ミニニュースレター61号抜粋記事
『 Habari gani?』 第61号 より抜粋 (2013/6)

マサイ〜観光人類学から考える〜(1)

 観光人類学(anthropology of tourism)。多くの人々にとって聞き慣れないであろうこの言葉。これは、大航海時代にヨーロッパ列強が世界に進出していく中で始まった人類の社会生活や文化についての研究(社会人類学)が、今や世界中で大きな社会的影響を及ぼしている観光という分野を取り入れた結果生まれた、比較的新しい学問といえるでしょう。観光人類学の起源は1960年代に遡るとされていますが、近年では、観光による文化の変化が、観光人類学の主要なテーマの一つとされ、とりわけ、先進国からの旅行者と、彼らの渡航先である発展途上国の地域住民との関係に焦点が当てられています。今回のミニニュースレターでは、この様な観光人類学的な観点から、観光がもたらすタンザニアのマサイへの文化的影響について考えてみたいと思います。

 タンザニアに一度でも行ったことのある人であれば、カラフルな衣装と美しいアクセサリーを身に纏うマサイの人々を、見たことがあると思います。タンザニアでは主に北部地域に住んでいますが、東アフリカの観光業が発展するにつれ、主として観光客が頻繁に訪れる地域に住むマサイは次第に観光に取り込まれ、観光からの影響を受けてきたと言われています。特にンゴロンゴロ自然保護区内には多くのマサイが住んでいるので、動物サファリの途中でマサイの村(ボマ)を訪れるマサイ・ボマ観光がとても盛んに行われています。そこではマサイによる伝統ダンスや歓迎の歌の披露、村の案内、人々の生活や家屋の説明、お土産物の販売などが行われています。

 
 


 しかしながら、観光の持つマサイへの文化的影響を調べてみると、残念ながら、文化へのマイナスの影響を指摘した記事や文献が比較的多く見つかります。例えば、従来伝統的な行事の際に行われていたダンスや歌が観光客向けに頻繁に披露されるようになり、それに伴い、マサイの文化や伝統が徐々に失われてきていると言われています。観光人類学の世界では、これは「文化の商品化(commoditisation of culture)」と呼ばれ、文化や伝統から本来の意味を抜き取り、文化を形骸化させるものとして、しばしば批判の対象となります。また、実演効果(demonstration effect)と呼ばれるマイナスの影響も指摘されています。これは、観光客による自由奔放な振る舞いが、地域住民に模倣されることにより地域文化に取り込まれていくというメカニズムを意味しています。マサイ・ボマで言うと、従来は一般的でなかったビールやウィスキー等の飲酒が観光客によって広められたことにより、ボマ内で、飲酒と飲酒に起因する家庭内暴力や職務の怠慢が増加したという例が挙げられています。
(次号へ続く)

(文責:元事務局アルバイト 石原)




  〔No.61 その他の内容〕

     ● 事務局のあれこれ      : 私がポレポレクラブに参加するまで
     ● ポレポレ菜園活動      : アフリカンフェスタ参加報告
     ● 手工芸品プロジェクト     : “代々木公園でのアースデイに参加”
     ● ポレポレ伝言板


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