TANZANIA POLE POLE CLUB

2010年度事業報告


■ 村落植林活動 ■

◆地域主体の森林管理に向けた中・長期目標の実行状況/達成状況

●中・長期目標(1) : HMFSからの国立公園領域の撤廃

(2010年度の課題)
・国立公園のHMFSからの撤廃を確実とすべく、政府森林関連部局との協議継続

(実行状況/達成状況)
 これまでこの問題に対する、中央政府レベルでの交渉窓口は、タンザニアの森林(国立公園内の森林を除く)を所轄する森林養蜂局としてきた。しかし国立公園を管轄するKINAPA(キリマンジャロ国立公園公社)の権限領域にまで踏み込むことが出来ず、思うような進展が図れずにいた。
 このため、2010年度は自然・環境分野を扱う中央政府のトップ省庁である天然資源観光省(森林養蜂局はその一部局であり、KINAPAはその所轄機関)に交渉のテーブルを移し、あらためてHMFSからの国立公園の撤廃及びその後の地域主導による森林管理に対する提言を行った。さらにHMFS内における地域主導植林の実施許可を求めた。
 この交渉に当たっては、これまで築いてきたキリマンジャロ州水源涵養森林局およびモシ県森林局との信頼関係が大きく物を言いうことになった。天然資源観光省に対する両局のバックアップが得られたおかげで、モシ県下のキリマンジャロ山のHMFSにおける、地域主導による植林活動の承認へと結びついた。
 これまで、ときに月に数度にも及ぶKINAPAとの交渉でも、まるで埒が明かない状態が続いていたが、この承認は、HMFSを地域、ひいては住民の手に取り戻し、その森を地域の主導によって保全・管理していくことの実現に向けた、一つの画期となったと言って良いだろう。2010年度にあげることの出来た大きな成果と言える。

●中・長期目標(2) : 地域主導による森林管理の仕組み構築

(2010年度の課題)
(a) 地域住民の管理により森が守られている先進事例を学ぶため、キリマンジャロ山の村人を対象としたスタディツアー実施
(b) HMFSに沿って存在する村が集まり、その連携と統一的実行体制の枠組み作りを話し合うための協議の定期開催化

(実行状況/達成状況)

(a) 地域住民の管理により森が守られている先進事例を学ぶため、キリマンジャロ山の村人を対象としたスタディツアー実施:
SULEDOでのディスカッション  地域主導の森林管理の仕組み作りにおいて重要なのは、ルールを「作る」ことではなく、作られたものがきちんと「保持され」、「機能する」仕組みとすることである。それを如何に担保できるかは、今後新しい森林管理の仕組みを構築していく上で、決定的に重要となってくる。
 そこで2010年度は、タンザニアにおいて既に実践され上手く機能している、地域主導による森林管理の先進事例にそれらを学ぶことを目的として、スタディツアーを計画した。対象としたのタンザニアの中部、キテト県で実施されている"SULEDOプロジェクト"で、2010年12月に実施した。参加したのはキリマンジャロ山の5村、4NGO、1小学校及び州・県の森林局で、参加者数は計19名。
 SULEDOはキテト県にあるSunya/Lengatei/Dongoという3区の頭文字から取られたプロジェクト名で、その下にある10村によって、地域主導による森林管理が取り組まれている。ここでの森林管理手法は、その背景、考え方、仕組み等、キリマンジャロで目指そうとしていることと多くの点(以下のフローチャート参照)で重なっており、各参加者たちは多くの示唆を得ることとなった。

   ・村に隣接する国有林下における、政府の無謀な伐採と森林荒廃
       ↓
   ・村の環境劣化
       ↓
   ・生活への脅威の認識共有、地域連携
       ↓
   ・国有林の撤廃、地域管理の森としての森林条例勝ち取り(法律家の協力)
       ↓
   ・地域連携による仕組み、ルールの構築
       ↓
   ・地域主導による森林の持続的管理の実施

 とくにSULEDOがその持続的実践を確保するために備えている仕組みには、学ぶところが多かったといえる。同プロジェクトでは村の上位組織(上記3区による合同組織)として、プロジェクト管理の専門委員会を設置しており、委員会は各村から選出された委員によって構成されている。
 現地において村のルールが機能しなくなる大きな要因には、村長や執行役の交代があり、当該リーダーの素養や熱意によって、村のルールの遵守も実践も、大きく左右されることになる。村の上位に位置する委員会を組織することは、この問題を避ける良策となっているといえる。すなわち、村はリーダーの素養、熱意に依らず、自村を含む地域代表の連携と合意のもとに行われた決定に、従わざるを得ないからである。これが、同プロジェクトの自律性と持続性を担保し「機能させる」仕組みとなっている。
 そして同プロジェクトが管理する広大な面積の森林は、プロジェクトの目的の一つでもある、長伐期サイクルによる森林の持続的商業経営を可能とし、各村に毎年大きな収入をもたらしている。これが各村がプロジェクトを積極的に維持し、「保持していこう」という強いインセンティブ、動機(=内発性)として働いている。
 SULEDOプロジェクトが優れているのは、それが「保持される」内発性と、「機能する」仕組みの双方を、きちんと備えているからに他ならない。
 SULEDOプロジェクトとキリマンジャロ山では、その地域及び管理対象の特性に大きな違いがあり、一律に同プロジェクトの事例を適用できない面はあるが、スタディツアー後に、参加した村で代表者を立て、森林管理の統一的ルール作りに取り組んでいこうとの動きに繋がっている。
 こうした点からも、先進事例に学ぶというスタディツアー実施の目的と目標は、十分な効果と成果を生み出したと言えるだろう。

(b) HMFSに沿って存在する村が集まり、その連携と統一的実行体制の枠組み作りを話し合うための協議の定期開催化
村人たちとの協議  前年度に引き続き、2010年度も2010年8月と2011年1月の2回、村、NGO、教会、地域組織、州・県の森林局が一堂に会する協議を開催し、「地域主導による森林管理」をテーマとした協議の定期開催化はほぼ軌道に乗せることが出来たと言って良いだろう。
 協議に参加する村等の数も増加しており、今年1月に開催した協議には、17村、3NGO、1教会、2地域組織、2政府機関から計35名が参加した。
 協議の定期開催化を目指すことには、大きく2つの目的がある。1つ目は、当然のこととして、上記テーマでの議論を深化させ、地域での認識共有と連携の強化を図り、最終的に統一的森林管理の仕組みとしてまとめ上げていくための場とするためである。
 2つ目は、これまで各個にバラバラであったため、声を上げる機会と力を持てずにきた地域に、自分たちの声と意思を明確に表明し、政府、そしてさらに多くの地域と認識の共有を図っていくためである。
 1つ目については、まだまだそのプロセスの途中であり、結論を得るには数年を要するであろう。一方、2つ目の意味においては、参加する村の増加を見ても、予想以上の効果を発揮しつつあるといえる(当初は5〜6村で考えていた)。こうした積み上げがなければ、現在の州や県の理解や共鳴に繋がることはなかったであろう。また、天然資源観光省との交渉において、HMFSにおける地域主導植林への承認を得ることは、そう簡単ではなかったであろう。
 ただ、参加する村等の数が増えればそれで良いのかという点については、慎重である必要があると考えている。必要とされるのは数ではなく実質であり、この点、今後定期協議が実を成すためには、どのように進めていくのが良いのかについては、TEACAと検討していく必要があるだろう。

●中・長期目標(3) : 地域主導による森林管理の法制化

(2010年度の課題)
(a) 国立公園領域見直し後のHMFSを管轄するとみられる「県」、とくに条例制定の権限を持つ県議会議員とのパイプ作り
(b) タンザニアの環境法令を専門的に扱う法律家組織"LEAT"との関係構築

(実行状況/達成状況)

(a) 国立公園領域見直し後のHMFSを管轄するとみられる「県」、とくに条例制定の権限を持つ県議会議員とのパイプ作り:
 国立公園が外された場合、移管後のHMFSはモシ県評議会の管轄下に置かれると考えられる。そこで示される森林管理における指針や条例が、その後のHMFSの管理体制に大きな影響を与えることになる。
 そのため、指針や条例を審議、決議する県議会議員との関係作り及び地域主導による森林管理の重要性に対する理解を深めてもらうことは重要である。
 2010年度は議員との面識までは持てたものの、年末の選挙などのため、それ以上のコンタクトがかなわず、ほとんど進捗させることが出来なかった。
 また県議会は、県下の区の中から選出される評議員も構成メンバーであり、評議員の何人かとも接点を確保することが出来た。HMFSが県の管轄となった場合、地域主導の森林管理を認めることは、県の管理権限の一部を地域(村)に移すことになるため、話し合った評議員の一部からは、警戒感が感じられた。こうした反応はあって不思議ではなく、地道に実績と説得を重ね、信頼を勝ち取っていくしかないだろう。

(b) タンザニアの環境法令を専門的に扱う法律家組織"LEAT"との関係構築:
 これまで森林条例や村の環境規則といった制度、住民参加といった指針、村の環境委員会といった仕組みのそれぞれがうまく機能することはなかった。それは掲げる理念や文言は崇高でも、現地・現場の実態や意思を反映していなかったり、初めから無理があり、実行不可能な内容であったりするためである。
 条例や規則が遵守され、実質として機能する意味あるものとなるためには、その適用対象(森林条例であれば地域・村、村の規則であれば地域住民)の意思が汲まれ、理解と賛同を得られたものでなくてはならない。
 ただしそのプロセスを踏むことはできても、「法」はあくまでも「法」であり、その制定、決定には、タンザニアの環境法令や同国の実態に精通した、専門家の知識とアドバイスを得ることが欠かせない。
 そこで2010年度は、タンザニアで環境分野を専門的に扱う法律家・弁護士組織である LEAT(Lawyer's Environmental Action Team)との関係構築を目標とした。
 LEAT事務局長のエマニュエル・マサウェ氏は、キリマンジャロ山で行われたHMFSへの国立公園の領域拡大が、地域住民生活にもたらしている影響、またそのことが森林に及ぼす影響、そして私たちが目指そうとしている地域主導による森林管理に対して、強い関心を示してくれ、協力を約束してくれた。
 そしてこれが2010年9月に、テマ村、モヲ村の村長、執行役、評議員会メンバーを対象として開催した、LEAT主催による環境法令セミナーへと繋がった。

●中・長期目標(4) : 地域住民の内発的意思の側面支援

(2010年度の課題)
・“日本の市民と村人の取り組み”として、伝統や文化、民族の知恵といった観点から「生活と森との繋がりを分かりやすく理解し伝えられるプログラム」の作成に取り組む

(実行状況/達成状況)
日本人メンバーによるプレゼンテーション  キリマンジャロ山の森が過去もっとも守られたのは、その管理が全面的に地域の手に委ねられていた時期であったことは、過去の歴史が証明している。一方で人と自然を隔離することによって自然を守ろうとする「要塞型自然保護思想」の延長(=HMFSを含む森林保護区の国立公園化)によって、同山の森が守れないことも、過去の失敗の歴史が証明している。
 そこで私たちは、HMFSを地域の手に取り戻し、地域主導による森林の保全・管理の実現を目指している。
 その一方で、地域主導という仕組みやそれを後押しする法や条例という制度があっても、そこに人々の心(内発的意思)が無ければ、それらは機能することはない。政府が地域住民を森林破壊者と一方的に決めつけ、国立公園とすることで追い出したことは、彼らの怒りを買うとともに、徹底的に打ちのめし、これ以上森を守ろうとする意思を奪ってしまった。
 地域住民の内発的意思を支えることを重視する、この取り組みの重要性がそこにある。そして内発的意思は、彼ら自身の自然な気持ちであることが大切であり、私たちは彼らの内なる気持ちを、側面から支える以上のことはできない。
 私たちは、その内なる気持ちを、村人たちが森に対して抱いている「誇り」や、そこにある「自慢」、「大切なもの」といった側面に焦点を当て、彼らとともあらためて掘り起こし、見つめ直してみることを通して、「再認識」、「再発見」することに繋げていけたらと考えている。
 この取り組みでは2009年度に、初めて地域で取り組まれているコミュニティベースドツアー調査、テマ村の資源調査、伝統水路調査、村人への聴き取り調査を実施し、その結果を基に「テマ村の森イラストマップ」を作成した。
 2010年度もより精度の高い情報の収集と、ステークホルダーを絞り込んだ上での聴き取り調査を主目的として、引き続き現地調査を実施した。情報収集ではGPSでのルート情報のほか、今回はとくに様々なランドマークや村自慢の所在地データの収集を行い、薬草等については、前回調査での不足情報および新規情報の収集を行った。聴き取り調査では「チャガ民族の伝統文化・知識に詳しい長老」、「薬草に詳しい女性グループ」、「伝統水路を管理する氏族の長老」、「学生グループ」に目的とコンタクト対象を絞り、それぞれの分野におけるより詳細な情報の確保を行った。
 現在これらの収集データをもとに「テマ村の森イラストマップ」が、より村人たちに身近に思え、自慢や大切なものが何なのかのヒントが明快に示されたものとなるよう、改良作業に着手している。



■ 活動の自立支援事業 ■

◆グループ貯蓄

ニワトリを受け取るKidia女性グループのメンバー  グループメンバーによる毎月の定額積み立ては、2009年度に1年間の積み立て観察期間を経て、2010年度から正式に加わったフォイェニ女性グループを合わせ、計3グループとなった(他2グループは、キディア、キランガ、の両女性グループ)。
 2010年度は、2009年度にすべてのグループが積み立てを完全に実施したことから、その結果を受けて、全グループメンバーに対して雌のニワトリの貸与が行われた。
 このニワトリは卵の販売などを通して、グループメンバーの収入向上に繋がるとともに、貸与の1年後に、生後3カ月以上の幼鳥をグループに供出することを条件としており(その時点でニワトリは貸与されたメンバーのものとなる)、グループはその幼鳥を販売することで、グループ自立のための自己財源強化へと繋げることが出来る。
 このニワトリ(幼鳥)のグループへの供出も全員が守り、また全グループともその後販売を行った。
 各グループの積立額は、キディア女性グループが前年度の346,552シリングから現在622,861シリング、キランガ女性グループが、前年度278,900シリングから現在433,700シリング、フォイェニ女性グループが、前年度178,500シリングが現在355,500シリングとなっている(タンザニアの 2010年度の国家公務員の最低賃金が月額135,000シリング)。
 各グループとも貯蓄金額を積み増しており、順調なようであるが、キランガ女性グループの積み立てが今年に入ってから滞りがちとなっており、その原因がまだ掴み切れていない。早急な調査が必要となっている。
 また2010年度に積立額の目標設定をするとしていたが、各グループとも100万シリングまでは積み立てを行うことで合意に至った。また100万シリングが貯まった時点で、その資金を原資として、グループの自立に向けた新規事業を実施することとした。新規事業の具体的アイデアとして、孵卵器を利用した養鶏事業などのアイデアがあがっている。

◆養蜂事業

(1)低地養蜂事業<モシ県Kahe事業地>
 低地養蜂事業は、2009年度に食糧援助まで入った降雨不足によって、大打撃を受け、ほとんどのミツバチが水と花を求め、営巣を放棄し逃亡してしまった。
 乾燥低地での事業立て直しのためには、当面ミツバチの安定営巣が可能となるような、環境の整備(蜜源樹及び花卉類の植栽)からやり直さなければならないとの判断から、2010年度は事業地での植林(Calliandra Calothyrus、Callistemon speciosus)のみを行った。
 また、ミツバチが営巣を放棄した養蜂箱10箱を、降雨が安定している高地部に移設した。この結果、現在低地養蜂事業地に設置されている養蜂箱は4箱のみとなっている。

(2)高地養蜂事業<ハリナシバチ養蜂事業>
 一方、高地養蜂の2010年度は異常低温に見舞われ、それが原因でハチが逃げ出してしまう事態となった。ハリナシバチは最大時17箱すべてで営巣していたが、現在ほぼ半分の8箱まで低下している。このため2010年度に計画していた養蜂箱の増設は見送った。

(3)高地養蜂事業<新規ミツバチ養蜂事業>
新しく高地に設置された養蜂小屋  2009年度の経験から、半乾燥低地における養蜂は、天候(とくに降雨)の影響を大きく受け、不安定を避けられないことが明らかとなった。そのため2010年度は、降雨の安定している高地部にも、低地と同様の集約的養蜂を可能とする養蜂小屋を建設し、そこに低地養蜂事業地から、営巣放棄された養蜂箱を移設設置することとし、これを実施した。現在3箱で営巣中である。

 このように営巣については、天候という不可避の問題のため、低地、高地とも芳しくない状況であった。こうしたことからハチミツの収穫も期待できないと思われていたが、営巣を継続していた養蜂箱からは予想以上の収穫ができ、20リットルを超える収量となった。このためハチミツ販売による収入は過去最高を記録し、193,000シリングとなった。
 このほか2010年度は、伝統養蜂の知識・技術に学ぶために、高地、低地とも養蜂に詳しい古老を事業地に招き、指導を仰ぎ、早速巣箱の設置位置などの知見を得ることが出来た。

◆新規収入事業<レンタルハウス>

建設完了したレンタルハウス  2010年度はTEACAから提案されていた警備員用ポストの設置も含め、ついにレンタルハウス(3世帯入居可能)の建設が完了した。
 現在主要な建物や教会への広告掲示およびラジオなどを通して、入居者の募集広報を開始したところである。  これでようやく、終了したダルエスサラームでの受託植林事業に代わる、TEACAの自立に向けた自己資金調達の柱の一つが確保されたことになる。

◆穀物貯蔵事業

 2009年の降雨不足などにより、急激な価格高騰が続いていた穀物価格がようやく落ち着いてきたため、2010年度は貯蔵用メイズ(=トウモロコシ)7tを市場調達した。
 この穀物貯蔵は、市場において低価格時に、穀物を調達・貯蔵しておき、収穫前の端境期、あるいは不作の年など、市場価格が上がった時に、市場価格より廉価に地域住民に販売するものである。TEACAにとっては調達時の価格と売価の差額を自己資金源として当てることができ、一方村人たちにとっては、価格高騰時に、市場より安い値段でメイズを購入することが出来るようになる。また食糧危機などの時には、貯蔵穀物は緊急支援物資として、地域に無償配布を行うことにしている。



■ 生活改善事業 ■

◆伝統水路復旧支援

埋没した水路を掘り起こす  キリマンジャロ山麓に住むチャガ民族は、もともと数百年の歴史を持つといわれる重力流下式伝統灌漑水路"Mfongo"を、キリマンジャロ山の尾根中に巧みに張り巡らし、その優れた技術で彼らの生活と農業生産を支えてきた歴史を持つ。  しかし国策により村への給水パイプラインの設置などが進むにつれ、こうした伝統水路が放棄されてしまうケースが増えている。また森林伐採により裸地化した尾根斜面の土砂崩れによって、水路が埋もれてしまう、或いは斜面崩落により水路もろとも流されてしまう事態を招いている。
 そして近年の減り続ける雨量(過去100年間に30%減少)は、こうした放棄あるいは失われてしまった伝統水路復旧へのニーズを急激に高めている。家庭への生活水の供給がもっぱらの目的である給水パイプラインでは、農地への灌漑には対応できないためである。
 そこで当会では、2009年度より、キリマンジャロ東南山麓のオールドモシ地区にあるキディア村において、伝統水路の復旧事業に着手した。この水路は延長2.7km、120世帯(720人)が利用していたが、何カ所もの土砂崩れによって、完全に利用不能となっていた。
 2009年度に、埋没した流路の回復工事が完了したため、引き続き2010年度は、貯水及び流量安定の機能を果たしていた伝統溜め池"Nduwa"の復旧工事に取りかかった。
 この工事では、ポレポレクラブが復旧に必要な資材及びその搬送費を提供し、村側が労働力と石から砂利を作る作業を請け負う形とした。
 Nduwaは水路と同様、すでにかなりの土砂で埋まってしまっており、これに加えて十分な量の水を貯められるよう、県水資源局から専門家を招き、その指導のもと掘り下げと拡張を行った。また水圧が高まることから、堰はかつての木を組み土で固めていたものを、ロックダム式に石を積み上げ、セメントで固める構造に切り換えた(かつての堰自体、雨季の水流に耐えられず、決壊してしまっていた)。
 工事は掘り下げ、拡張時に多くの石に阻まれたことから、2010年度中に完成させることは出来なかったが、やむを得なかったものと考えている。2011年6月には完成できる見込みである。

◆改良カマド普及

溶岩を使った改良カマドを設置中  2010年度は、この改良カマドの普及を始めて以来の積年の課題であり、苦労に苦労を重ねてきた、基礎構造材に焼成煉瓦を使わないカマドの試作についに成功した。
 キリマンジャロ山で入手可能な土は熱に弱く、改良カマドを作るためには崩れないよう、山を下りて焼成煉瓦を購入する必要があった。それ以外の材料は、これまでの試行錯誤と改良の中で、すべて村の中で調達可能な資源で対応できるようになっていたが、唯一、焼成煉瓦だけが置き換えがきかずにきた。そのため、その調達価格と搬送コストが重荷となり、村の女性たちの高い人気にも関わらず、カマドの普及を妨げる重い足枷となっていた。
 また2010年度は、改良カマドの新規普及対象村として、半乾燥地にあるマワンジェニ村、ンガスィニ村の2村を計画していたが、貧困度の高い両村に対しては、焼成煉瓦未使用の新タイプでの普及を図る方針としたため、2010年度は普及を取りやめた。その代わりに、キリマンジャロ山内のモヲ村において、新規に従来タイプの改良カマドの普及活動を開始し、導入用のデモカマドとして一般家庭に3基、教会に1基、小学校に2基を設置した。また同村において2名のカマド職人の養成を行った。
 それ以外に、キディア村において新しいカマド職人の養成を計画していたが、職人の手当がつかず、着手できなかった。またキランガ女性グループのメンバー3名の家に、かなり以前に設置されたカマドの不具合が分かり、取り壊して新しく設置し直した。
 一方、TEACAの事務所には海外を含む各地からの来訪者が活動視察に訪れるため、そうした人々への啓蒙のため、焼成煉瓦タイプと溶岩を使ったタイプの改良カマドをデモ展示している。

◆半乾燥地野菜省水農法

省水農法で野菜を育てる小学校の子どもたち  リアタ小学校のデモ展示プロットでは、2009年度に厳しい降雨不足のため、まったく野菜(スクマウィキという緑葉野菜)が収穫できなかったことから、木の枝を使った簡易な遮光屋根を設置した。
 結果は年2回の収穫に繋がり、一般家庭でも軒下など、ある程度日陰を確保できる場所に設置した方が、収穫に繋げられることが分かった。
 一方、アフリカン・マリーゴールド及び自然農薬(石鹸、トウガラシを使用)による害虫忌避については、TEACAが実施をしておらず、効果が確認できなかった。

◆コーヒー農家支援

KIWAKABOのコーヒー新品種母樹園  コーヒー農家支援は、コーヒー生産農家グループKIWAKABOのコンタクトファーマー5名に対する、集中指導を実施する方法で行っている。そのことにより確実な成果に結びつけ、周りのコーヒー農家が自発的に模倣していくことでの、適正栽培技術の普及を図っていくことを狙いとしている。そしてこの取り組みは、県から派遣されている農業指導員と二人三脚で進めてきた。
 ところが2010年度は、新しく派遣されていた農業指導員が突然行方不明となってしまい(村人たちは、国からの給料未払いによる職務放棄だろうと噂している)、予定していた毎月の定期巡回指導が不可能となってしまった。
 そこでタンザニアのコーヒー研究機関であるTaCRI(Tanzania Coffee Research Institute)から専門家を招き、コンタクトファーマーの直接指導に当たって貰うことにした。計画では3回の巡回指導を予定していたが、最終的に実現できたのは2回のみの結果となった。農業指導員を欠くことになったことによる、打撃は大きいと言わざるを得ない。
 一方、KIWAKABOのコーヒー販売に向けた、新しい動きも出てきた。それはタンザニアのNGO・ENVIROCAREが実施する有機コーヒープロジェクト(オランダのNGO・HIVOSが資金支援)への参加である。
 このプロジェクトの特徴は、販路確保までを1パッケージとした直販の体制を基本としている点にある。また生豆品質を確保するため、コーヒー生産者グループを3段階に分け、その各段階において自律的な栽培・品質管理を機能させる、独特の仕組みと組織体制を用いている。
 まだ先方からの打診の段階であり、何も具体的動きにはなっていないが、KIWAKABOの販路確保の一手段として、本プロジェクトへの参加は、今後優先的に考慮していく必要があると考えている。
 このほか2010年度は、コーヒーの耐病性新品種の村人への普及・啓蒙のため、テマ村内に2カ所デモンストレーションプロットを造成した。それぞれ教会と村内の主要な道の脇に造成したため、誰の目にとまる場所となっている。

◆診療所支援

 村人との協議の結果、2010年度は診療所へのアクセス改善のため、高地にあるオリモ小学校からナティロ診療所に下る道の補修工事(砂利の設置)を行った。とくに雨季にはドロドロの道となり、緊急時の患者搬送(TEACAの車を救急車両として使っている)も困難となってしまうためである。今回はもっとも酷い場所に対象箇所を絞り、その補修を完了した。

◆小学校への牛乳配給

 キリマンジャロ州の半乾燥地マワンジェニ村にあるリアタ小学校で、昨年度に引き続き全校生徒への牛乳配布を実施した。
 同校は水へのアクセス手段がまったくなく、生徒たちが毎日各家庭から水を持ってこなければならない状態だった。  牛乳配布は、そうした状況の緩和と、栄養改善の双方を目的として実施していた。この牛乳配布では、学校への登校率があがるなどの副次的効果も確認され、学校側からは非常に感謝されていた。
 ただし同校へは、年度途中にドイツの民間団体により給水パイプラインが設置され、運用が開始されたことから、牛乳配布の基本的な役割は終えたものと考えている。



■ 教育支援 ■

◆小学校への文具支援

Riata小学校への学用品の寄贈  この文具支援(ノート、ボールペン、鉛筆、消しゴム)は、子どもたちが学ぶ環境と学業意欲の向上をはかり、また普段から学校での苗木育成や植林活動等、自分たちの村の自然環境を守る取り組みに対する努力賞の意味を含めて実施している。
 2010年度はキリマンジャロ山麓テマ村のオリモ小学校、同フォイェニ小学校、キディア村のフンブフ小学校、半乾燥低地にあるマワンジェニ村のリアタ小学校の4小学校とともに、TEACAの裁縫教室を加え、計5校を対象として実施した。
 この支援により、文具を受け取った生徒の数は、これら学校の合計で約900名である。

◆子どもたちのスタディツアー支援

チャガ民族の伝統家屋を訪ねる  昨年度実施した「自分たちの伝統、文化」をテーマしたスタディツアーへの学校側の評価が高かったことから、2010年度も引き続き同テーマで実施した。
 実施対象校はキリマンジャロ山麓テマ村にあるオリモ小学校。訪問地は基本的に昨年と同じマラングーにあるチャガ民族博物館と、かつてマサイ民族など、他民族との紛争時に使われていた地下トンネルであるが、今回はさらに鍛冶屋も加え、鉄の加工についても学んだ。
 近年、村の子どもたちは急速に自分たち民族の伝統や文化を失いつつある。最近では学校教育の中でも、そうしたものを伝えていくことの重要性が徐々に認識され始めており、民族の伝統、文化をテーマとしたこのスタディツアーは。その意味でも時宜を得たものとなっている。
 参加した子どもたちには話にすら聞いたことがないものも多く、興味津々で見聞きしていた。



■ 研修 ■

◆SULEDOプロジェクト訪問

 「村落植林活動、中・長期目標(2) 地域主導による森林管理の仕組み構築」参照。

◆裁縫教室教師、生徒の他学校訪問

TEACA裁縫教室の教師を、教授法向上を目的としてモシの技術学校へ、生徒を他学校の授業状況を学ぶことを目的として、ムウィカで運営されている裁縫教室にそれぞれ派遣した。

◆コーヒー農家対象セミナー

KIWAKABOメンバーへの有機栽培セミナー コーヒー生産農家グループKIWAKABOのメンバーを対象として、ソコイネ農業大学から講師を招き、アグロフォレストリー、有機農業、堆肥作りのセミナーを実施した。






■ 2010年度会計報告 ■


    ◆
2010年度決算書(PDF)




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