TANZANIA POLE POLE CLUB

2011年度事業報告


■ 村落植林活動 ■

◆各目標の実行状況/達成状況

(1) HMFSにおける地域主導植林の実施

・天然資源観光省によるHMFSにおける地域主導植林への承認を受け、キリマンジャロ東南山麓にあるルワ村、ロレ・マレラ村において、多地域連携のもと、初となる地域主導による大規模植林に取り組む。

図1:HMFS地図
図1:キリマンジャロ山のかつての管理構造。
現在はHMFSを含む上図領域のすべてが国立公園化

 2010年12月に天然資源観光省から取得した植林承認を受け、2011年度、キリマンジャロ国立公園内の旧HMFSにおいて、「地域(=村)主導」による大規模植林を満を持して実行に移した。
 現在のキリマンジャロ山には、森林を持続的に守っていくための「実質的に機能している」仕組みはないといって良い。政府は地域住民の締め出しによって森を「隔離保護」しようとしているが、住民の生活が森林に依存したものである以上、締め出しが有効に機能することはあり得ない。同山においては、住民生活と両立可能な森林保全の仕組みこそが求められており、その実行能力を持っているのは、過去の歴史からも、締め出しの対象とされたまさに地域や地域住民たちだといえる。
 この植林は、HMFSにおける着実な植林の実績を積み上げ、こうした地域や地域住民たちの森林保全に対する、高い能力を実証的に示していくことを最大の目的として実施したものである。またそれと同時に、今回の地域主導による植林は、今後森林(現在の国立公園、かつての森林保護区)に沿って存在する地域、村々が、統一的なルールのもとに共同歩調をとって、キリマンジャロ山の森林を保全・管理していく、その体制作りに向けた第一歩となったといえるだろう。
今回地域主導植林が取り組まれたのは、当初計画通り、キリマンジャロの東南山麓、標高約1,700mにあるルワ村 (図2)とロレ・マレラ村(同)の2ヶ所。
 ルワ村の植林地(HMFS)には約30haの裸地が広がっているが、ここはかつて森林保護区(現在国立公園)であったにも関わらず、政府が商業目的で造林し、その後収穫のため伐採したものの再植林することなく、そのまま裸地として放置した場所である。これまで地域の教会が植林に取り組んだことはあるが、政府の理解や支援も得られず、その後KINAPAの妨害にあって頓挫してしまった。



図2: キリマンジャロ山と事業地位置図
図1:HMFS地図

植林は5日間にわたって実施され、ルワ村からは総勢723名の村人たちが参加した。また県からはムッサ・サミズィ県知事、トゥワリポ県行政執行官、州水源涵養森林局からジョン・カラワ氏、県森林局からムサミ・ムシャナ局長ほか11名の森林官が参加。ルワ村以外にもモヲ村、ンジャリ村、シンガ村、キボショ村の4村、ローカルNGOからはRoots & Shoots、LEPAJE、そして地元のマウア神学校も植林に加わった。多くの地域、村人たちが加わったことは、そのまま一方的に取り上げられた“自分たちの森”を取り戻そうという、彼らの強い思いの表れだと言って良いだろう。
 ルワ村の旧HMFS(現国立公園)における地域主導植林の実績は、下表左側の通りであった。

表2     表3

植林
写真1: 植林に集まったルワ村の村人たち

 このうちMacaranga Kilimandscharica、Ocotea Usambarensis、Mitragyna Rubrostipulataは東アフリカの原生種で、中でもOcotea Usambarensisは、かつてキリマンジャロ山を代表する樹木の一つであったが、良質な材がとれることから激しく伐採され、登山ルートとして知られるマラングー近辺の地域では、姿を消してしまった場所さえある。
約30haある植林地は引き続き植林が必要とされており、2011年度はTEACAが苗木を供給したが、雨季の劣悪な状態の道を大量の苗木を搬送するのは危険であることから、今後ルワ村に新たな苗畑を新設する必要がある。この点については、TEACAおよびルワ村と協議して決定しなければならない。また、植林地は裸地化してからの放置期間が長く、土壌の荒廃が進んでいることから、植林樹種の適性について、今後継続的にモニターしていく必要がある。TEACAは定期的に現場の巡回チェックを実施していくことにしている。
 ルワ村に続いてロレ・マレラ村の旧HMFS(現国立公園)でも地域主導植林を実施した。この植林にも総勢384人の村人、森林官8名、地元の小学校2校、ロータリークラブから地域代表を含む3名が参加、植林実績は上表右側の通りであった。


・この植林を通し、キリマンジャロ山の各村及びKINAPA(キリマンジャロ国立公園公社)を含む関係各部門に対する、HM FSの保全、管理に対する地域住民の権利を明確に発信し、周知を図る

現地新聞
写真2:HMFSで取り組まれた地域主導植林について報じる現地新聞"Majira"

 先にも触れたように、今回の植林には県知事をはじめ、行政側からも多くの参加者を得ることが出来た。またHMFSが国立公園に取り込まれて以来、初となった地域連携・住民主導による今回のルワ村、ロレ・マレラ村での大規模植林は、多くのメディアからも注目されるところとなり、テレビ局1社、ラジオ局3社、新聞社2紙が現場入りし、報道された。したがって、森林の保全・管理における地域や地域の人々が持っている潜在能力の高さを、事実をもって発信していくという目的は、十分に達せられたものと考える。
 このように実績を積み上げ、施政者に呼びかけ共に参加して貰い、さらにメディアを通じて発信していくことには、2つの重要な狙いがある。一つは、政策立案者(=県および政府の森林関係機関)に対する意識化である。機能していない現在のキリマンジャロ山の森林保全政策に対して、その「実質」を担えるのは、地域の住民たちであるという認識を、こうした政策立案者の意識に置いてもらうことは、今後の森林政策の方向性に対して、決定的に重要な意味を持ってくる。住民を追い出すことではなく、住民を信頼することによって、持続可能な森林の保全が可能になるという、彼らの確信に一歩一歩繋げていくことが、地域による森林管理の権利獲得(=森林政策、条例)へと結びついていくからである。
 二つ目は、KINAPA(キリマンジャロ国立公園公社)に対する布石である。タンザニア政府は、HMFSが国立公園に取り込まれることによって生じる、住民生活の問題を認識している。従って政府はその権利回復を図るため、HMFSを外す形での国立公園境界の引き直し作業を既に完了している。KINAPAを所轄する天然資源観光省がTEACAに対して、モシ県下のHMFSにおける地域住民主導による植林活動を許可したのも、そうした背景があってのことといえる。
それにも関わらず、KINAPAはHMFSにおける、地域住民による森林保全活動の一切を頑強に拒否し続けている。そのKINAPAに対して、地域主導による植林活動が行政とも歩調を合わせて取り組まれている事実を示していくことは、一番目の理由とあわせ、極めて重要だといえよう。


(2) 地域による森林管理のルール作り

・天然資源観光省によるHMFSにおける地 主導植林への承認を受け、キリマンジャロ東南山麓にあるルワ村、ロレ・マレラ村において、多地域連携のもと、初となる地域主導による大規模植林に取り組む。

協議会
写真3:今回で第4回目となった地域主導による森林管理を話し合う協議会。議長を務めているのはTEACAリーダーのンジャウ氏

 第4回目となる定期協議を、モシ県森林局の会議室にて開催した(参加者28名)。同協議には、モシ県下のHMFSに添って存在する全31村のうち13村、4NGO、1教会、州および県森林局から局長を含む2名が出席した。
第3回目までの議題は、国立公園化に伴う問題認識の共有と、統一的森林管理体制構築の是非が討論の中心であったが、第4回からは一歩議題を前進させ、各村における新たな森林の利用、保全、管理規則のあるべき姿について話し合った。
 議論は、従来の村の規則が、持続的森林管理において十全に機能してきたとは言い難いという事実を、全員が認識するところから始めた。新たな村の規則はその原因を探り、欠点を克服したものでなければならず、さもなくば森林減少という同じ轍を再び踏むことになってしまうからである。たとえHMFSが地域の手に戻ってきたとしても、森林減少を食い止めることができなければ、再度の国立公園化はいつでも起こりうる。そうなれば森は二度と戻ってこない。新たな仕組みはそうした認識の上に立って、それが村人によって持続的に保持され、活用される“生きた”仕組みとして作り上げられなければならない。
 議論の結果得られた結論は、「ただ上(=県)から押しつけられただけの規則は誰も守らない」というものであり、各村の諸事情を考慮せず、一律にトップダウンで決められた現行規則の問題点が浮き彫りとされた。したがってまたそれに対して示された解決案は極めて明快で、「住民同士で話し合い、みんなで合意された規則とされなければならない」というものである。その認識共有が図られたことは大きいといえる。
 もっとも、もちろんそれはボトムアップによる理想的な形ではあるが、村での議論において往々にしてありがちな、建前論が先行して内実が伴わないという問題も同時にはらんでいる。自前の立派な規則はできるかもしれないが、結局それが守られない可能性は多分にある。
2011年度の協議では、こうした問題を取りまとめていくため、参加村から6名の検討委員を選出し、今後各村の規則の精査に着手していくこととした。


(3) 県会議員との関係作り

・2010年度に引き続き、県の森林条例制定に影響を持つ、県議会議員との関係構築に努める。

 国立公園法の改正のためには、最終的には改正法案がタンザニア国会で審議され、可決されなければならない。HMFSを国立公園から外すとの天然資源観光省とTANAPA(タンザニア国立公園公社)の内部合意が動かない中で、2011年度は県議会議員より国会議員との関係構築に優先して取り組んだ。
 これまで国会議員に繋がるパイプなどまったくなかったため、2010年度も目標とはしつつも果たせなかったが、2011年度はついに2名の国会議員との面会が実現した。2人ともキリマンジャロ山のお膝元、モシ県選出の国会議員で、一人はブンジョー地区選出のリャトンガ・ムレマ議員。もう一人は、モシ地方区選出のスィリリ・チャミ議員である。
 双方の議員に対して、彼らの地元であるキリマンジャロ山において、バッファゾーンの国立公園化が実施され、多くの村人たちの生活を追い込んでいること、その一方で、国立公園化の目的とする森林の保全は、その方法によっては実現が困難であることを説明し、地域住民がイニシャティブをとる新たな森林の保全、管理についての理解を求めた。2人ともこの問題をよく理解してくれ、とくにムレマ議員からは、「年末の国会で審議されるよう検討してみる」との返事まで得ることが出来た。
 しかし残念ながら、結局法案が国会に提出されることはなかった。
 もとより法律を改正するという作業が容易なものであるとは考えていないが、2011年度はその思いを新たにする結果となった。これからも彼らへの働きかけを粘り強く続け、さらなる理解と信頼を勝ち取っていくしかないであろう。


(4) スタディツアーの実施

・2010年度に行ったSULEDOプロジェクトへのスタディツアーについて、さらに追加的な村を対象として、その必要が認められれば実施する。
・もしくは、SULEDOプロジェクト同様にコミュニティベースによる森林管理に成功している Duru−Haitemba Forest等、新たな知見を得ることを目的として、訪問地を切り替えて実施する。

 前述の(3)同様、国立公園問題の解決に向けた、中央政府、州及び県、国会議員等に対する課題対応への負荷が高く、2011年度はスタディツアーの実施を断念せざるを得なかった。


(5) 地域住民の内発的意思の側面支援

・「村の自慢の森イラストマップ」のさらなる内容充実に向け、現地調査を継続実施

表2 BORDER=
表2:ワークショップで村人が導き出した「村の自慢」の概要
ワークショップ
写真4:「村の自慢」ワークショップの模様。TEACAリーダーがファシリテーター役となって進めた。この時の参加者は16名。農民、その他の職業従事者、女性、若者から均等に参加して貰い、2つのグループに分けて実施した。

2011年度は、この目的のため7/27〜8/16にかけて現地調査を実施した(表3)。
調査では、「村の自慢」に対する村人たちの潜在的な認識を引き出すことに主眼を置き、3回にわたってワークショップを実施した。とくにワークショップを日本人サイドが主導することでの偏向を避けるため、まず日本人がTEACAリーダーを対象にやってみせ、次にTEACAリーダーが村人に、最終的に村人自身が村人たちを対象にして実施するというステップを踏むことにした。(結果的には、村人が単独でワークショップを担うのはやはり難しく、TEACAリーダーが進めるスタイルとなった)。
ワークショップの結果、村人たちが感じている村の自慢には、かなり顕著な傾向があることが分かった(表2)。それは、彼らが自分たちの生活を支えている農業や作物を重要視しつつも、さらにそれらを支えるより広範なシステム、"背景にあるもの"を、相当に意識し、「大切なものだ」と考えているということである。即ちそれは雨や水をもたらす"森"であり、その森と畑をつなぐ"伝統水路"や"伝統溜池"である。
 回答数だけ見ると、これらのものは農業や作物よりも重視されていることが伺え、それは農業において稲作を、食において米を基礎とする私たち日本人に例えてみれば、水田であるより先ず、そこに豊かで養分に富んだ水をもたらす"(里)山"や"森"を「大切だ」と言っていることに等しいだろう。
 もちろん、ワークショップに参加した村人の数も限られ、この意見が村人全体の認識を反映していると断定するのは早計であり、彼らが森の重要性を強く意識し、長くその回復に努力を傾けてきたのは事実としても、一方で伝統水路や溜池は、やむにやまれぬ事情はあるにしろ、放棄が進んでいるという、彼らの認識と実際に起きている現実とのギャップもある。
 "食べられること"は、人が"生きていく"うえで基本中の基本であり、いくら経済が発展しても、食べられなければ何の意味もない。折しも昨年末には首座都市ダルエスサラームを中心として記録的な大豪雨となり、家屋が流され死者まで出した。昨年のタイでの大洪水、今年に入ってもすでにブラジルの豪雨などが伝えられ、異常気象は今や"日常事"となっている。気候や気象の不安定化はキリマンジャロ山とて例外ではなく、降雨の減少傾向には歯止めが掛かっていない。
 食を考える上で、たんに生産技術や投入資材等の視点からその生産性を考えるだけでなく、作物生産それ自体を支えている基盤や背景をも含めて考え、守り、強化していくことは、こうした常態化した異常事態の進行を防ぎ、持続的で安定した生産を支えていく上でも重要であることは論を待たないであろう。その点、目の前の畑だけを見ていない村人たちの視点や認識は、まさにこうした「大切なもの」をしっかり見極めていると言え、ワークショップにより得られた重要な結果だったといえる。


表3:日程表
7/27(水) 日 本 発
7/28(木) タンザニア・キリマンジャロ着、TEACAとのミーティング
7/29(金) テマ村移動、プロジェクト視察
7/30(土) TEACAへのプレゼン実施
7/31(日) 植林地視察
8/ 1(月) ワークショップ(第1回目)
8/ 2(火) 伝統水路踏査調査(第1回目)
8/ 3(水) ワークショップ(第2回目)
8/ 4(木) 伝統水路利用者インタビュー、オリモ小学校でのカルタ実施
8/ 5(金) 森林利用実態調査(〜8/11)、ファラジャグループ活動調査
8/ 6(土) ナティロ中学校環境クラブとの山歩き実施
8/ 7(日) 中間まとめ作業
8/ 8(月) 伝統水路踏査調査(第2回目)
8/ 9(火) ワークショップ(第3回目)
8/10(水) マイデニ村区境界踏査調査、ナティロ中学校環境クラブとのミーティング
8/11(木) コーヒー農家畑調査
8/12(金) TEACAへの成果報告
8/13(土) ダルエスへ移動
8/14(日) JICA山崎氏とミーティング
8/15(月) タンザニア発
8/16(火) 日 本 着


・これまでは日本側がイニシャティブをとる方法で取り組みを進めてきたが、これがタンザニアと日本側が双方向で進める取り組 みとなるよう、その関係構築をし、実施に移す。そのことにより、現地において常にこの取り組みが動いている体制を確立する

 地域住民の内発的意思の側面支援を目的とした取り組みにおいて、現在そのためのツールとして、「カルタ」、「イラストマップ」、「データブック」の作成に取り組んでいる。
 2011年度はこの中で、主に森林に存在する有用草本類を取り扱った「データブック」の調査及びデータ作成について、テマ村のナティロ中学校環境クラブと連携して進められないか、関係作りに着手した。
 同クラブは16名の生徒と担当教師1名(現在2名)で活動しており、これまで植林などにも取り組んできているが、どちらかというと校内美化や風紀面での取り組みが多かった。
 生徒たちとのミーティングではこうした取り組みへの関心も高く、担当教師の賛同も得られたため、8月に実施した現地調査において、彼らとHMFS内での有用資源を見て回る山歩きを実施した。
 タンザニアでは中等教育以上はまだ学校も不足しており、ナティロ中学校の生徒も半数以上が、キリマンジャロ州以外の遠方州からやってきている。そのため、山にどのような資源があり、それらをどのように地域の人々が生活の中で活かしてきたのかをほとんど知らない。山歩きではそれらを実際に説明を受けながら見て回ったが、こまめにノートに取るなど、全員がとても熱心であった。
 そして昨年10月からは、実際に環境クラブで有用草本類に関する補足調査を開始するところまでこぎ着けた。ただその後、担当教師が学校を休まねばならなくなってしまうなどの事情があり、取り組みは思うように進んでいない。  学校側でその後補助教員をつけるなどしてくれているが、自分たちがフィールドに出て主体的に取り組む初めての活動であり、また調査活動自体不慣れであることからも、取り組みが軌道に乗るまでには、まだまだ時間が必要と思われる。今後日本側からの活動のヒントになるような支援や、彼らからの情報をいかに素早く成果物としてまとめ、アウトプットしてあげられるかが、大事な課題となってくるだろう。

■ 活動の自立支援 ■

◆1.グループ積み立て

・積み立てを確実に実施したグループについては、メンバー全員に対するニワトリの支援および積み立てインセンティブとして、TEACAからの1年間の積立額の半分に 相当する額の資金繰り入れを実施する

表4
表4:グループ積み立て実績推移

 グループ積み立ては、様々な目的で結成、活動している現地の地域住民グループが、外部からの支援に頼ることなく、自立して持続的に活動に取り組んでいけるようになること、或いはさらに活動を充実していけるようになることを目指して実施しているプログラムである。
 このプログラムは、(1)グループメンバーによる毎月の定額積み立て、(2)ニワトリ銀行、(3)当該年度積立実績額の50%追加支援(ただし積み立ての100%完全実施を前提)の3つをパッケージとして実施している。一方このプログラムでは、通常のマイクロクレジットと異なり、積立額に応じたローンは実施していない。
 最終的に、これらによる資金を元手として、それぞれのグループが自立のための独自の収入事業立ち上げていくことを目指しており、最低の積み立て目標額を、各グループと協議の上、100万シリングに設定している。
2011年度もこのグループ積み立てプログラムを、キディア、キランガ、フォィエニの3女性グループを対象として実施した。
 ただし、2011年度は、2012年2月末現在で、どのグループも計画に対して積立額がマイナスとなっている(表4)。その最大の要因は、ニワトリ銀行で貸与されている親鳥から生まれたヒナの販売が完了していないことにある。このうちキランガ女性グループは、こちらの説明不足により、ヒナの販売数が不足だったことによるもの(販売数を増やすよう説明済)、フォイェニ女性グループはもともと親鳥の貸与のタイミングが遅かったことから、販売が遅れているもので、最終的には販売を完了の予定。キディア女性グループは原因がまだ確認できておらず、フォロー中である。
 グループ積み立てに関しては、100万シリングの積み立て目標に向け、全体としては大きな問題なく推移していると判断している。


(1) キディア女性グループは、2012年度には積み立て目標額の100万シリングを達成する可能性があり、その資金によるグループ自立事業の具体的プランについて、話し合いを進める。
(2) キランガ女性グループの積み立てが滞っている原因を究明し、その対策を講ずる。

(1) キディア女性グループについては、既述の通り、同グループの積み立て(=ニワトリ販売)が滞っているため、2011年度は自立事業についての話し合いは見送った。
(2) キランガ女性グループについては調査の結果、同グループの問題ではなく、積立金を預けている信用貯蓄組合SACCOs(Saving and Credit Cooperatives)の通帳管理方法に問題があったことが判明し、それを改めさせることで解決した。

◆2.養 蜂

(1) 低地養蜂事業<ミツバチ>
・ミツバチの逃亡を避けるための環境整備(蜜源樹および花卉類の植栽)を継続実施。
・これまで植えた苗木が花を咲かせるには、まだ2〜3年が必要で、現在の低営巣率が 回復に向かうか、様子見の状況が2011年度も続くことになる。

 生け垣用に用いられる蜜源樹PithecellobiumDulce5,000本を、養蜂小屋の周りに沿って植栽した。花卉類では豆科のVicia villosa Rothを同じく試してみたが、乾燥に耐えられず活着しなかった。
乾燥低地で実施している養蜂事業は、営巣の安定維持が難しい状況が続いており、2011年度はハチミツの収穫が出来なかった。地元の養蜂経験者の助言なども取り入れているが、顕著な効果は得られていない。

(2) 高地養蜂事業<ハリナシバチ>
・2010年度の実績が示しているように、ハチミツ販売から得られる収入は、決して少ないものではない。ハリナシバチについては、昨年度に見送った養蜂箱の増設(2箱〜3箱)を行う。異常気象により逃亡が再発する等といった事態にならない限り、今後も毎年2箱〜3箱ずつ養蜂箱の設置数 を増やしていき、ハチミツの販売収入による自己資金調達能力の安定、強化に繋げていく

ハリナシバチについては、2010年の異常低温の影響が地域全体に及んでおり、多くの家で養蜂筒からハチが逃亡してしまい、新たな巣や群れの調達がまったく出来なくなっている。ハチが戻ってきて全体的に数が増えないと、この状況はすぐには好転しそうもない。
 一方、営巣中の養蜂箱の数が減っているにも関わらず、収穫は好調(=1箱あたりの収量が増加)で、2011年度は過去最大となる10.5リットルの収穫に繋がった。全体状況が悪い中で、1箱あたり収量がなぜ増える傾向にあるのか、いまのところ不明である。

養 蜂
写真5:養蜂小屋の高い位置に再設置された養蜂箱

(3) 高地養蜂事業<ミツバチ>
(1) Mzee wa mila(伝統養蜂に長けた年配者)のアドバイスにより、養蜂箱の設置場所を養蜂小屋の高い位置に上げたため、それによる営巣率に変化があるか見守る。
(2) 収穫したハチミツの品実向上のため、採蜜機導入の是非を検討する。

(1) 2010年5月に高地事業地にも養蜂小屋を設置し、低地事業地から養蜂箱10箱を移設したが、営巣は2箱に留まっていた。そこでMzee wa milaの助言により養蜂箱の設置位置を上げたものだが(写真5)、その結果営巣数はすぐに4箱に増えた。しかしそれ以上増えることもなく、4箱を維持している。
 未営巣の養蜂箱については、虫食い等による傷みがかなり進んでおり、新規のものに更新を図っていかないと、これ以上営巣率を上げるのは難しいかも知れない。
 ハチミツの収穫量は新たに営巣した2箱はまだ収穫ができないため、3Lに留まった。また養蜂事業全体での収量は11.5L、販売収入は15万6千シリングで、前年度の同22L、同28万4千シリングを大幅に下回った。
(2) 採蜜機については、2011年度の経過状況から営巣率、収量ともそれほど上がらないと見込まれたため、導入は見送った。

◆3.新規収入事業<レンタルハウス>

・入居者の公募を開始しており、2011年度には貸し出しが始まる予定。ただしダルエス苗畑以上の収入ポテンシャルを持った事業であり、入居者については申込があれば誰でも受け付けるということはせず、慎重に決定を行い確実な収入へと繋がるようにしていく。
・単独財源としてTEACA事業資金の30%までは賄えるようにしたいと考えている

 2012年1月より、入居者1組を得ている。
 ただしレンタルハウスに併設の警備員用宿舎に入居(家賃が安い)したもので、2011年度の収入は30万シリングであった。

◆4.穀物貯蔵事業

(1) 昨年度調達した7tのメイズの販売実施
(2) 市場価格によって、同量のメイズの追加調達を行う

(1) 計画通り販売を行い、約3百万シリングの収入となった(純益約90万シリング)。
(2) 2012年度販売分として、仕入れも計画通り行い、7tのメイズを追加調達した。

■ 生活改善事業 ■

◆1.改良カマド普及

(1) 溶岩を基礎材に使用した改良カマドの普及に着手する。普及対象とするのは溶岩が簡単に手に入るロレ・マレラ村とし、3基のデモカマド設置とカマド職人の養成を行う。
(2) 昨年度実現できなかったキディア村にても、カマド職人の養成を実施し、小学校用カマドを含む3基〜4基の設置を同村にて行う。
(3) 溶岩の使用による完全な地元資源利用によるカマドが完成したことから、普及用パンフレットの改訂版を作成する。

改良カマド
写真6:カマド職人養成研修の模様

(1) 溶岩タイプカマドの普及については、対象をロレ・マレラ村のみに限定せず、職人の養成も兼ね、5村(テマ村、マワンジェニ村、ロレ・マレラ村、モヲ村、ルワ村)からそれぞれ選んでもらった村人を対象とした、4日間の集中研修によって実施した。
 これまではTEACAが普及対象の村に技術者を派遣し、現場で直接教える方法をとっていたが、この方法だと村を一カ所ずつ回らなければならず、また教えらる側も自分の技術レベルを客観的に把握するのが難しいという問題があった。しかしこの集中研修方式にすることで、こうした問題もクリアできた。
 研修後、各受講者は自分の村で2基の試作カマドを設置し、TEACAが技術レベルを確認、問題がなければ、各村での普及が開始されることになる。
(2) キディア村では適当なカマド職人を見つけることが出来ず、2011年度も養成をすることが出来なかった。
 ただし、モヲ村のカマド職人によって、小学校へのカマド1基を含む3基の新規設置は計画通り実施した。
(3) 溶岩タイプカマド技術の確立に伴う普及用パンフレットの改訂版作成には着手できなかった。

◆2.コーヒー農家支援

(1) TaCRI専門家によるKIWAKABOのコンタクファーマーに対する巡回指導を継続実施する。
(2) 同じくコンタクトファーマーに対する、新品種コーヒーの接ぎ木セミナーを実施する。
(3) 既に畑に植えられている新品種コーヒーが結実する時期に入っており、収量状況により、手動のパルピングマシンの支援を検討する。
(4) Envirocareによる有機コーヒープロジェクトについて、今後の動向調査およびKIWAKABOとしての対応を検討する。

Kisanga氏
写真7:コーヒー畑で指導するキサンガ氏(写真左側)
接ぎ木
写真8:TaCRIの接ぎ木セミナーで実習するKIWAKABO

(1) TaCRI(Tanzania Coffee Research Centre)による巡回指導は、専門家の都合がつかなかったことから、元農業指導員でコーヒーを専門としていたジェームズ・キサンガ氏に依頼し実施した。氏は大変熱心に指導にあたってくれており、畑に植えられた新品種の剪定作業など、栽培管理面における技術向上にさっそく成果を上げてくれている。

(2)  KIWAKABOによるこれまでのコーヒー新品種苗木の育成は、全量が「挿し木」栽培によるものであった。しかし挿し木栽培は、苗木養成までの技術が難しく、一部の人にしか管理できない難点があった。
 そこで2011年度は、誰でも可能で管理がより容易な「接ぎ木」による育苗技術の確率に注力した。そのため、前出のTaCRIから専門家のコイナンゲ女史を講師に招き、KIWAKABOのメンバーを中心に、接ぎ木セミナー開催した。セミナーにはコンタクトファーマーを含む30名以上が集まり、熱心に接ぎ木に取り組んだ。

(3) パルピングマシンについては、TEACAとの協議により、新品種苗木が本格的な収穫期を迎え、その収量、品質状況を見極めてからとすべきとの結論を出し、支援を見送った。
 一方、収穫後の豆の一次加工品質を向上させるための水洗用大型タンクを、コンタクトファーマー5人に対して支援した。

(4)  Envirocareによる有機コーヒープロジェクトは、高品質コーヒー栽培を実現するための支援に加え、小農とマーケットを直結させるマーケットサポートまでがパッケージとなっているところに特徴がある。
 現在までのところKIWAKABOの組織整備と技術指導を行っているが、最低収穫量を確保するためにメンバーの大幅な拡充を行っており、各農家の技術レベルが追いつくのかを注意深く見守る必要がある。
 当会は、急激な組織拡大とは一線を画し、従来通りコンタクトファーマーの重点指導に主眼を置き、KIWAKABOにおけるモデル農家として育成していくこととした。

◆3.診療所支援

・標高1300mから1700mまでまたがるテマ村には、診療所が、現在支援しているナティロ診療所1つしかなく、オリモ小学校のある高地部への新しい診療所の建設要請がテマ村より出されている。当会には資金的な余力が無く、応じられないが、毎年の基金として積み立てを行うか、ナティロ診療所への薬剤支援として続けるか、テマ村側と協議することにし、そのどちらかで対応を行う。

村との協議により、2011年度は引き続き診療所に通じる道の補修を優先実施することとした。これは現在の道が急傾斜であるため、とくに雨期の間、急患の搬送自体が危険な状態であったためである。補修工事では、道路に中型トラック5台分の砂利を敷き詰めた。この補修工事により、雨期の間もっとも難所となっていた部分でも、問題なく車両が通過できるようになった。一方、高地部への診療所建設は、村側での用地確保がされた段階であるが、まだ建設には着手されていない。

◆4.伝統灌漑水路復旧支援

(1) キリマンジャロ山麓オールドモシ地区をカバーする主水路キディア水路の伝統貯水池“Nduwa”の復旧工事を完工させる。
(2) 基本的にこれで同水路の復旧は完了するが、Nduwaにもう一本の伝統水路が接続しており、この水路も土砂崩れで埋没してしまっていることから、その復旧が必要か、キディア村と検討する。
(3)・テマ村において、復旧が必要とされる伝統水路が存在するかの調査を行う。
 ・また、かつて村で重要な役割を果たしていたが現在メンテナンスがされず放棄されているキセレチャ水路について、その流路調査と歴史の掘り起こしを行う。

改良カマド
写真9:GPSによって取得されたテマ村の3D画像。地形の急峻さが分かる。

(1) 当初計画していた復旧工事は予定通り完了したが、キディア村から泥排出用のバルブを追加設置したいとの要望が新たに出されている。これについては、2011年度は計画外であることから断った。

(2) Nduwaに繋がっているもう1本の水路はムリンギア水路で、復旧により取水が可能となる対象は148世帯ある。
 村との協議を行ったが、Nduwaへの十分な水量を確保することが先決と判断し、復旧支援は行わなかった。

(3)・調査の結果、テマ村で現在も利用されている伝統水路のうち、主力水路の一つであるムレマ水路(主線水路長4.1km、利用93世帯)で漏水防止のための補修工事が必要とされていることが分かった。目視による確認しかできていないが、漏水による損失率は5割に迫るレベルと思われる。
 水路の損傷は村落部に達するまでの森林内でとくに激しいが、全体にわたっており、復旧には相当な資金と時間が必要になると判断された。

 ・キセレチャ水路はテマ村内に存在する最大規模の伝統水路といえる。パイプラインとの水源競合、若年層の村外への流出に伴うメンテ労力の確保困難等から、2000年代初頭に放棄されてしまった。
 この水路の踏査調査とGPSによるデータ取得を行ったが、流路が長いうえ、その他の水路とは桁違いに複雑で、村に達する前の森林側の調査しか完了できなかった。

■ 教育支援 ■

◆1.小学校への文具支援

・オリモ小学校、フンブフ小学校、リアタ小学校への文具支援を継続実施する。
・またキリマンジャロ山麓キルワ・ブンジョー地区にあるマヌ小学校が植林に熱心に取り組んでおり、同校を新たに加える。

 2011年度は新規に加えたマヌ小学校を含め、計画通り4つの小学校の全校生徒に対する文具支援を実施した。どの小学校でも生徒たちが苗木を育てており、この文具支援は、そうした生徒たちへの努力賞としての意味合いも込めて実施している。
 また2011年度は、これら4小学校とルワ小学校、ロレ小学校、ナティロ中学校に対し、男子用にサッカーボール、女子用にバスケットボールの寄贈を行った。このボールは、当会の事業監査のために現地入りしていただいた古沢紘造理事にご提供いただいたもので、ここに記して謝意を表します。

◆2.子どもたちのスタディツアー支援

・「自分たちの伝統、文化」をテーマにした、マラングーへのスタディツアーを継続実施する。対象校はTEACA及び各学校の先生方と協議のうえ決定する

 毎年学校を変えて実施している子供たちのスタディツアー。2011年度は、テマ村のフォイェニ小学校の5、6年生を対象として実施した(教師を含め、約80名が参加)。
 訪問したのは、マラングーにある「チャガ民族博物館」と、かつてチャガ民族が、同じ民族同士、あるいは低地平原に暮らすマサイ民族との紛争時に使っていた地下トンネル。
 トンネルはもちろん、博物館の展示物の多くは、すでに村では失われてしまい、見ることの出来なくなったものばかり。このスタディツアーは、年配者から話を聞くだけでは伝わりきれないかつての自分たちの先祖の暮らしぶりや伝統文化に触れることが出来るため、学校側からもとても感謝されている。

■ 研修 ■

◆1.LEATによる森林環境法令セミナー

 キリマンジャロ山においては、各地域に統一的な森林の保全、管理のルール作りに向けた協議を開始することとなる。
 そこではいかに持続的に機能するルールとできるかが、極めて大きなポイントとなってくる。従来のルールを精査、検討するだけでは不十分で、多くの事例を知る環境法令の専門家集団であるLEATの助言と指導が必要になってくると思われる。
 そこで、キリマンジャロ山のHMFSに沿って存在する村々を集め、そうした事例を交えた、環境法令セミナーを実施する。

研修
写真10:HMFSにおける統一的森林管理の是非について、協議会で話し合う各村の指導者たち。

 本セミナーは、天然資源観光省、森林養蜂局、TANAPA、南部キリマンジャロ山麓水源涵養森林局、TEACAの5者による、HMFSの帰属問題に関する政府内合意の進展(=再確認)を見込んで計画していたが、これが実現できず、さらにKINAPAの州知事取り込みの事態に至り、2011年度は開催を断念せざるを得なかった。
ただし、地域横断による協議自体は継続開催しており、その中で統一的ルール作成のコンセンサス形成は進んでいる。
 LEATによる環境法令セミナーをどのタイミングで実施するかは、今後の国立公園問題の行方によって、機動的な判断が必要になってくるだろう。

◆2.PC研修

・TEACAのリーダーがまだ十分にパソコンを使い切れておらず、必要に応じて追加研修の機会を設ける。

 2011年度は国立公園問題への対応のため、この研修のための時間を取ることが出来なかった。現状では、すぐにこの研修のための時間を取ることは難しい情勢である。

■ その他 ■

バイク
写真11:苗畑の巡回指導をしているTEACAフィールドオフィサーのンジャウ氏(写真右側)と、早速使っているオートバイ(左側の人の背後)。

◆1.TEACAへのバイク導入

・TEACAが各苗畑グループの指導やプロジェクトのフォローを行う際の機動性を高め、同時に車のコストを抑えるため、バイク1台を支援する。

 TEACAフィールドオフィサー用にバイク1台を購入した。


■ 2011年度会計報告 ■


    ◆
2011年度決算書(PDF)




皆様のご支援のおかげをもちまして、以上のように多くの成果を残すことができました!
皆様のご支援、誠にありがとうございます。
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