事務局日誌: 観光開発の光と影

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タンザニアでの外貨獲得源No.1は、いまやコーヒーを押さえて観光収入によるものとなっている。当然ながらタンザニア政府も、この分野の重要性に鑑み、積極的な動きを見せている。たとえば世界遺産にも登録され、その雄大なクレーターの景観と野生動物で有名なンゴロンゴロ自然保護区に至る道は、かつては嵐の海に乗り出した船にでも乗っているのではないかと思えるような悪路の連続であったが、いまや日本企業の手によって着々と整備が進められつつある。

キリマンジャロ山の登山道についても然りである。これまでは行き帰りともマラングゲートを通るルートの一カ所のみが認められていたが、現在では私たちがTEACAとともにプロジェクトを実施しているテマ村の、すぐ隣にある尾根を通る道も、下山ルートとして認められた。この道は早晩、登山ルートとしても認可される筈である。

今回の現地調査中、この登山道(現在は下山のみ)の開設にともなう村及び村人への影響について、簡単な聞き取り調査を試みた。その結果、当初村人たちが考えていたほどには、メリットがない状況が伺えた。以下は村人たちが挙げた、登山道開設に伴うメリット/デメリットである。

メリット:
 ・州政府の資金支援により、道路が整備され(未舗装→砂利を敷き詰め)、町への
  アクセスが格段に向上した。
 ・一部の村人がポーターなどの職を得ることが出来た。

デメリット:
 ・登山客は車で村を素通りするだけで、村に経済的メリットがない。
 ・ポーターなどの職を得たのは、ほとんどが村の外部者(経験者)
 ・エイズなどの拡大
 ・薬物の村への持ち込み
 ・盗難の増加
 ・学校、教会に行かない子供たちが増えた(物売り)

テマ村でも、観光開発へ寄せる村人たちの期待は決して小さくはない。しかし今回のこうした聞き取り調査を通して、隣村の実状を知ることで、あらためて考えさせられた面が大いにあったようである。

コーヒーの市場開放もそうであるが、準備不足のうちに急進的な変化を受け入れてしまったところに、今日の問題がある。キリマンジャロ山という有用な観光資源に恵まれ、村の発展のためにも観光開発が必要であると村人が考えるなら、漠然とした期待から不用意にそれを受け入れるのではなく、身近な実例に先ず学んでいくことが必要であろう。また、先行する世界の多くの事例を学ぶ機会を村人たちに提供し、共に考えていく姿勢が、それを推進する政府には求められるだろう。そしてそうしたことはまた、私たちにも出来る大切な役割であろうと思った。

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