タンザニア北部のキリマンジャロ山麓では、3月中旬から6月にかけてが本格的な大雨季になります。今年の大雨季植林は、現在進めている地域(=村)主導による植林活動を、多くの村々の参加のもとに実施する、初の試みになります。植林総数は2万本を超える見込みで、一部の地域ではこの植林がすでに始まりました。実施状況については、植林が完了した段階で、またご報告したいと思います。
ところで植林というと、私たちは苗木を植えることだけを考えがちですが、実際に森林を取り戻すためには、植林地での継続的な育林・管理作業が必要になります。たとえば植えた苗木は100%根付くわけではありません。場所や条件にもよりますが、キリマンジャロ山の場合、裸地化した荒廃地での新規植林の場合、植林後1年目の活着率は60%程度しかありません。枯れてしまった場所には、苗木を補植しなければなりません。
またこれも場所によりますが、植林地は放っておくとブッシュ(灌木)や雑草が繁茂し、苗木を全部覆い尽くしてしまいます。覆われた苗木はほとんどが枯れてしまいます。そこで植林後5年間程度は、毎年毎年こうしたブッシュなどの刈り払い作業を続けていく必要があります。村人たちのこうした地道な取り組みによって、失われた森ははじめて再生します。
大雨季を迎え、キリマンジャロ山のテマ村では、村人たちがこの刈り払い作業も開始しました。その作業に私たちも一緒に取り組んできました。場所は地元でレカラ・マムンダと呼ばれる植林地。この1年ですっかりブッシュに覆われてしまっています(写真1)。村の人たちは1週間ごとのローテーションを決めて、約1ケ月にわたってこの刈り払いに取り組みました。
写真3: かなり刈り払いが進む。植林地全体の見通しがきくようになる
作業には村の男性、女性、そして子どもたちも一緒になって取り組んでいます。1回に参加するのは30人ほどですが、今回多い時には80人を超す村人たちが力を合わせて取り組みました。作業にはクワと、”パンガ”と呼ばれる山刀、そして刈り払ったブッシュをどけるための1.5mほどの木の棒を使います。
はじめはブッシュに覆われていてどこにあるかさえ分かりづらかった木々が、作業を進めていくと、少しずつ姿を現してきます(写真2、3)。植えられているのはグレビリア・ロブスタ(ヤマモガシ科)と呼ばれる木で、村人たちが最も好んで植えたがる木です。なぜなら、この木は土壌の水分を良く保ち、枝や葉は家畜の餌になり、またそれらを牛糞と混ぜて発酵させると、畑の良い堆肥にもなるからです。
刈り払いが終わった後の植林地には、何列にも植わった木々が整然と並び、見違えるようになります(写真4)。まだ「林」と呼ぶには気が早い段階ですが、木の下ではもう作業で疲れた体を休めることができるほど。あと10年すれば、ここには立派な森が蘇ることになります。
写真4: 刈り払い作業が終了した植林地