事務局日誌: キリマンジャロの雪

  1. TOP
  2. 投稿
  3. 事務局日誌: キリマンジャロの雪
その他

寒さは相変わらずですが、この時期としては11年振りといわれた東京の積雪も、
もう道端に名残を惜しむほどになってしましましたね。

雪といえば、以前タンザニアで協力している現地NGO・TEACAのリーダーNjau
氏を研修で日本に招いたとき、やはり雪が降った。山頂に氷雪を抱くキリマンジャ
ロ山を眼前にする村の出身とはいえ、本物の雪を見るのは彼にとって初めての
ことであった。

「空から花が降ってる!」

それが雪を初めて見たときの彼の第一声であった。その花こそが、キリマンジャ
ロの山頂に輝いているあの“雪”であることに、初め気付かなかったのである。

タンザニアのほとんどの人々にとって、雪とは想像の世界の存在である。村の人
たちもキリマンジャロの雪のこと“barafu”という。スワヒリ語で「氷」のことである。
スワヒリ語には「雪」を意味する“theluji”という単語もちゃんとあるのに、である。
いかに彼らにとって雪が遠い存在であるか、それだけでも容易に想像がつくという
ものだ(因みに、氷は町に行くと冷やし過ぎたビールなどがカチンコチンに凍って
出てくることがあるので、村人にとっても知らぬ存在ではない)。

空から降ってくる雪も、地面に積もる雪も、手のひらにのせると溶ける雪も、その
冷たさも、すべてのことが彼にとって初めてのことであった。「これが雪か!」
そんな顔をしていたのを思い出した。

そんな彼も雪降るような寒さにはさすがに参ったようで、村ではいつもあんなに
早起きなのに、朝は頭から布団をかぶって出てこようとしないのがおかしかった。
地面におりた霜を見ては「地面が凍っている!」と言って驚嘆し、ここは人の住む
所ではないといった顔をしていた。

「また日本に行って勉強をしたい」、「でも、今度は冬以外にね!ワハハハ」。
 そう一言加えるのが、彼の口グセである。

一覧へ