事務局日誌: タンザニアの小学校事情(2)

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キリマンジャロ山の東南部、標高約1,600m付近にあるテマ村とキディア村。深い谷を挟んで隣り合うこの2つの村に、オリモ小学校とフンブフ小学校という2つの小学校がある。どちらも生徒数は300人ほど。

このうちフンブフ小学校は、ここ数年、卒業生の過半数が中学校に進学するという、日本でいえばいわば“進学校”である(タンザニアの小学生の、中学校への進学率は20%弱)。進学校とはいっても、別にスパルタ教育をしているわけではなし、施設も他の学校と変わるわけでもない。校舎は古く、窓にガラスはなく、もちろん電気もなく、雨でも降れば、教室の中は真っ暗状態。教科書などもまるで足りない。

ただ今回はこのフンブフ小学校がなぜ進学校なのかという話ではなく、この小学校が直面することになった困難(どちらかというと災難か?)についての話である。現地の小学校は7年制である。また低学年の1年生と2年生は、午前と午後に交替して授業を実施しているので、最低限必要な教師の数は6人+校長先生1人の計7人である。

これでカツカツのフル稼働状態であるが、それまでフンブフ小学校には、校長先生を含めて10人の教師がいた(ちなみにオリモ小学校は13人)。ところが、である。この1年の間に、フンブフ小学校は政府(教育局)からの教師の移動命令によって、一気に5人もの教師が他の学校に転勤させられてしまった。授業が必要なクラスが6つあるのに、教師が校長先生を含めても5人しかいないのである。

この異常な転勤命令だけでも十分驚きに値するのに、話はこれで終わらない。さらにもう1人の教師に対して移動命令が出ているというのだ。これにはさすがに他の小学校の教師たちも、「えっ!」と驚きを隠せない様子だった。

クラス6つに対して教師4人。午前、午後の2部制にするか、学年合併でもしなけりゃ教えられないよな・・・と思う。以下、私とフンブフ小学校の教師の会話。

 私  「どうするの??」

 教師 「どうするったって、やるしかないだろ、何とかするさ」

 私  「何とかするったって、でも、どうするの?」

ここで、彼から驚きの発言。

 教師 「下のクラスの子供は、上のクラスの子供が教師代わりに教えるさ」

 私、 絶句・・・。

日本では到底あり得ない、考えられないことだ。このような教師の配置換えも、資格も持たない子供が教師役を務めざるを得ないことも。授業レベルの低下は避けようもない。進学校の栄誉もここまでだろう。日本だったらPTAが黙っていないだろうが、ここタンザニアでは親も教師も、政府のやることだからと半ば投げやり気味に諦めて従っている。

子供の将来は? 子供の将来はどうなるの??

対するオリモ小学校は、生徒数はほぼ同じで教師13人。

何かが間違っている。

“EFA”(Education For All、「万人のための教育」)。

それは間違っていない。初等教育の無料化も、教科書の生徒全員への配布も。

しかし、現場の実態を顧みることなく、ただ上からの押し付けだけで物事が進められるいまの仕組みは、明らかに間違っている。すべてが一度に上手くいくとは思わないが、少なくとも、現場の実態や川下の声を吸い上げ、配慮したり考慮に入れられる仕組みを、同時並行して構築すべきだろう。

そうした努力をしないうちに、教育(制度)改革のために、一部の子供たちが犠牲になっている姿を見るのは、何ともやりきれない思いである。

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