2010年 生活改善事業の活動履歴


  2010年  10月 野菜省水農法の実施状況
          7月 2010年度事業方針
          6月 伝統水路の復旧完了
          3月 チャガ民族の農耕システム"Kihamba"の生産性維持、向上に向けて
          1月 伝統水路の復旧支援
        


■野菜省水農法の実施状況 ('10/10)■


水の確保の難しい半乾燥地での野菜づくりを目指して取り組んでいる野菜省水農法。キリマンジャロ州ヒモ市近郊の半乾燥地にあるマワンジェニ村、リアタ小学校でのデモ展示の実施状況調査を行った。

同地は昨年干魃に見舞われ、水不足のため多くの家畜が死に、住民が家を捨て移住するなど厳しい状況であった。牛の草を求めてマサイ民族が侵入し、キリマンジャロ州では60年振りとも言われるマサイ民族とチャガ民族の衝突にまで発展した。省水農法もさすがに水がまったく手に入らない状況ではどうにもならず、結果を出すことが出来ずに終わった。

今年の大雨季は数年ぶりにやっとまともな雨が降り、省水農法のデモ展示も再開した。リアタ小学校では校長先生、環境担当の教師ともとても熱心で、野菜の種類を新たに増やすなどし、生育も順調であった。昨年試しに取り付けてみた日覆いの効果も確認された。

ただし問題もあり、とくに害虫被害が激しい。省水農法は袋の側面に野菜を植え付け、小面積に少ない水で多くの野菜収穫を可能とする栽培方法であるが、密植するとそれだけ害虫被害が大きくなり、学校側では側面への苗植え付けを見送っていた。しかしこれでは省水農法のメリットが大きく減退してしまう。

同校では害虫被害を抑えるため、灰やタバコの葉汁を使って害虫忌避を行っていたが、あまり効果がないとのことであった。葉面散布が徹底できていない可能性があったため、当会では現地で簡易スプレー(大きめの霧吹き)を調達し、ピリピリ(トウガラシ)、石鹸、牛乳をそれぞれ希釈した溶液を、駆虫剤として試してみるようアドバイスを行った。また、カウンターパートのTEACAでも、半乾燥地と山岳での違いはあるものの、省水農法を実施し、自然農薬による害虫忌避、駆除の効果を確認してみる予定である。


リアタ小学校でデモ展示中の省水農法

リアタ小学校でデモ展示中の省水農法




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■2010年度事業方針 ('10/7)■


1.改良カマド普及

 テマ村以外での土製改良カマドの普及に着手する。対象とする村は、半乾燥地にあるマワンジェニ村、ンガスィニ村の2村。場合によってはキボショ村への普及も考慮するが、いずれにしても設置数は10基程度にとどめ、設置後のモニターを慎重に行う。
 一方、現在基礎部には焼成煉瓦を使っているが、これを身の回りで手に入る石に置き換えていくことが出来ないか、その試作に取り組みたいと考えている。ただそのためには、現在TEACA事務所に設置されているデモ用の土製カマドを取り壊すか、事務所付近に別に設置場所を探す必要があり、着手できるかはまだ分からない。
 この煉瓦未使用のカマドが完成できれば、改良カマドの設置にあたって必要とされる資材は、すべて身の回りにある資源を使って対応できるようになるだけに、2010年度に着手できなかったとしても、必ずチャレンジしていきたいと考えている。

2.半乾燥地野菜省水農法

 リアタ小学校のデモ展示プロットでは、昨年は厳しい降雨不足のため、まったく野菜が収穫できなかった。これを受けてあらたに設置した日陰用屋根の効果についてモニターする。年3回程度の収穫を目指す。

3.コーヒー農家支援

 KIWAKABOのモデル農家への集中指導を継続する。
 現在各農家とも70本の新品種を畑に植え付けているが、さらに増やしていくかの見極めを行う。
 また今後の村への新品種の普及にあたっては、彼らが身につけた接ぎ木技術が重要となってくる。技術維持のためにも、継続して接ぎ木の経験を積ませ、結果をモニターできることが重要であり、従来TEACA苗畑で育苗中の新品種苗木については、TEACAが接ぎ木を行っていたが、彼らを参加させていくようにする。

4.診療所支援

 テマ村ナティロ診療所への薬剤支援を継続実施する。また、現在マラリア診断に必要となる光学顕微鏡が診療所にはなく、隣村まで谷越えをして試料を検査しなくてはならないため、医師からその支援を要請されている。予算が許せばその支援を検討する。

5.小学校への牛乳配給

 キリマンジャロ州の半乾燥地マワンジェニ村にあるリアタ小学校での継続実施を検討する。ただしより重要なのは、同地での恒久的な水へのアクセスを確保していくことである。
 現在ドイツ民間団体が支援を検討しているが、その規模がまだ明らかになっていない。規模次第では、キリマンジャロ山麓から重力流下式の給水パイプラインの敷設(約3km)を検討する必要があり、そのための資金を確保していく必要がある。
 したがってドイツ民間団体の計画を調査し、また村、学校側とも協議のうえ、牛乳配給を続けるか、もしくは配給のための資金を、パイプライン敷設のための資金として積み立てていくかを決めることとする。

6.伝統灌漑水路復旧支援

 キリマンジャロ山麓キディア村での、キディア伝統水路の全行程の流路復旧は2009年度に完了した。2010年度には、その供給する水が、地域住民の畑を潤すことになる。
 2010年度は、さらに同水路の流量の安定確保を図っていく。そのために同水路の水源部にある溜め池(チャガ語で"Ndiwa"と呼ばれる、伝統水路に特有なシステムの一部)の復旧、補強工事を実施する。
 現在キディア水路に接続している溜め池は、復旧以前の水路と同様、土砂流入と水門部の決壊のために使用不能となっている。これを浚渫し、さらにセメントで堰を設け、復旧を図る。
 同溜め池は、キディア水路以外にもう1本、キリマンジャロ山の尾根を走る伝統水路の水源ともなっており、その復旧により、さらに多くの住民に対する灌漑水の供給が可能となる。(ただしこの水路も、使用はされているものの傷みが激しく、溜め池完成後にやはり改修工事が必要になるものと思われる)。



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■伝統水路の復旧完了('10/6)■


キリマンジャロ山麓にあるキディア村で取り組んでいた、キディア伝統灌漑水路の流路復旧工事が完了した。総延長2.7km、120世帯の村人たちが畑の灌漑(主に乾期)に利用していたこの伝統水路は、尾根の土砂崩れなどによって埋没、崩落してしまい、放棄を余儀なくされていた。

しかし近年の降雨の不安定化、減少から、安定的に灌漑用水を確保することがますます重要とされてきており、水路復旧に対する村からの強い要望が出されていた。

これに伴い、当会では埋没した水路の掘り返しおよび復旧工事に関わる労働力、人件費は村側で確保することを条件に、法面が弱くなっている水路のコンクリ補強と、崩落カ所の流路新設に関わる資材提供の支援を実施した。

村では毎週月曜日を復旧工事の日と決め、村人たちが6ヶ月間にわたって作業に取り組んできた。そしてこの度ついに全流路の復旧が完了し、水路には5年ぶりに水が流れ始めた。村ではあらためて開通式を開き、村人たちと水路の復旧を祝った。

水路の水が本当に必要とされてくるのは大乾期の始まる8月からであるが、村人たちはさっそく自分の畑に水を流してみて、水を得られる喜びを噛みしめていた。


水路復旧を喜ぶ村人

伝統水路は幹線水路から分流され、村人たちの畑へと流れていく



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■チャガ民族の農耕システム"Kihamba"の生産性維持、向上に向けて('10/3)■


当会がキリマンジャロ山麓に暮らすチャガ民族の、伝統水路の復旧事業に着手したことを、前回のこの欄でご報告しました。その中で、伝統水路が彼らの農地の生産性維持に役立ってきたことに触れました。

農業における水の重要さについては論を待ちませんが、キリマンジャロ山の急峻な斜面に広がる畑で、いかに「安定的に」、「効率よく」、「十分な量」の水を確保するかは、平地とは違った困難さがあります。

そのような条件のもとでチャガ民族の人々は、パズルのように複雑に入り組んだ尾根や地形の間を、まるで縫うようにして遠く離れた水源地から、精巧な水路を引いてくる知識と技術を獲得してきました。

この伝統水路の水を利用して、彼らは家の近くに"Kihamba"と呼ばれる独自の農耕システムを発展させました。このKihambaは、いわゆるアグロフォレストリー(注)として説明されることもありますが、通常のアグロフォレストリーにはない、家畜と水路をも有機的に組み合わせ成り立っている、極めて高度なシステムであると言えます。

キリマンジャロ山麓のKihamba いま、キリマンジャロ山に住む100万人以上とも言われる人々の生活を支えてきた、このKihambaのシステムが、人口の増加や森林破壊、水源の枯渇、給水パイプラインの敷設、伝統的相続制度など、様々な要因から崩壊の危機にあります。作物の生産性を維持し、人々の生活を安定的に保っていくためには、Kihambaが果たしてきた役割を見つめ直し、健全なシステムとして機能するよう、そのメンテナンスと再生を図っていく必要があります。

         様々な樹木や作物が植わったKihambaの様子 →
伝統水路の復旧は、Kihambaが一つの体系として機能するための、欠くべからざる構成要素を保全、強化するための取り組みであるといえます。ポレポレクラブではキリマンジャロ山麓の村人たちの生活安定のために、こうした伝統水路の復旧事業に今後注力していくつもりです。ただ先も触れたように、Kihambaが弱体化している要因は、一つ伝統水路だけによるのではありません。それぞれの要素に優先順位を付けながら、併行して取り組んでいくことが肝要となってきます(たとえば伝統的土地相続制度による際限のない土地の細分化など)。

2010年度には、伝統水路復旧とあわせ、こうした視点からの取り組みにも、着手していきたいと考えています。

(注)
果樹を含む様々な作物と様々な樹木の多様な組み合わせによって、土地を空間的、時間的に多面的に利用する農林業方法。土地の地力を保ち、生産性を長く維持するとともに、天候不順や病害虫被害等に対するリスクヘッジができ、さらに薪や飼料など、生活その他の活動に必要な資源をも得られる仕組み。



森林も水も失われたかつてのKihamba



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■ 伝統水路の復旧支援('10/1)■


キリマンジャロ山に暮らすチャガ民族は、その歴史数百年ともいわれる伝統水路を尾根に網の目のように張り巡らし、高度に調整された水管理の仕組みとともに、彼らの生活基盤である農業を支えてきました。

しかし近年の降雨不足(この100年間で約30%減)は、伝統水路の水源である泉の枯渇や流量低下、さらに政府の敷設した給水パイプラインに水源の水を回してしまったことなどから、使用できなくなる或いは管理放棄されてしまう伝統水路が数多く発生する状況となっています。

しかし降雨の減少は伝統水路からの水供給なしに、これまでのような作物の生産性を維持することを困難としており、その重要性が再認識されるようになっています。私たちが植林協力を行っているキリマンジャロ東南山麓にあるキディア村も、そんな村の一つです。この村の主力水路の一つであったキディア水路は、尾根の森林が失われたことから土砂崩れが発生し、埋没、寸断し、使用できなくなってしまいました。


(写真)土砂崩れで埋まった水路を掘り起こしている現場→


私たちは村からの強い要請を受け、その復旧を支援することにしました。水路の総延長は約2km。120世帯、720名の村人たちがこの水路の水を使っています。昨年10月から復旧のための工事をはじめましたが、予想以上に損壊が激しく、手間取っています。掘り起こしは一通り完了しましたが、いまも土砂流入が続いています。崖際を流れている部分については、コンクリで固め、また流量確保のためにあらたな小規模ダムの設置が必要になっています。

3月までには流路確保を完了させたい考えでですが、小規模ダムの設置は4月に本格化する大雨期前に着手するのは難しく、今夏以降になる予定です。


一部復旧が完了した区間に水を流す試験をしているところ





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