回の森林利用調査では、森から「どれだけの量が利用されているのか」及び「その経済的価値」を調べ、2つの調査結果をあわせて、森林の大切さのさらなる実感につなげられればと考えております。