この10月、FAO(国際連合食糧農業機関)から、「2010年世界森林資源評価」の主報告書が発表されました。以下では同評価から、世界とタンザニアの森林状況について概観してみたい。
同評価によると、現在世界の森林面積は約40億haで、総土地面積の31%を占めている。全体での森林減少は続いていおり、最新の2000年~2010年のデータでは、この期間、毎年約1,300万haの森林が減少している。しかしこれは、1900年代の年間1,600万haの減少に対して、森林の減少にブレーキがかかっていることを示している。
それは1990年代に比べ、ブラジル、インドネシアでの森林消失率が顕著に減少したこと及び中国、インド、米国、ベトナムなどでの植林努力、自然増があったことによるとしている。
一方、2000年~2010年に最大の年間森林消失が観測されたのは、南米とアフリカで、それぞれ年間400万ha及び340万haの森林が失われた。
【タンザニアの森林概況】
同評価のデータによれば、タンザニアでは1990年以降この20年間、森林の減少に歯止めがかかっておらず、この結果、森林減少率は増加し続けている。直近の10年間の減少率は▲1.16%で、これは同期間の東南部アフリカ全体の▲0.67%、アフリカ大陸全体の▲0.50%をも上回っている。
森林減少面積と減少率を世界の国々と比べてみると、タンザニアは以下のような位置づけにある。
表1から、タンザニアは森林減少面積において世界ワースト5位(対象をアフリカ大陸に絞ると同2位)に位置し、また2005年~2010年の全世界の森林減少面積(▲5,581ha/年)のうちの7.2%は、同国の森林減少によってもたらされたことになる。
表2からは、同国が森林減少率において世界ワースト18位、アフリカ大陸においては同8位であることが分かる。▲1.16%という減少率は、このままの減少が続けば、80年後には国内のすべての森林を失ってしまうことを示している。
同評価ではまた、1990年~2010年の間に、国立公園、自然保護区域及びその他の法的に保護された森林地域が、9,400万ha以上増加(全森林面積の13%に相当)したことが触れられている。この増加分には、キリマンジャロ山において実施された国立公園領域の拡大も当然含まれている筈だ。
こうした言及からも、キリマンジャロ山の森林に対する国立公園拡大適用への圧力が、世界からかかり続けていたであろうことは容易に想像される。しかしそのことが、現在キリマンジャロ山で起きている住民生活との軋轢の問題や、かえって森林破壊を助長しかねない現状を招いていることも含みおいて、この数字を見る必要があるだろう。
世界各地で、住民生活との折り合いをどのようにつけて、国立公園、自然保護区域の増大が図られたのか、そんなことも気になる同評価であった。