キリマンジャロ山における植林活動ひいてはその森林の保全に関わる最大の課題は、国立公園領域の拡大が引き起こし、また提起している諸問題への対応に集約できる。
2010年度は、ようやく動き出した政府の国立公園境界見直しの動きに対して、それがかつて地域住民の利用を認めるバッファゾーン(緩衝帯)であった”ハーフマイル・フォレスト・ストリップ”(以下、HMFS)から完全に外される形で実行されるよう、引き続き政府森林関連部局との協議を行っていく。
同時に、国立公園領域見直し後を見据えた取り組みにも着手していく必要がある。HMFSの管轄権は「県」に委ねられると思われ、そこでどのような森林管理政策が示され、条例として施行されていくかによって、その後のキリマンジャロ山の森林に大きな影響を及ぼしていくことになる。
そこで、県の森林管理政策(=県議会の決定)が、機能不全に陥った従来のような管理強化の轍を再び踏むことなく、確実に機能し持続的に実行される政策となるよう、新たな森林管理の仕組みを提言し、議会を通していく必要がある。そのためには県議会議員とのパイプ作りも重要な課題となり、その方策も探っていく。
次に、新たな森林管理の仕組みとして準備を進めている、「地域(=村)主導による森林管理」については、キリマンジャロ東南山麓にあるテマ村、キディア村をはじめ、幾つかの村と方針共有作業に着手している。しかしその実行のための具体的規程の作成はこれからである。規程の作成には、現地の環境関連法令やその実態に長けた法律専門家の指導を得ながらあたっていくことが重要であり、環境法令を専門的に扱う法律家組織である”LEAT(Lawyer’s Environmental Action Team)”への協力を要請していく予定である。
また、キリマンジャロ州ではないが、地域住民の管理により森が守られている事例(アルーシャ州)があり、その仕組みを学ぶため、テマ村、キディア村等の村人を対象としたスタディツアーを実施する。
村による森林管理の規程がある程度まとまった段階で、HMFSに沿って存在する村を集め、その連携と統一的な実行体制の整備に向けた協議を開催していくようにする(できる限り多くの村を対象とすることが望ましいが、急激な展開はかえって齟齬を生む可能性が高く、その場合は村主導の森林管理に強い意思を持つ数村から始める)。これらの協議は県及び州の森林関連部局と緊密な連携のもとに進めていくこととする。
キリマンジャロ山のかつての管理構造。現在はHMFSを含むすべての領域が国立公園化