恐るべし、アフリカミツバチ

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海外活動養蜂

養蜂といえばハチを飼うのであるから、もちろんみなさんはミツバチのことを思い浮かべるであろう。TEACAが養蜂事業で飼っているのも、ご多分に漏れずこのミツバチである(いや、実はもう一種類“ハリナシバチ”というのも飼っているが、今回はミツバチの方を話題としましょう)。

みなさんはミツバチといえば一種類と思われるかも知れないが、いくつかの種類がある。日本にも“ニホンミツバチ”という古来からの土着のミツバチがいる。しかし残念ながら(?)タンポポと同じで、みなさんが普段よく見かける、そこらへんを飛び回っているミツバチは、“西洋ミツバチ”と呼ばれるヨーロピアンの貴婦人たちである(ミツバチはほとんどがメス)。そのヨーロピアンにもいろいろ種類があって、イタリアンとかコーカシアンとかカーニオランとか、なんだか人間のようである。

そしてアフリカンというのもいる。

アフリカンといっても、見かけは日本で普段目にする西洋ミツバチと変わりはない。だが、大きく異なる点、そしてその違い故にアフリカにおける事業レベルでの養蜂を困難としている要因が2つある。

まずその一番目は、その気まぐれさ、“逃亡性”にある。とにかく何が気にくわないのか、ある日突然、プイと巣箱を捨てて全部逃げてしまう。

もっともアフリカという、一般に日本より厳しい自然条件下を生き抜かなければならないミツバチには、この気難しさ、性格も宜なることかなとも思える。乾期ともなれば花も水もなく、そんな中で長く同じ巣箱に留まれば、それこそ一族の存亡に関わる。何の躊躇も未練もなく巣を捨て逃亡してしまうという、養蜂家にとっての気難しさは、実は大事に至る前に次なる適地を求めて旅立つ、とても自然の理に適った行動原理なのかも知れない。

低標高地養蜂プロジェクト。ラングストロス式養蜂箱の点検作業

低標高地養蜂プロジェクト。ラングストロス式養蜂箱の点検作業

タンザニアのバンカータイプ改良養蜂箱の中の蜂の巣

タンザニアのバンカータイプ改良養蜂箱の中の蜂の巣


そして相違点の2つ目。とにかく気が短い。

養蜂では、「内検」と呼ばれる巣箱の点検が欠かせない。ミツバチが数千匹もいる巣箱を開けて、中の女王蜂や産卵の様子、ミツや花粉のたまり具合、害虫などを点検する作業のことである。この作業では、燻煙器という道具を使って、巣箱にいるハチに煙をかけ、大人しくさせてから巣のチェックをする。

巣箱の蓋をちょっと開け、ハチが出てきたかな?と思った瞬間、もう3カ所くらい刺されている。防護服替わりに着ているレインコートにバチバチと音を立てて猛然と突撃してくる。「これはマズイ・・・」と巣箱から30mほど後ずさりし、草陰に息を潜めてしゃがみ込む。そして経過すること30分。いまだにバチバチと音を立てて突撃を繰り返してくるアフリカンママの群。もう降参、撤退!逃げ出す。

それでもなおロケットのような勢いで追いかけてくるから恐ろしい。本当に恐るべき執念である。巣箱から100mほど逃げ、車の中に逃げ込む。これでやっと車の中に5匹くらいに減ってくれる。

養蜂事業を始めた頃は装備も軽装で、ハチにやられ放題であった。刺されて当たり前の現地の伝統的な収穫方法もあって、ハチをなめていた部分もあった。しかし「自立するのも命懸け」では冗談にもならない。その後、下の写真のように、装備の充実を進めた。

“逃亡性”と“攻撃性”。とくに後者は、養蜂をする者にはアフリカミツバチの恐怖として知られているところである。このアフリカミツバチ、実はアフリカだけに留まらない。南米、中南米にも進出し、“アフリカ蜂化ミツバチ”としてやはり恐れられている。慣れない地では、ハチがアフリカ蜂化してしまうと、もはや養蜂にならない。しかしアフリカには、幸か不幸か初めからアフリカミツバチしかいないのだから、養蜂はこの気性の荒いアフリカンママたちと正面から向き合って付き合っていくしかない。

防護服に身を固めたTEACAリーダー

防護服に身を固めたTEACAリーダー

 
養蜂事業で収穫された蜂蜜

養蜂事業で収穫された蜂蜜

 

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