キリマンジャロ山麓の標高1,600mほどの場所にあるTEACAの事務所には、ハリナシバチの伝統養蜂箱が7箱設置されている。「箱」とはいうものの、実は現地の伝統的な養蜂スタイルは、地元原産の豆科の木Albizia schimperianaなどをくり抜いた「丸太」である。
軒下に吊された伝統養蜂箱からの収穫作業
ハリナシバチは体長5ミリにも満たない小さな蜂で、その名の通り、針がない。攻撃や防御の術を持たないゆえに性格はとても臆病だ。養蜂箱をじっと観察していると、側面に開けられた出入口用の隙間にズラリと見張り役の蜂が並び、おどおどと周りを伺っているのが分かる。こちらが少しでも動くと、慌ててみんな巣の中に隠れてしまう。
体が小さいために蜜の収量も普通のミツバチに比べると少ない。しかし現地ではこのハリナシバチの蜜は薬効が高いとされ、高価な値段で取引されている。余談ながらこのハリナシバチ、キリマンジャロ山麓にコーヒーが導入され、農薬が使用されるようになると、その影響で一時数を減らしてしまったと村人たちは言う。不幸にしてか幸いにしてか、構造調整のあおりで高価となった農薬をコーヒー農家たちが使えなくなると、次第に数も戻ってきたようである。
さて、そのハリナシバチの蜜の収穫が行われた。今回の収量は3.5リットル。すべての養蜂箱を収穫したわけではないので、この収量はまあまあの数字といえるだろう。さっそく蜜の販売も開始したが、結構コンスタントに売れている。普通のミツバチの蜂蜜が500mlで1,500シリングのところ、このハリナシバチの蜜は倍の3,000シリングの値付けで、それでも売れる。それだけ地元の人々に薬効の高さが認知されているということだ。
今回の収量は3.5リットルだった
TEACAでは今後、このハリナシバチの養蜂にも改良養蜂箱を導入し、さらに設置数の増加もはかっていく計画である。